召喚獣とパートナーとペナルティ
「召喚」
視界が真っ白に染まる。
*
《召喚に成功しました》
《初めての召喚獣をパートナーに設定することができます》
《パートナーに設定すると召喚獣のクラスが1つあがり、召喚主と共に成長するようになります》
《パートナーは死んだら生き返りません》
《パートナーに設定しますか?》
俺の召喚した召喚獣が、強くなるってことか?
そんなのもちろん
《召喚獣をパートナーに設定しました》
《召喚獣をパートナーに設定したことにより、技能〈人間語〉を取得しました》
*
視界が戻ってきた。
そして
「主人、今助けます。」
目の前には女の人間が片膝をついて頭を垂れていた。
――――――――え?
「ニ、ニンゲン!?」
俺は両手を引きずりながら這って逃げようとしたが、目の前の人間はすっと立ち上がると、後ろを向き、相棒を掴みあげている人間へと歩き始めた。
唖然としながらその後ろ姿を見送る。
「お、お前どっから現れた?」
「…………」
「ちぇ、聞く耳持たずかよ。まぁいい、なぁちょっと手伝ってくれよ。この醜いゴブリン達め、奇襲ばっかりしやがって、ポーションたけぇんだぞ。」
「………」
「あ?お前きいてんのか?あっちに頭叩かれて気絶してるやついるんだ、助けてやってくれないか?」
「…………」
「おいおい、どうしたってんだよ、ああ、わかった。無償では手助けしてくれねぇってか。しょうがねぇ、そこのゴブリンの耳をや...ガッ」
ザシュッ
ゴトン
そしていつの間にか手にした長剣で、人間の首を斬り飛ばしたのだった。
《レベルアップしました》
《パートナーがレベルアップしました》
さらに、そのまま気絶した人間へと歩みを進め、長剣で心臓を串刺しにした。
《レベルアップしました》
《パートナーがレベルアップしました》
ななんなんだあの人間は。
俺は目の前で起きてる現象が信じられなかった。一方的に人間が2人殺された。
人間は長剣の血を払うと、死体を漁り始めた。剣やら鞄やらをいっぱいいっぱいになりながら抱えようとしていた。
そういえばなんで俺は人間の言葉を理解できる?
ふとあの真っ白な視界でのことを思い出す。
《召喚獣をパートナーに設定したことにより、技能〈人間語〉を取得しました》
そういえば俺の召喚獣はどこだ!?
なんで、パートナーを設定したら〈人間語〉を取得できたんだ、わからないことが多すぎる
ステータス!
ゴブリン Lv.9 ランクG
職業:召喚士
HP:4/19
MP:19/40
攻撃力:8
防御力:3
魔法力:15
俊敏 :10
技能:夜目、人間語、ゴブリン語
召喚:人間
・パートナー(名称不明) 剣士 Lv.3
・村人
は?
召喚獣が、人間だと……
「主人。」
「ギッ!?」
いつの間にか人間が目の前にいた。
俺は急いで離れようとするが、体に力が入らず、座り込んでしまう。
「主人、あまり動かないでください、私があなた達を助けます。ほら、ポーションです。」
そう言いながら鞄から緑の液体を取り出し、飲ませようとしてくる。
「ヤメロッ、グッ。」
両手が動かせない状態では抵抗できなかった。
苦い味、そしてドロッとした液体が食道を通るのを感じた。
するとみるみると傷口がふさがっていくではないか。
ステータス!
HP:19/19
完全に回復している……
「おい、ニンゲン、お前は俺の召喚獣なのか?」
「もちろんです。私があなたの召喚獣です。」
《パートナーの名称を"ニンゲン"にしますか?》
まじかよ、人間を召喚したのか俺は。最悪だ。
《パートナーの名称を"ニンゲン"に設定しました》
「それを寄越せ!」
俺は人間から緑の液体、ポーションとやらを奪い取ると相棒に向かって駆けた。
*
俺は途方にくれていた。
理由はもちろん、目の前の人間だ。
「主人、この冒険者たちの装備は貰っていきましょう。棍棒なんかより、よっぽどましです。」
「特にあの気絶していた方の剣は素晴らしいです!」
「主人、私が何か食べるものを持ってきましょう。」
「主人、何か私に出きることがあればなんなりと。」
「だまれ。」
「は、かしこまりました。」
この調子なのだ。
控えめに言っても、俺は人間が嫌いだ。嫌いだし憎い。親の敵であり、前の集落を滅ぼされた。意気揚々と死体から耳を剥ぎ取っていく習性は悪としか言いようがない。地球でも俺は人間達のせいで生きていくのを諦めた。
そしてこの世界の人間は強い。魔法を使えるやつが多く、武器も豊富だ。そして連携をとってくる。
ゴブリンの天敵なのだ。俺の天敵でもある。
フツフツと怒りが込み上げてくる。こいつを切り刻んで、獣にでも喰わせたらどれだけすっきりすることか。
けど、ふと脳裏によぎる。
《パートナーは死んだら生き返りません》
こいつは今や俺の戦力、こいつがいなければさっき死んでいたのだ。それがまた怒りを誘発する。
なぜよりによって人間なんだ
「ちっ、目の前から消えろ」
「かしこまりました。」
「ッ!?」
本当に消えやがった!
そうか、召喚獣だから必要ないときは戻せばいいのか。
「相棒」
「ナンダ」
「このことは秘密だ」
「バレタラドウナル」
どうなるのだろうか、恐らく殺される。ゴブリンの天敵を召喚するなんて、最悪だ。ゴブリンの村に人間を許すものなどいない。
ああ、憂鬱だ
俺らは村へと帰ったのだった。
夜の静けさを味わいながら、草のベッドに寝そべり、じっと天井を見つめる。あれから村に帰ったあと、村長にこっぴどく怒られた。
「お前はもうお前だけのものではない、村の宝であり未来なのだ、もうわしを心配させんでくれ」
と、言われたときは流石に反省した。2人ぶんの人間の装備を持っていたことに関しては、色々聞かれたが、運良く人間の死体が転がっていて、装備をくすねたと答えた。
俺の召喚獣のことについてバレるわけにはいかないからだ。
今日は色んな事がありすぎた
我が家についたあと、何とかして人間以外の召喚獣が出せないか試したが、無理だった。レベルが上がればわからないが、人間しか召喚できないと、直感が言っている。収穫もあった。
召喚獣の詳細をステータスで見れることだ。
ステータス
召喚:人間
・ニンゲン 剣士 Lv.3
・村人
【ニンゲン】消費MP20
パートナー。成長する。成長するにつれ消費MPは上昇する。
パートナーに設定されたことにより、各ステータスが上昇し、村人から剣士へランクアップした。
剣士、剣を扱うのに長けた人間。
人間"ニンゲン" Lv.3
職業:剣士
HP:40/40
MP:10/10
攻撃力:18
防御力:13
魔法力:5
俊敏 :18
技能:剣術 Lv.2
【村人】消費MP5
ただの人間。戦闘能力はない。
人間
職業:村人
HP:10/10
MP:0/0
攻撃力:5
防御力:2
魔法力:0
俊敏 :5
技能:農業、建築、工作
剣士か、Lv.3でこの強さか。そして1つ気になることがあった。
村人があまりにも弱すぎることだ。人間と言えば恐ろしいほどの強さのはず。
森に入ってくるのは強い人間だけなのか?
そうなると希望が沸いてくる。村人なら俺でも殺せる。本当に弱いのか、確かめる必要があると思った俺は家の周囲に誰もいない事を確認した。
「村人、召喚」
目の前には片膝をつき、頭を垂れた人間がいた。装備も着けず、布を身にまとってるだけだ。体は貧弱で、髪の毛には白髪がまじっている。何のオーラも感じない。
笑いが込み上げてきた。
「グギ、グギギ、ギャッギャ」
声をあげて笑う。これじゃ地球の老人と変わらないじゃないか。
そして殴った。
「ぐっ」
微かな声と共に床に叩きつけられた人間は、また起き上がり片膝をつこうとする、
「ギッ!」
その行動が気にくわなかった俺は顎を蹴りあげた。
そして、殴った。何回も。何回も何回も何回も殴った。
「死ネ!人間!死ネ!人間!死ネ!死ネ!死ネ!!」
気づいた時には、俺は血溜まりの中で人間にまたがり、無心で拳を振るっていた。
いつの間にか人間は動かなくなっていた。
殺せる。村人なら簡単に殺せるんだ
「ギャ、、、ギャーッギャギャギャギャ、ギャッギャ、グギャギャギャギャ」
大声で笑う。俺は歓喜の表情を浮かべ、死体を見下ろした。そういえば、奴ら人間どもは俺の両親から耳を持っていきやがった。
同じ事をやってやる。
そう思い、人間の耳に手を伸ばし、引きちぎろうとした瞬間。
《自らの召喚獣を殺しました。》
《ペナルティが与えられます。》
俺は気を失った。
*
気づけば朝だった。
体が恐ろしくだるい。ペナルティてなんだよ。
ステータス
ゴブリン Lv.9 ランクG
職業:召喚士
HP:1/1
MP:1/1
攻撃力:1
防御力:1
魔法力:1
俊敏 :1
技能:夜目、人間語、ゴブリン語
召喚:人間
・ニンゲン 剣士 Lv.3
・村人(現在使用不可)
な!?HP1だと!?
俺は2度と召喚獣を殺さないと誓ったのだった。
*
しばらく家でじっとしていたが、疑問が多過ぎて村長に会いに行くことにした。
村長はこの村で1番高齢で、なおかつ知識も豊富だからだ。
村長の家を訪ねた俺は、職業を得たときのように座って村長と対面した。
「で、何が聞きたいのかの?」
「最初から頼む」
「ほう、、、では、まずは職業から説明するとするかの」
職業は村長しか与えることができない。他の種族は違う方法があるらしい。
職業は才能や今までの生活によって決まる。
職業を選ぶと、その職業に関したステータスが上がり、レベルアップにつれてステータスの成長率に違いがでる。
職業は1度選んだら変えられないが、ある程度レベルが上がると2つ目の職業が選べるようになる。また、職業自体が上級職になることもある。
「ああ、そうだ、進化についても言わなきゃの」
ある程度レベルが上がったら進化できるらしい。
「人間も進化できるのか?」
「人間は進化はできないが厄介な種族じゃ」
「それは知ってる」
「いや、知らぬ。奴らの本当の恐ろしさは組織力よ。」
人間は冒険者ギルド、軍隊、傭兵団など、様々な組織があり、それらに目をつけられたら終わりだそうだ。
「それに人間は技能を得やすいし、職業に幅がある」
お互いを補助しあって強力な集団になるとのことだった。
「召喚士について教えてくれ」
召喚士は魔物を召喚し使役できる職業。たまに精霊を召喚できる者もいるらしい。レベルが上がれば上がるほど召喚できる魔物の種類が増え戦術に幅が広がる。
ゴブリンではもちろん、人間でもめずらしい職業なんだとか。
「ああ、そうだ、ペナルティには気を付けるんじゃぞ、まぁないとは思うがの」
言うのが遅いよ村長……
俺は部屋から出るそぶりを見せながら、さりげなく聞いてみる。
「例えば、人間を召喚する召喚士とかいるのか?」
「面白いこと言うのぉ、もしいたとしたら凶悪な能力じゃな」
やっぱり人間を召喚できるのは普通じゃないのか。
「ありがとう村長」




