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初めての人間

 俺らは村の門をくぐり外に出て、スライムが出現する方に歩いていた。


「イイノカナ」

「なにが?」

「召喚士ナラ、イズレ村デ最大ノ戦力ニナル、レベル上ゲナラ、大人ニ協力シテモラッタ方ガイイ気ガシテキタ」


 相棒が心配そうな顔でこっちを見てくる。

 たしかに、俺らが勝手に村の外でレベル上げをしていたとバレたら、村長に怒られるだろう。下手したら大人の同行がなければ外に出られなくなるかも。

 召喚士は村の宝だ、召喚士の身に何かあったら大損害なのである。


「スライムには負けないだろ」


 俺は簡単に返事をし、スライム探しに没頭する。相棒の心配も当然だ。俺らはまだ魔物を狩ったことがないのだ。

 いつもウサギを狩ってるエリアより、少し森の奥に進まなければならない。

 奥に進むにつれ、木々が空を覆い隠し、草葉が足に絡み付いてくるようになる。じっとりと汗を滲ませながら、周辺を見渡す。途中、ウサギや鹿を見たが肝心のスライムが見つからない。

 更に奥に進んでいく。


 ここら辺にいるはずだが……

 すると、後ろを歩いていた相棒に肩を叩かれる。


「イタ」


 相棒の指を指した方向には鹿の死骸、そして死骸を包み込んで、まさに食事中のスライムがいた。

 半透明の薄い青色をしていて、ぶよぶよの体の中には核と思われる赤い球体が浮いていた。


 スライムの倒し方は産まれたころから、耳にタコができるほど大人たちから聞いてきた。スライムはゴブリンにとって唯一の安全に経験値を稼げる魔物だからだ。

 核を破壊しろ。

 ただし直接スライムに触れると溶かされるから注意しろ。


 これだけだ。


 俺は愛用の棍棒をがっしりと握りしめ、スライムににじりよる。

 そしてスライムの中でふよふよと浮いている核に狙いをさだめ、棍棒を振りかぶった。


 グシャ


 核を破壊されたスライムはぶるりと体を震わせると、水風船に穴が空いたときのように薄く広がって水溜まりのようになった。


「コレデ終ワリナノカ?」

「楽勝だったな」


 魔物を殺した。

 しかも最弱のスライムとはいえ無傷でだ。


「これなら倒せる」

「ギギ、次ハ俺ニヤラセロ」


 そう言いながら俺らは森を走り回りスライムを見つけては背後から近寄り棍棒で核を破壊しまくった。


「もっと沢山いる所探そうぜ」

「モチロンダ」


 ずんずんと森を進んでいった。

 村からどんどん離れていっているのにも気付かずに。


 そう、俺らはうかれていたのだ。


 《レベルアップしました》


  *


 日が暮れ始めていた。

 いかんな、こんなに村から離れてしまった。流石にもう帰るぞと相棒の方を振り替えると、相棒は何か森の奥、木々の間を見つめ固まっていた。

 何事かと相棒に話しかけようとした瞬間、


「▲##〒▲&♭*▽§」

「○★□●◎▽#※%§§□□◆○●〒」


 なにやら会話のような音が聞こえてきた。

 俺は喉から出かかっていた声を必死でこらえ、未だ固まっている相棒の首根っこをつかみ、その場で伏せた。バクバクいう心臓の音が小さくなるようにと祈る。


 そして声の主が茂みを掻き分けて現れた。



 人間だ。



 バクバクと心臓の音が聞こえる。棍棒を投げ出し、震える手で口を抑えた。地面は少し湿っていて、体が泥で汚れていくのが自分でもわかった。


 俺は怯えていた。憎き相手、人間が目の前に居るというのに。

 棍棒を振り下ろすどころか、体は震えて動かすことができない。


 人間は2人。

 2人とも軽装だが、剣を腰からぶら下げていて、反対側の腰には薬草だろうか?草が袋からはみだしている。そしてあろうことか人間どもは、俺と相棒が伏せている方向へ歩き始めた。

 このままでは正面からぶつかる。


 くそっ


「相棒、オマエハ逃ゲロ」


 そう言いながら動かぬ体に鞭をうち、よろけながらも駆け出す。

 突然聞こえた魔物の声と、走る音に驚いた人間達は咄嗟に剣を握るが、剣を抜く前に俺の振るった棍棒が人間の肩を叩いた。


「#※○!!」


 ちっ、体が強ばって上手く動かねぇ


「○◆●〒□§§!」


 1人が肩をおさえながら下がり、もう1人がなにやら叫びながら剣を振り下ろしてくる。

 俺はそれを四つん這いになることで避け、脚に飛び付き、防具の隙間を狙って噛み付く。


「※●%〒%!?」


 このまま噛みちぎろうとしたとこで、下がっていた人間が、右手を俺に向け、叫んだ。


「●◆□●★**!」


「ギッ!?」


 咄嗟に両手をクロスにした瞬間、両手から鮮血が舞う。

 余りの激痛に俺は転げながら人間から距離をとる。

 ちっ、魔法使いかよ。


 痛ぇ、、両手は、もう無理か、、

 俺は両腕を見下ろした。刃で切り裂かれたような傷が出来ていて、まともに動かすことができない。


 まずいな、でも何故人間達はすぐに俺を殺しにこない


 2人の人間は何やら鞄をごそごそと漁り始めた。そして緑の液体が入った瓶をとりだし、口元へ持っていくと一気に飲み干した。


 おい、嘘だろ……


 みるみると傷口がふさがっていくではないか。

 すっかり元気になった人間どもはまた俺の方へゆっくりと歩きだす。


 化け物どもめ……


 俺は諦めて目を閉じた。







「ギィィィイイイイイ!!!!!」


 突然の雄叫びとともに、棍棒が左の人間の頭を叩く。


 相棒だ。


 おい、逃げてなかったのか

 お前じゃ勝てねぇ、たのむ逃げてくれ


 その想いもむなしく、相棒はそのままもう1人へと棍棒を振るおうとするが、剣で受け止められ、腹を蹴りあげられた。


「ッ!」


 腹を抑えうずくまる相棒の首を掴み持ち上げる。

 徐々に首を締め上げていく。

 バタバタと相棒が暴れるが武器もないゴブリンにできることはなかった。


 まずい、まずいまずいまずいまずい

 何か、何かないか

 何か…………!


 そうだ。

 そうだった。俺は今までスライムを沢山狩った。

 レベルも上がってるはずだ。

 呑気にステータスなんて見る暇はない。

 これしかない。


 なんでもいい

 頼む



 俺らを助けろ



「召喚」



 そして視界が真っ白になった。

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