異世界転生
ここはどこだ?
暗い。暗いが暖かい。包まれるような。
何やら押し出されるようようだ。
閉じられた瞼の裏側に光が差し込んだ。
瞼に必死に力を込め、ゆっくりと開けていく。そして目に入ってきたのは、顔だった。禿げかかった頭、切れ長の目、大きな鷲鼻、大きい口に乱雑に並んでいる尖った歯、そして緑の肌。
え、ゴブリン?
「ギャーーーーーッ!」
俺の悲鳴に、あら元気な子が産まれたわとメスゴブリンはにっこりと笑ったのだった。
*
俺が産まれてから6ヶ月。あらゆることがわかってきた。まず、俺はゴブリンだ。何故なら両親がゴブリンだし、俺の肌も緑色だし、生肉が美味しいと感じる。成長スピードもかなり早い。生後3ヶ月で普通に走ったり会話したりできるようになった。
そしてゴブリンというのは頭が悪い。狩りに行っては誰かが死ぬが、そんなの気にしていない。誰が死のうが関係ない。全ては種の存続のために過ごしている。だがその頭の悪さが魅力でもあった。強いものは強いし、弱いものは弱い。弱いものはすぐ死ぬし、強いものは長く生きれる。それだけなのだ。弱いものをいじめる必要がないのだ。
そのせいなのか、ゴブリンには名前が無かった。「おい」とか「お前」とかで呼びあっている。
そしてもっと驚くべきことがあった。
この世界には魔法があるのだ。これに気付いたのは俺が産まれてすぐだった。何故かゴブリンの話している内容が産まれた直後からわかっていた俺は、起きているときは基本暇なので色んなゴブリンの会話を聞いていた。そしたら、聞こえてきたのだ"ステータス"や"人間の魔法使いに殺された"というワードが。
それから俺はステータスと毎日のように唱え続けた。
そして生後6ヶ月になった現在、遂にステータスを見れるようになったのだ。
ゴブリン Lv.1 ランクG
職業:未定
HP:2/2
MP:1/2
攻撃力:1
防御力:1
魔法力:1
俊敏 :1
技能:ゴブリン語
流石にあらゆるゲームや小説で雑魚と言われるだけあって、始めて見たステータスでも分かるくらいの雑魚っぷりだった。それでも俺は諦めなかった。このゴブリンの社会で生き抜いてやると決めたのだ。
おそらくHPが体力で、MPが魔力量とかそんなところだろう。MPが1つ減ってるということはステータスを見るのにMPが1つ無くなるのだろうか。試してみるか。ステータス。
ゴブリン Lv.1 ランクG
職業:未定
HP:2/2
MP:0/2
攻撃力:1
防御力:1
魔法力:1
俊敏 :1
技能:ゴブリン語
お、やはりMP1をつかうのか。あれ..なんか頭がクラクラしてき...た.....。
*
うぅ、頭いてぇ。なるほどな、MP0になると気絶すんのか、これは気を付けないとな。寝転がったままぼーっとしてるとあるゴブリンが近寄ってくる。
「オマエ、大丈夫カ?」
こいつは俺の親友だ。少し暗い緑をしていて若干細身なのが特徴だ。良いやつである。
「ああ、大丈夫ダ」
「ソウカ」
そういうと踵を返して帰っていった。基本的にゴブリン同士はあまり会話をしない。必要最低限の会話だけで生きていけるからだ。
さて、俺がおそらく気絶していたのは太陽の位置からいって6時間くらいか。どのくらいでMPが回復するのか見てみたいな。少し怖いが見てみるか。ステータス。
ゴブリン Lv.1 ランクG
職業:未定
HP:2/2
MP:1/2
攻撃力:1
防御力:1
魔法力:1
俊敏 :1
技能:ゴブリン語
なるほど、6時間もあればMP2は回復するのか。だがやっぱりMPの最大値は増えないか。気絶するまでMPを使えば最大値は増えるっていうのが定番なのにな。まずはMP1につき何時間で回復するのか調べないと。
それから俺は1ヶ月間実験に明け暮れた。
わかったことは
・MPの回復は時間で決められておらず、いかに身体を休めるかで変わる。普通に暮らしていると10分で1回復する。寝ると全快する。
・ゴブリンは体が大きくなるまで(大きくなると勝手にステータスが変わる)弱すぎて狩りが出来ない、つまりレベルを上げられないのでステータスが上げづらい。
・レベルアップ以外にも修行をすればステータスは上がるが、上がりづらい。
・MPを上げるために気絶し続けるとたまに死ぬらしい。
この死ぬかも知れないというのを聞いてかなりびびっていたが、なんか死ぬ気はしないので修行のつもりで気絶し続けている。
生後7ヶ月のステータスはこんな感じだ。
ゴブリン Lv.1 ランクG
職業:未定
HP:2/2
MP:2/4
攻撃力:1
防御力:1
魔法力:2
俊敏 :2
技能:ゴブリン語
称号:耐える者
毎日のようにMPをつかって気絶したり、走り込んでいたりしたらMPと俊敏が少し上がった。ただ木の棒を毎日振っていたが攻撃力は上がらない。
"耐える者"これはMP消費による気絶で得た称号だった。
MPが0になっても気絶しないという優れものだ。
俺の修行を訝しげに見ていた親友もいつの間にか一緒に修行するようになっていた。親友は攻撃力が上がっているのに、何かセンス的なものがステータスの上昇率に関係しているのだろうか?
俺達は狩りに行けるまで毎日修行を続けるのだった。




