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妖精の国、ピスカの夢

「おおーーーーー!」

「これはすごいな」

「ほんとにすごいです!!」


 目の前には幻想的な街が広がっていた。

 木の枝や虚には小さな家々が建ち、木と木の間にはキラキラ光る妖精が沢山飛び回っていた。そして遠くから見えたあの不思議な木はうっすらと光っていて、街全体を明るく照らしていた。


「へっへーーん、どう? 綺麗でしょ!!」


 あれだけ隠したがってたピスカは何故だか自慢げに胸を張っていた。


「よし、行こうか」


 街に入ろうとすると街の妖精と目があった。しばらくポカンとした顔で見つめあっていると、突然ぎょっとした顔になって、


「★◆▽□□▲%!?」


 何やら大声で喚いて逃げていった。

 妖精語か?

 他の妖精も蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


 隠れきれてないやつもいるが。ひょこひょこと顔を出してこっちを見ている。よく見てみたらあちこちから顔を出してみているな。

 妖精って言うのはみんなアホなのか?


 俺はピスカをまじまじとみた。

 俺と目があったピスカは何故か恥ずかしそうに身をよじる。


「な、なに見とれてんのよ!」

「見とれてない」


 逃げるだけ、こいつよりましか。

 街の中を進んでいくと、何やら針みたいなものを持った妖精達がわらわらと出てきた。


「お、おい!止まれ!」


 人間語だ。

 俺らはその場で立ち止まる。口髭を生やした隊長らしき妖精が前に出てくる。


「魔物が2匹に人間2人、ピスカめ、また余計な事をしたな!おい、そこの人間。 ピスカを離してもらおうか、一応仲間なのでな!」


 おい、ピスカ、一応とか言われてるぞ。

 村人がずいっと前に出る。


「不可能です」

「ふ、ふかのう、?」


 あまりにもきっぱり不可能と言うので、妖精の隊長は目を白黒させた。


「なぁ、ラスト、俺はまだそこまで人間語がわかんないんだ、何を話してるか解説してくれ。」

「ピスカを返せだって。」

「どうするんだ?」

「使えそうだからまだ捕まえとく。」


 威厳を取り戻した隊長が妖精語で兵隊達に命令し始めた。


「▲★▲%◆□ー!!!」

「ラスト、なんか沢山飛んできてるぞ」

「村人に攻撃し始めたな」


 村人は針のようなものでチクチク刺されているが、そこまでダメージは受けてなさそうだ。

 あ、今少し顔をしかめた。


「村人!パス!」


 俺は両手を差し出して言う。

 村人は俺のほうを振り替えって頷き、大きく振りかぶってピスカを投げた。


「ちょ、ちょっと!!ぐえっ」


 俺は上手くピスカをキャッチすると高く掲げて言い放った。


「それ以上攻撃するようならこいつを握り潰す!」

「なんでゴブリンが人間語を……」

「さぁ、どけ。こいつを握り潰すぞ。」


 ピスカは怖くなったのか、ジタバタし始めたが、きゅっと少し握ったら抵抗を諦めた。


「ちっ、卑劣な、女王様になんと報告すれば」

「女王?」

「そうだ! いくらピスカといえども、女王様の娘を殺させるわけにはいかんのだ!」


 え、ピスカお前、お姫様なの?


 俺は訝しげに大人しく握られてるピスカを見た。ピスカは恥ずかしそうに身をよじったのだった。


「おい、ピスカ、聞いてないぞ」

「だってぇ、言うタイミングなかったしぃ」


 どうするか


 1国のお姫様を捕らえてたとなれば、死罪は免れないだろう。

 だが相手は妖精だ、今の戦闘を見ている限り、弱い。圧倒的に。

 ゴブリンですら1匹でこの国を落とせそうだ。


 こいつらどうやって生きてきたんだ?

 結界が無ければ絶対に生きていけない。村人ですら一斉に攻撃されてもしかめっ面をしただけだったのだ。


 では誰が結界を?

 その考えに至った瞬間、ぞわっと寒気がした。あんな高位な結界張れるなんて相当な魔法の使い手だ。もしその魔法の使い手が妖精の国にいたら奇跡が起きたって勝てやしない。


「ピスカ、この国の結界を張ったのは誰だ。」

「んぇ?そんなの森の精霊様に決まってるよー。」

「何処にいる。」

「何さそんな怖い顔して、森の精霊様は何処にだっているよ。」


 どういうことだ?

 何処にだっているってことは、今も見られていると言うことか?

 ピスカの言うことは信じられないが、森の精霊というくらいだ、そのくらいのことは出来そうだな。


「おい!そこのゴブリン!何が目的なのだ!」

「ンギ?観光だが?」

「は?え?観光?」


 隊長はまた目を白黒させる。


 しかしどうするか。


 森の精霊とやらが、何処にでもいて今も見ているとしたら出てこなきゃおかしい。結界を抜けたやつが居るんだからな。だが出てこない、てことは見ていないのか?

 そこまで認識出来ないのか、それともこんな些細なことには関心が無いのかもしれない。

 であれば、


「ピスカは連れてくぜー。」


 俺は堂々と歩き始めた。後ろにニンゲンと村人とセイブルがついてくる。


「な!?ま、まて!ゴブリン!頼む!!」

「なんだよ隊長さん。」

「ほんとに観光ならピスカは要らないであろう?」

「保険だよ。」

「わ、わかった、私達からは何もしない、その代わりピスカには手を出さないでくれ!」


 隊長が涙目ですり寄ってくる。後ろの兵隊達もユラユラと不安そうに飛んでいる。


「それはピスカ次第だな」

「なんで私!?」

「そりゃ、お前が今からこの国の案内するから」

「案内? なーんだ、まっかせといて!!」


 なんでこいつは乗り気なのか分からないが、これで自由に観光出来る。


 *


 楽しい。


 この国には今まで見たことも聞いたこともないものが沢山あった。木の蜜で作ったお菓子というものや、木で出来た人形や笛などは感動した。それに景色もいい。何処を見ても小さくて、自然に溢れてて、輝いている。


 最初は怯えて出てこなかった妖精達も、俺らが本当に観光してるだけとわかるやいなや、わらわらと出て来て質問やら国の説明やらをしだした。


 そしてわかったことがある。ピスカはかなり問題児らしかった。

 よく国を飛び出しては鳥と喧嘩したり、動物や魔物と会話を試みてみたり。今も生きているのが不思議だそうだ。


 そう語る妖精達は皆優しげな表情を浮かべていて、ピスカを問題児扱いしながらも、好いているのが分かった。


「お前意外と好かれてるんだな」

「あったり前よ! てか意外とって何よ!!」


 ほんとにお調子者だなこいつは、確かに憎めないやつだ。


「なんで国の外に出たがる? 妖精じゃ危険だろ?」

「だってこんなとこに居たって仕方ないじゃない、私はもっと大きな世界で大きな事をするのが夢なの!」

「そんな小さい体でか?」

「体の大きさなんて関係ないでしょ、むしろ小さいやつが大きい事をした方がかっこいいじゃない!」


 なんかかっこいいな、と思ってしまった自分がいた。

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