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逃走、そして夜明け

「よし、逃げるぞ」


 相棒が合図してくる。

 俺は村長の剣をもって相棒に着いていく。後ろにはニンゲンが続いた。




 木から木へと渡っていくと、人間の小隊、おそらく斥候部隊が下を通るときがある。奴らは何らかの技能を持っているのか、俺達に気づくことがあって厄介だ。


 相棒が立ち止まって振り返った。


「右に5人、左に5人、前方に5人いる」

「前方だな」


 俺が簡単に返事をすると、相棒は頷いて進み始めた。だんだんと人間の声がしてくる。3人は立って周囲を警戒していたが、2人は座り込んで談笑していた。


「はぁーあ、てかなんで俺らまでこんなとこに駆り出されてるんだ?」

「なんでって、そりゃヴェルトハイム様の御子息が行方不明だからだろ」

「けどよぉ、あのゴブリンの巣に装備一式が見つかったんだろ? それってもう死んで……」

「おい!それ以上言うな、不敬罪になるぞ、それにまだ剣は見つかってないらしい」


 そこで周囲を警戒してた人間が声を発した。


「お前ら黙れ、何かいるぞ」


 俺は相棒と目配せした。相棒は頷いてくる。


 シュッ


 相棒が俺らに気づいた人間を射貫いた。


「ッ!上か!」


 残りの四人が上を見上げるがもう遅い。ニンゲンが1人を斬りながら着地し、返す刃で更に1人斬る。遅れて俺も村長の剣を振り下ろしながら飛び降りる。


 グシャッ


 これであと1人


「な、なんで人間がゴブリンと一緒にッ、」


 シュッ


 ドスッ


 最後の1人の頭頂部を貫いた矢は勢いそのままに背中から飛び出し地面に突き刺さった。


 こりゃもう矢の威力じゃねぇ。俺は相棒の成長に舌を巻きながら考える。


 《レベルアップしました。》


 やつらは人を探してたのか、それで装備一式を俺らの村で見つけた、剣はまだ見つかってない


 まさか!?


 俺は自分の持ってる剣をまじまじとみた。今まで気づかなかったが、確かにこれは俺と相棒が戦った、あの人間が持っていた物だった。


 てことは

 村が襲われたのは俺のせいなんじゃ……


「おい、お前は悪くない、お前は生きるために人間と戦っただけだ、もちろん俺もだ」


 相棒は少し怒った表情で俺に言った。


「けど、あの時俺がスライムを狩りに行こうだなんて言わなければ……」

「どっちにしろ村はあの二人に見つけられていた、遅いか早いかの違いしかない」

「けど……」

「しっ!」


 相棒が右手を上げて俺を制止する。


「ッ!まずい、左右の小隊に気付かれた!」

「話は後だ!」


 そういって相棒は走り出す。


「まずは生き残ることです、村の皆のためにも」


 ニンゲンもあとに続く。

 俺は剣をぐっと握りしめて、相棒の後を追った。


 *


「まずい、まずいまずいまずい!」

「どうした!」


 こんなに焦る相棒は滅多に見たことがない


「徐々に包囲されてきてる! 恐らく相手側に索敵のレベルが高いやつがいるぞ」


 右へ左へと曲がったり、急に引き返したり、ある時は人間を殺したりしたが、相棒は立ち止まって言った。


「これは、完全に包囲されたな」


 月明かりに照らされた森の中に俺らは立っていた。

 木々の間から、松明の炎の光がちらちら見える。右にも、左にも、後ろにも見えた。


「どうする?」


 と、相棒が聞いてくる。


「ギィ、、敵の数はどのくらいいる?」

「わからない、沢山だ。少なくとも100はいる」


 俺はその言葉にため息をついた。


「正面突破は無理そうか?」

「無理だな、隙は無さそうだ。小隊を倒したとしても、近くの小隊に囲まれる」


 万事休すか……


「剣を返したら逃してくれるなんて、無いよナ?」

「そんなわけないだろ、俺らはゴブリンだぞ」

「いえ、試してみる価値はあります」


 今まで黙っていたニンゲンが、話し始めた。


「剣を返したのがゴブリンであれば、確かに殺されてしまうでしょう」

「けど、それが人間であれば?」


 なるほど


「人間の部隊は引いていくかもしれない」

「やる価値はあるな」


 相棒の合意も得られた。いつの間にか俺は、生きることを諦めずにはいられなくなっていた。


 *

[人間の部隊長視点]


「伝令!!伝令!!」


 前から焦った様子の伝令係が走ってくる。


「見つかったか!?」

「い、いえ!ただ、剣は見つかりました!」

「なに?どこにあった」

「それが、村人と思われる人達が持ってきまして。」

「村人?ここらへんに村はあったか?」


 どちらにせよ、これ以上の捜索は無駄か


「その村人どもを連れてこい」

「はっ!」


 伝令係はビシッと背筋を伸ばして敬礼し、走っていった。


 まずいな、ヴェルトハイム様の御子息が死んだとなれば、お怒りの矛先が私に向きかねない。

 それにしても、村人?ここら辺に村は無いはずだ。

 ある程度戦えないとこの森では生きていけないだろう。


 すると伝令係が村人3人を連れてくる。


 うむ、なんとも貧弱そうな身体だ。


「そなたら、どの村から参った?」

「わかりません」

「は?」


 聞き間違いか?

 私は咳払いしてもう一度きく。


「そなたら、どの村から参った?」

「わかりません」

「では、剣はどこで拾った?」

「そこら辺で拾いました」

「どうやってこの森の中を通ってきた?」

「わかりません」


 こいつら舐めているのか?

 俺は腰に差してある剣を握りながら、声を張り上げた!


「答えよっ! そなたらは何処から参った!ヴェルトハイム家の御子息は何処だ!剣はどのようにして見つけたのだ!」


「わかりません」

「このっ!答えなければ斬る!答えるのだ!」

「わかりません」


 俺は剣を抜き真ん中の村人の首に添えた。

 首から一筋の血が流れる。

 それでも村人の表情はぴくりとも動かなかった。


「これが最後のチャンスだ、答えよ」

「わかりません」


 ズッ


 そのまま首を斬った。血が噴水のように吹き上がり、両隣の村人に振りかかるが、本人達は全く気にする様子もない。


 なんなんだ、こいつら。


 俺は不気味に思い、一歩後ずさる。


「おい!そこのお前!この2人を捕らえろ! ご子息殺害の容疑で処刑することとする」


 側にいた兵士に向かって命令した。


「はっ!」


 これで少しはお怒りが収まればよいが……


「撤収だ!首都、ローゼンベルグへ帰還する!」



 *


「おい、人間どもが離れていくぞ」

「助かったのか……?」

「上手くいきましたね」


 俺らは大きな木のてっぺんの枝葉に隠れながら、人間どもが引いていくのを見ていた。


 よしっ!生き残った!!


 俺はニンゲンの方を振り向いて


「ありがっ! い、いや、なんでもない」


 俺は今こいつに向かって何て言おうとした、首を思いっきり振って、あり得ない思考を消し去る。俺が人間に感謝なんてするわけない。するわけにはいかない。


「なんでしょう?マスター」


 ニンゲンは不思議そうな顔で見てくる。


「おい、マスターはやめろ」

「ではなんと呼べば? あ! では私が名前を考えてあげます!」


 なにやらとんでもないことを言い始めた。



「マスターの名前は"ラスト"です!」



 《個体名を"ラスト"に設定されました》


「なっ!?勝手に決めるな!」


「ブラックゴブリンさんは"セイブル"です!」

「セイブルか、いいんじゃないか?」


 何故か相棒は納得しているが、俺は絶対認めない。

 にしても名前か、ラストねぇ。


 人間の部隊が索敵に引っ掛からなくなるまで名前について討論していたら、気付いたら空が明るくなっていた。


 やっと夜明けか。長かった、本当に。


 左右を見ると、ニンゲンも"セイブル"も地平線に浮かぶ太陽を見ていた。




 ――生きてて良かった



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