表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/24

絶望の先の絶望

 俺は村長だったものを見ていた。


 ああ、終わった


 もう生き残っているゴブリンはもう居ないだろう。村長も死んだ。相棒もきっと死んだのだ。生き残ったのは俺だけだ。


 もう生きてる意味なんて、ない


「……人!主人!逃げましょう!」


 気付いたら目の前にニンゲンがいた。憎き人間。

 手を伸ばし、俺の手を引こうとする。


「ッ!触るな!!」

「主人……」

「もう終わりだ!村も!俺も!おまえも!!」


 俺は叫ぶ。


「お前ら人間のせいだ!オークが来たのも!村長が死んだのも!!」


 村長だったものをみて、両親が死んだときの光景を思い出す。


「両親を殺したのも人間だ、死ネ!お前らが死ねよ!!」

「出来ません」


 俺は目の前のニンゲンに唾を吐いた。


「消えろ!早く失せろ!!」

「出来ません」

「命令ダッ!消えろ!!」

「出来ません」

「ナッ?!」


 なんでこいつは命令を聞かない

 召喚獣なのに


「逃げましょう、主人」


 俺はニンゲンに抱き抱えられそうになる。

 咄嗟に村長の持っていた剣を拾った。


「触るな!穢らわしい人間が!コノッ」


 唯一まともに動く首を動かし腕に噛みつく。


「ぐっ。主人、、それでも

  それでも私はあなたを守ります。」



 ニンゲンは俺を抱えたまま走り出した。周辺にはオークの死骸が転がっていた。ニンゲンが殺したオーク達だろう。しばらく進むとゴブリンの死体が見え始め、オークとゴブリンが折り重なって血の海に沈んでいた。

 地獄だった。


 びしゃびしゃと血と土が混じりあった地面の上を走り抜け、門に辿り着く。そしてそのまま村の中に侵入してこようとしたオークを上から下に切り裂き、頭上を飛び越えた。後方のオーク達は咄嗟に槍を上方に構え、空中にいるニンゲンに向かって一斉に突き出す。ニンゲンは右手に持った剣を逆手に持ち突っ込むが、幾つかの槍は手や脚や腹をを切り裂いた。


「うおおぉぉぉぉおお!」


 そのまま剣をオークの肩からズブリと突き刺すと、今度は全方位から槍が突き出された。

 

「くっ」


 ニンゲンは剣を抜きながら、それらを避け、切り払い、己の体を犠牲にして俺を守った。


 突き出される槍を避け

 首を切り飛ばし

 でかい図体を押し退け

 血の噴水を浴びながら前に進んでいく。


 1歩ずつ、着実に。


 目の前の明らかに強い人間にオークたちがたじろいだ。

 ニンゲンはその隙を逃がさず、一瞬で近寄り、1体の腹を切り裂いた。


「ブギャァァァアアアア」


 オークの腹から臓物がこぼれ落ち、悲鳴をあげる。人間はそこから腸を無造作に引きちぎると、周囲のオークにばら蒔く。

 後方にいたオークたちは、突然上がる血の噴水と臓物の雨によって恐怖し、混乱した。


「ブモォォォ」


 突然、重低音の声が鳴り響き、戦場が静まり返る。オークの群れの中心から、大きな斧を持ち鎧を着こんだ3メートル程のオークが現れた。

 ハイオークだ。


「……主人、このオークは私にも厳しそうです。もし私が殺されそうな時はすぐに逃げてください。」


 ニンゲンは俺の事を下ろしながらそう言った。俺はニンゲンをまじまじと見た。オークの血にまみれ、傷だらけで、服も剣もボロボロだった。そしてその眼は、弱音を吐いたとは思えない程、希望に満ちていた。


「何で、何で諦めない。」


 俺の言葉を聞いたニンゲンはニコリと笑うと、そのままハイオークに向かって駆けていく。


 ハイオークはニンゲンに向かって斧を振り下ろした。その素早さたるや、ニンゲンは紙一重で避けたが、風圧で弾き飛ばされる。4回転程転がったあと、ふらふらと立ち上がり剣を構える。


 今の出来事だけで、わかってしまった。ニンゲンではあのハイオークには勝てない。明らかに格が違うのだ。


 それでもニンゲンは絶対に諦めなかった。ハイオークの周りにへばりつき、弾き飛ばされてもまた粘着した。

 ハイオークは諦めないニンゲンに対して、イラついた。


「ブモォ!ブモォ!」


 指を突き出し、周りのオーク達に命令する。ニンゲンはハイオークと周りのオークに完全に包囲され、回避するスペースさえ失った。そしてニンゲンは希望に満ちた眼で俺を見た。




 逃げろ




 そう言ってるのがわかった。

 気付けば俺の周囲に俺の事を見ているオークは居なくなっていた。ニンゲンがどう殺されるかに興味津々なのだ。





 俺はニンゲンを見捨てた。



 ハイオークに恐れ、逃げ出した。生きることを諦めていた俺が、惨めにも転げながら逃げる。オークたちの足の合間をぬって、泥だらけになりだから逃げた。

 徐々に、徐々にオーク達の群れの中を進んでいく。

 そして、群れの端が奥の方に見えたとき、



 空に数百もの火の玉が浮かぶのが見えた。



 そしてそれらは

 流星群のように落ちてきたのだった。



 *




 熱い

 喉が焼けるようだ。


 いったい何が起きたんだ。

 肉の焼ける臭いが立ち込め、オーク達は倒れ呻き声をあげていた。


 ふと右を見るとそこにはボロボロに焼け爛れた人間、村人がいた。


 召喚は間に合ったのか。

 俺は動かない体に鞭を打って、上半身を起こした。


 ぐるっと周りを見渡して、そして笑った。

 倒れ、焼け焦げたオーク達の真ん中で俺は笑った。

 笑うしかなかった。



 なんだよこれ

 なんなんだよ



 黒焦げになったオークの群れの周りには

 数百人にもなる人間の部隊が布陣していた。



 そして、オークたちが倒れてるなか起き上がったのは

 俺と、身体からプスプスと煙を上げているハイオークだけだった。



「ッ!?」



 ハイオークと目が合う。

 その目は絶望に染まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ