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いつかケツの蒙古斑が薄まった時

 前回を投稿してすぐ、感想をもらった。ゲームの説明が下手だと、ばっさりとやられてしまったのだ。おれは少しムッときて、説明なんてつまんないこと、はなからするつもりねーっすよオレ、みたいな反応をした。少々生意気に思われるかもしれないが、常日頃からナチュラルに態度が大きめのおれを打ち出しつつ、一応失礼にはあたらないよう気をつけたつもりだ。その時の正直な気持ちを堂々と表明し、満足したおれはそのまま眠りについたのであった。

 一夜明けて、おれは投稿した文章を読み返してみた。たまげたね。確かにおれはちゃんとした説明をする気がなかったが、それでもおれの言わんとしていることはなんとなく伝わるだろう、それくらいのものは書けているだろうと、そう思っていた。だがそうではなかったわけだ。こういうことはよくある。おれはすこし反省した。感想をくれた人、ちょっとムッとしてごめんな。

 

 おれは説明不足ながらSlay the Spireについて色々と書いた。あれを読んだやつは、きっとおれが塔を極めし屈強な戦士に違いないと思ったはずだ。だがそうじゃない。おれがSlay the Spireをプレイした時間はすでに50時間をこえたが、まだまだケツの青いひよっこ同然である。

 具体的に書こう。このゲームにはレベルが20まである。レベル0からスタートで、塔の50階まで到達してそこにいるボスを倒せば一応レベルクリアで、次のレベルに挑戦できるという寸法だ。……気づいたか? 一応レベルクリア。なんだか引っかかる言い方をする。そうだ。実は条件を満たせば最深部のさらに奥にいる真のボスに挑戦できる。こいつを倒すことができれば、本当のレベルクリアとなるわけだ。こいつに挑戦するかどうかは任意で決められるので、倒さずとも次のレベルには進むことができる。はっきり言って真のボスはとてつもない。激烈だ。やつとの勝負を避けたとしても、臆病者と嗤われるいわれはない。だが……お前のチャレンジングスピリットがそれを決して許さないだろう。お前はいつだって戦士であり開拓者であり筋金入りのはずだ。おれか? おれなぁ……。実を言うと、おれはまだ真ボスに挑んだことがない。それどころかスタート地点であるレベル0からもまだ抜け出していない。おれが自分をひよっこ呼ばわりした理由がわかったか。だがな。おれは一歩ずつ着実に前へと進んでいる。おれはこの塔をレベル20まで極めるつもりだ。いまは雌伏のときだ。このままで終わるつもりは毛頭ない。Slay the Spireについて語るべきことは現時点ではもうないが、いつかケツの蒙古斑が薄まった時……つまりおれが筋金入りとなりえた時、いま一度Slay the Spireを語ることにしよう。しばし待て。


 さて、Slay the Spireを皮切りに、おれのゲーム活動にインディゲームの嵐が吹き荒れている。その中にあって、グググッとおれの精神を激しく揺さぶったゲームがある。面白いとか面白くないとか、そういったものを超越して、大好きだ! そう叫びたくなる心の一本に出会ってしまったのだ。

 Night in the Woods。ナイト・イン・ザ・ウッズ。ぱっと見の字面だけだと非常にシンプル、インパクトゼロのタイトルに見える。森の夜。合ってるか? 英語0点の実績を持つおれの訳だ。間違っていても不思議ではない。その時は容赦なく後ろ指で指せ。不安ではあるが合っているていで話を進めるぞ。想像してみてくれ。森の夜、だ。鋭敏な言語感覚を持つお前なら、ただごとでは済まされないくらいに切迫した不気味な雰囲気を感じとったことだろう。おれは感じとった。だからおれは最初、タイトルだけ見てこいつはホラーゲームだと思い、スルーしようとした。ホラーゲームは……怖いから苦手だ。だがスクリーンショットを見て、かわいいネコちゃんが主人公のゲームだと知り安心した。おれと同じようにホラーが苦手なやつでもきっと大丈夫だ。怖くない。なにしろネコちゃんだ。インディゲームの小品だ。気軽に手を出せ。そして震えろ。哭け。


 ナイト・イン・ザ・ウッズはアドベンチャーゲームと言われている。アドベンチャーゲームってなんだ? おれにはなんだかよくわからないジャンルだ。ナイト・イン・ザ・ウッズなんかは、ここ小説家になろうにおいての、ジャンル「その他」って印象を受けるのだが、こういうゲームをアドベンチャーと称するのは適当すぎやしないか? まあいい。おれの預かり知らない事情や歴史があるのだろう。アドベンチャーゲーム。それでいい。なんでもいい。

 ゲームを起動するとしばらくの間、ネコちゃんがお前をじっと見つめてくる。彼女が主人公のメイちゃんだ。このにらめっこ、結構長く続くが、目を逸らしたりびびったりするなよ。しっかりとえぐるようににらみ返せ。どっちが主体か、彼女にわからせろ。

 とは言え、彼女はなにかにキマッてる風で、瞳孔は開きっぱなし。こっちのことをわかっているのか、わかっていないのかそれすら不明瞭だ。おれはねこぢるの漫画をちょっと思い出した。

 そうこうしていても、メイちゃんはただひたすらこちらを見つめてくるぞ。構えを解くなよ。彼女はどうやら冷静さを失っているようであり、のっぴきならぬ事情や不安定な精神状態が、その表情からうかがい知ることができる。これはかなり不穏な立ち上がりだ。森の夜、そう題するだけはある。

 そして、物語は始まる。一台のバスが、来る。そのバスに、メイちゃんが乗っている。間もなくポッサム・スプリングに着くだろう。彼女はそこで降りるはずだ。そして、物語は始まる。


 今回はここまでだ。

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