猫なで声でボーイミーツガール
前回、おれはSwitchをあまり良く思っていないかのように書いた……ように読まれたのではないか? そんな疑念が深まっている。実際は違う。おれはSwitchに信頼を置いているし、やつもまたその信頼に応える仕事をしてきた事実がある。だがそう読まれても仕方のない文章を書いてしまったのも事実だ。Switchのソフトに対して、良いとはいえない感情を箇条書きにして、それに対してのフォローもないまま力尽きてしまった。Switchが拗ねても不思議ではないところだが、どっこいSwitchは今日も元気でほっと一安心だ。
おれが言いたかったのは、こういうことだ。Switchの据え置き機としての育成をすっぱりと諦め、そのかわりに純粋な携帯機としての役割を求めたのだ。これだ。これを伝えたかったのだが、途中で力尽きた。だが贅沢な話だとは思わないか? 本来ならば先発ローテーションの二番手、三番手も立派に担いうる実力を持つ投手を、1イニング限定の抑えで起用しようと言うのだ。これは優勝間違いなしだろう。
Switchの運用については以上だ。よほどのことがない限り、当面はこういった起用が続くと思う。ではソフト面で、おれがSwitchに期待しているものはなにか? それはJRPG、すなわち日本のRPGである。
おれはこの日本に生まれながら、日本産のゲーム、とりわけRPGにはあまり触れてこなかった。嫌悪していたと言ってもいい。機能性無視の浮かれたナリの極彩色の髪色をした連中が、猫なで声でボーイミーツガール、はないちもんめの大ボス戦で流れる音楽はシンフォニックメタルorプログレもどき。
ああ、そうだ。ひどい偏見の目でおれはJRPGを見ていた。小馬鹿にして、鼻で笑っていた。こんなもんで喜ぶやつはアニメとゲームにしか興味のないうらなり野郎に違いないぜ、と。
一本のソフトが、強烈な一撃でおれの目を覚ました。そのタイトルは、JRPGの代表的存在でありながら、大バッシングを受けていた。擁護の声もないではなかったが、野蛮な連中の発する怨嗟の絶叫にかき消される寸前だった。これは、当時のおれの印象だ。実際はどうだったかなんて知らないし興味もない。過去は消え去り、もう存在しない。おれは、おれの印象を信じる。そのタイトルは、忌み嫌われていた。
ファイナルファンタジー13。おれに日本のゲームは面白いと教えてくれた。偉大なゲームだ。
もしこのタイトルが、あれほどのブーイングを受けていなかったのならば、おれが興味を持つことは一生なかったろう。問答無用の超人気シリーズの最新作がボロクソ言われている。一体どれほどのものなんだ? そんな、言わば下劣な野次馬根性でおれはソフトを手にとったのだ。
これがまた面白かった。最高に面白かった。最初の方こそ、青やらピンクの髪色の連中やこっぱずかしいセリフ回しやらに拒否反応を示し、そのままやめることも頭によぎったが、慣れてしまえばなんてこともない。とにかくハマりにハマって、おれにしては珍しくゲームクリア後も、やり残したサイドクエストをしらみ潰しにやり尽くすくらいにやりこんだ。いま思い出しても、あのハマりっぷりは唯一無二の黄金体験である。おれのゲーム歴の中でも最良のひと時と言えるだろう。
話が込み入ってきた。解きほぐそう。おれは仁王を続けるために、もう一つのタイトルが必要で、それはSwitchでできるタイトルで、アクション要素のないものが望ましい。こういう流れだったはずだ。ファイナルファンタジー13のことは忘れてくれ。実はこの流れには関係のない話だった。だが書かずにはいられなかった。そういうことはよくある。
さて、ここでひとつ告白せねばならないことがある。仁王はやめた。おれはもう仁王をやっていないのだ。あれは……苦痛だ。おれの心が、仁王を拒否した。おれはおれの心に従うしかない。それ以外になにができる? できやすまい。
今回は以上である。