そこに割って入るには、Switchは脆弱過ぎる
仁王をやっている。やり続けている。面白いか? そう問われれば、苦笑いをするおれがいる。退屈なゲームではない。その点は保証する。
だが……あまりにも想像どおり。パッケージの裏から想起される、どうせこんな感じのゲームなんだろう、そんなある意味では舐めきったおれの考えを裏切るような事態はまだ起こっていない。他のゲームをやりたいと、おれの浮ついた心がうずく。
しかし、ここまでは想定内。それなりの時間を生きてきた結果、おれは自身の性分を、ある程度は見通せるようになった。つまり、策は打ってあるということだ。
仁王には続編がある。その名もずばり仁王2だ。おれは仁王と仁王2を同時に購入した。高い買い物ではなかったが、安い買い物では決してない。懐がちくりと痛んだが、その痛みこそおれが求めていたものだった。
つまりは、こう言う理屈だ。おれは仁王2に先行投資をした。投資をしたからには、リターンを得たいと思うのが人情だ。酔っている時ならいざ知らず、素面で金をどぶに捨てるほど、おれは潤っちゃいない。ここにおいて、おれには仁王2をやる義務が発生した。だが目の前には、仁王と仁王2がある。仁王2ほどではないが、仁王にだっておれは金を積んでいる。さあ、どうする?
もはや答え合わせの必要もあるまい。おれはやる。やるべきことをやる。やるしかないから、やる。こんなふうに無理やり気合いを入れてやるゲームもたまにはいいじゃないか。爽やかな風が吹き、おれの頬を優しく撫でた。
だが、それでもおれはまだおれを信じちゃいなかった。ことゲームに関して、おれはとんでもない浮気野郎である。本命を決めずにあっちにふらふらこっちにふらふら、暴走する本能の命ずるまま、やりたい放題好き放題に散々食い散らかしてきた。そんなおれが少しばかりの金だけを理由に、一つのタイトルに注力できると思うか? 到底おれには無理だとそう結論づけた。おれには仁王に加えて、もう一つのタイトルが入り用だ。あくまでも理由は仁王を続けるためなので、違うタイプの、アクション要素のないタイトルが望ましい。
現在、うちのテレビには三機のゲームマシンが常時接続されている。最も新米だがすでに歴戦の勇士の風格すら漂わすPS4、比類なきサービスgamepassも眩しいXboxONE、セイクリッド2 専用機になってでも現役にこだわり続けるPS3。どいつもこいつもいつでもスタンバイOKとでも言いたげないい顔をしている。だが仁王を動かせるのはPS4だけだ。申し訳ないが他の二台の据え置き機はおれの計画には不向きだろう。なぜならばおれがソファに座る時、その手に握られているのはPS4のゲームパッドであるべきで、画面に映るのは仁王の主人公であるウィリアムその人でなければならないからだ。
つまり、おれの条件に該当するのは携帯機ということになる。その出番は多くないだろう。ベッドが主な活動場所になるはずだ。限られた環境の中、黙々と仕事をこなす……そんなプロの傭兵のようなやつが求められている。そんなやつがいるのか? いる。おれには心当たりがある。ここにきて、ベッドの下で埃を被っていたNintendo Switchが引っ張り出されることとなったのだ。
これは有名な話だが、Switchはテレビに接続することもできる。つまり、純粋な携帯機というわけではない。だがおれはやつをテレビに繋げたことは殆どない。ほんの数回といった程度だろう。さっきも書いたが、現状三機のマシンがテレビ横のメタルラックに鎮座ましましているわけで、そこに割って入るにはSwitchは脆弱過ぎる……おれはそう判断した。
確かにSwitchには、マリオがある。スマブラがある。ポケモンだってある。ゼルダがあり、スプラトゥーンもある。いまをときめくどうぶつの森もある。だが、そのどれもがおれを夢中にはさせてくれない。悲しいが、これが現実だ。なぜそうなってしまったのか、少し考えてみよう。
まずマリオは……すまない。おれはマリオに興味がない。偉大な男であり、敬意を払うべき相手だと思ってはいる。だが、マリオを操作したい、マリオになって駆け回りたい……そういう気持ちがどうしても湧いてこない。本当に小指の先ほどの興味もない。救いは、やつ自身もおれには興味がないであろうこと、おれなんかに愛されずとも恐ろしいほど多くの人間に愛されていることである。おれはマリオよりマスターチーフに感情移入する。
大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL……実はこいつをやるために、おれはSwitchを購入した。だが一人でやっても虚しいだけだし、対戦すると確実に負ける。このシリーズに初めて手を出したが、和気藹々とした雰囲気は見せかけだけで、かなりシビアな殺気溢れるゲームだと知った。面白いことは面白いが、怖い。殺されたくない……。
ポケモン・ソード&シールド。着替えとカード作りは楽しかったが、それらをモチベーションにして進んでゆけるほど、ポケモントレーナーの道は甘くなかった。所有するポケモンの数が膨れ上がるにつれ、落ちこぼれを出したくないおれのレベル上げ作業は耐えがたいものになっていった。ポケモンは数が多すぎる。
ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド。世間の評判は絶賛に次ぐ絶賛である。確かに、風の気持ちいい感じ、心休まる音楽、目に優しい色使いなど、素敵な部分はたくさんある。リンクもかっこいいな。だが……謎解きである。
おれは謎解きが好きではない。いや、きっぱりと嫌いだと言い切れることに、このゲームをやって気づかされた。おれは生まれてこの方、自分のことをばかだと思ったことは一度もないが、学校の勉強は驚くほどできなかった。あんなものを頑張るくらいなら、将来ホームレスでいいと本気で思っていた学生時分のおれだ。ただし、あんなものとは言ったがくだらないとは思っていない。勉強なんてくだらない、できたって実生活には役に立たない、とか言うやつがよくいるが、負け犬っぽくておれは嫌いだ。できないよりはできる方がよっぽどいいと当時も思っていたし、いまもそう思っている。できるやつは大いに誇れ。無駄な知識などあるものか。
話が逸れた。謎解きは似ているのだ、学校の勉強に。頭の中の奥深く、ぎりぎり手の届かない部分をほじくり返そうとするようなあの感じ……。考えるだけで苛ついてくる。が、それでも入り組んだ謎解きを諦めず、粘り強く挑んでゆくような姿勢には憧れを持っているし、おれだっていつかはきっと……という気持ちもあるので、またいちから挑戦してみたいタイトルではある。
スプラトゥーンに関してはあまり語ることがない。オンライン対戦でぼこぼこにされるくらいなら、路上の喧嘩でぼこぼこにやられた方がおれはよっぽど楽しいが、このあたりは個々の価値観によるだろう。
どうぶつの森もいまのところは興味がない。だがある日突然やりたくなる可能性もないとは言えない。そもそもどんなゲームなのかもよくわかってはいないのだが、決して悪い感情は持っていないので、いつかやりそうな予感はある。やらない予感もあるが。
疲れが文章に滲み出てきたのがわかるか? おれにはわかった。だから今回はここまでだ。