彼もどこかに消えてしまった
さて。おれは書きたいこと、伝えたいことが何もない。いや……これは嘘になるか。本当は、何かこう、もやもやっとしたものがあるのだが、そいつをどうしても文章に落とし込めない。それどころかどんどん遠ざかっているような気すらする。
いま思い出したことがある。7年前に文章を書き始めた時は、仮想読者として14歳の頃のおれがいた。彼はとにかく絶望していた。彼自身や彼を取り巻くあれやこれや全てに。おれは少しでも彼に希望を与えたかった。ほんの少しでも彼の救いになるような文章を書きたいと思っていた。
いつの間にか彼もどこかに消えてしまった。それでもおれは文章を、書いては消して書いては消して、何度も何度も書いては消してを繰り返している。
おれは忙しいわけだ。スケジュール帳は白紙だというのに。そもそもスケジュール帳など使ったことがないというのに。
ではなぜ忙しいのか。家事とゲームと文章と睡眠。つまるところこの世界を構成する四大元素なのだが、これら全ての活動を平衡して行うには、一日はあまりにも短くあまりにも儚いのだ。人の夢と書いて、儚いだ。漢字というものは時にびびるほど良く出来ている。そのことに気づかせてくれた、岡田あーみんには最大限の敬意を表したい。昔も今も、おれは全面的にパピィの味方だ。北野とかいうしゃらくさい野郎に、典子ちゃんは渡せん。絶対にだ。
上記の四元素の中では家事は比較的ラクなのである。だってやらなきゃいけないからね。やらなきゃ生活が成り立たないからやるしかない。そこにおれ個人の思想や美学が入り込む余地はないわけだ。だからやるだけ。やるしかないんだから、やらなきゃダメなのよ。クレイジー剣さんが歌っている通りだ。
必然的にその次にラクなのが睡眠となる。いや、睡眠状態そのものはラクというか、とても良いものだ。一度寝入ってしまえば、あとは夢見心地の極楽気分に浸っていればいいので、もう一度言わせてもらうが、とても良いものだ。
問題はコントロールの難しさにある。理想はあるのだ。午前0時就寝午前6時起床の6時間睡眠。こいつが決まれば、一日にピシッと一本筋が入る。自ずと気力充実、家庭円満、心爽やか、笑顔朗らか、とどのつまりは絶好調といった具合になることは間違いのないところではあるのだが、これがなかなかどうして難しい。今年に限って言えば、成功率0パーセントだ。こんなものは確率とは呼べない。世界はそれを不可能と呼ぶんだぜ。
さあ後半戦、問題の問題児のお出ましだ。ゲーム。出たよ……。ゲーム。こいつはおれを狂わす。古のコーラは脳みそを溶かしたと伝承にはある。この現代においては、その座にゲームが就いた。ただでさえ儚い一日が、こいつに浸食されると、まるでウスバカゲロウのようにはらはらと散ってゆく。グレイテスト・ディジタルドラッグ、ビデオゲーム。一度はまっちまったらもうおしまいだ。人間やめますか? セーブデータを更新してもよろしいですか?
そして、文章が残ったわけだ。こいつだけは動きが予想できんのだ。ポテンシャルは間違いなくぶっちぎりのナンバーワンだ。ひとたびやる気を出せば、軽々と一日を根こそぎ持ってゆく。そういう勢いを秘めている。こいつを非常に高いレベルでコントロールできるようになると、先生と呼ばれるようになるらしい。富と名誉がシャワーのように降り注ぐという。なんだ夢のような話じゃないか!
ちっちっち。落ち着け少年。飛びつくのはまだ早い。美味しい話には裏がある。美味しくない話にも裏がある。どんな話にだって裏がある。華々しい表舞台の陰には、タオルを頭に巻いてヘインズの白Tシャツと色あせたジーンズで走り回る裏方さんがいる。ウラウラウラウラウラベッカンコーと歌っていたジャングル黒べえはドラえもんの裏に葬られてしまった。ウララウララウラウラのこの世は私のためにある……こんな常軌を逸した歌詞の歌がヒットソングになっていた文明がどこかの島国にかつて存在したと言われている。……どうだ? これが文章だ。これでもまだ文章という暴れ馬を乗りこなしてみせると、おまえにそう言ってのける覚悟はあるか? とてもじゃないがおれには無理だ。だが少年、おまえならあるいは……。
トビィ少年の瞳の輝きは、男にそう思わせるだけのまばゆさがあった。だが男は知っていた。かつては男の瞳も同じような輝きを放っていたことを。その輝きは移ろいやすく、あまりにも儚いということを。儚いという漢字は人の夢と書くということを……。
と言うわけで、スターフィールドと並行でポケットモンスタースカーレットを遊んでいる。おい。おいおいおいおい。ポケモン面白ぇーよ。めちゃくちゃ面白いじゃないか! どういうことだ? ソードシールドではなんとも思わなかったポケモンたちが、今回はめっちゃかわいいんですけど。特におれはちっちゃいポケモンが好きでねえ。コフキムシとかさ。だってかわいいんだもん。かわいいは西魏!
だが一番のお気に入りはキャモメなのだった。余分なパーツを取り除いたシンプルなデザイン。超クールだと思わないかい。あれだよね。ナウシカのメーヴェ。まだ小学校にも入る前、メーヴェを駆るナウシカがノーパンか否かで佐野くんと大激論になったのを昨日のことのように覚えているよ。おれは強固なノーパン派だった。佐野くんは、それはない、そんなわけがないとなぜか怒っていた。でも実際問題、何度確認したって履いているようには見えなかったのだ。おれは今でもノーパンだと信じているよ。さっくん、おまえは?
話を戻すが、キャモメはなあ……進化するとなぜか知らねどペリカンになっちゃうんだよな……。あのペリカンにはがっかり進化ナンバーワンの称号を与えたいね。そういえば、俺の屍を超えてゆけ……じゃなくて、君たちはどう生きるかに大量のペリカンが出てきてたよな。
はやおさんよ……さてはあんた……やってるな? あれだけゲームは嫌いって言ってたのによ、アニメで嘘はつけねえなあ、ええおい!
なんかおれテンションおかしいな。こりゃ近いうちひと雨くるな。今回は以上だ。