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原始のスープめいた混沌を

 時間がするすると滑らかに流れてゆく。その時々の気分を確かめる余裕もありゃしないのだ。連続性は途切れ、リアリティ不在のまま、全てが進行してゆく。いつの間にかゴタゴタが始まっていて、気づいた頃には泥沼化している。発端も経緯も文脈も、皆が熟知しているようだが、おれにはなにも教えてくれやせず、それらしくほのめかすだけ。間抜けなノロマには構っていられないよ、と唾をかけられているようなものだ。

 本当に、まじで、人間社会というものはもつれにもつれている。どこもかしこも込み入った事情があり過ぎて、なまなかな素人がおいそれと手を出せる状況にはない。

 結局のところ、文章を書くしかないのだ。働いたり、いちゃついたりする前に、まず文章を書くべきなのだ。文章を書いている間は、時間の流れが緩やかになる。おれが生まれながらに漂わせている、そこそこの落ち着きと、品の良さ。そしてちょっぴりの意地悪。そのあたりをじっくり眺めるいい機会になる。

 表層に貼りついた欺瞞やおためごかしを丁寧に剥がした先にある、原始のスープめいた混沌を、どうにか言葉に変換しようと試み、そして見事に失敗する。そんな作業に没頭する時間が、おれたちにはどうしても必要だ。


 スターフィールドは、なにしろ馬鹿げたゲームだ。ベセスダいい加減にしろ、と言いたくなる。既におれはこのゲームに100時間以上を注ぎ込んだが、底が見えないどころか、本当に底があるのか不安になるほどだ。

 オンラインゲームならいざ知らず、スターフィールドは完全オフラインのタイトルである。どうやらベセスダは我々とは違う感覚で時間という概念を捉えているらしい。常識的に考えて、単一タイトルで100時間のプレイってそれなりに遊び込んでいると言えるレベルではないだろうか。ゲーム開始当初に思いを馳せ、思えば遠くに来たもんだ……なんて感慨に耽る頃合いだ。

 だがスターフィールドはそれを許してくれない。そもそもが、ものの数秒で月から木星へ移動できる技術が確立された時代だ。最寄駅まで歩いてゆくよりも、宇宙船で隣の銀河に飛ぶ方が、早く済む世界だ。それでもなお、あまりにも広すぎる大宇宙。ちっぽけな人類のしみったれた感慨などが割って入る隙は、はなっからないのだ。


 先だって、某芸能事務所が「全ての権利は太陽系全域において、事務所に独占的に帰属する」なんて文言の契約書をすっぱ抜かれて物笑いの種になっていたが、太陽系全域など小さい小さい。吹けば飛ぶ鼻くそレベルの小ささだ。連中も本気で大宇宙時代の到来を危惧していたのであれば、せめて銀河系全域と明記するべきであった。

 そういった想像力の欠如、しみったれた庶民的なゴージャス観は、我が国のエンターテインメントに巣食うひとつの病理だ。そんなザマで、無限に広がる大宇宙に対応できると思っているのか、とおれは問いたい。

 もっとブチ上げろ。無茶でも構わずブチ上げろ。もっとケレンを。ケレンで飲み込め。ケレンで窒息させろ。ケレンで殺せ。狂え、狂っちまえ! どうせおまえら全員トチ狂ってんだから、いい子ぶってないでやっちまえよ。ルールだ? 道徳だぁ? どのクチで寝言こいてるんだボケナスどもが!


 やっぱりゲームに限る。ゲームがいい。リアルはちょっとお下品が過ぎる。おれみたいに華奢で繊細な魂の持ち主がまともにリアルと向き合うと一発でのされてしまう。へへ……いいのもらっちまったぜ……。

 まじな話、ちょっと最近底抜け過ぎやしないか? 邪悪なやつが多過ぎやしないか? 一体なにが起こっている? いつの間にか地獄の釜が開いたのか? それともおれがいかれちまったとでも?

 いや、いい。なんでもいい。好きにしてくれ。やったもん勝ちだよな。それで結構。せいぜいよろしくやるこった。だがな。おれはそっちの流儀には付き合わないよ。ヘドロ色に染まりたくはないんでね。


 結論。スターフィールドはとってもいいゲームだよ。すっとろくさいチュートリアルなんてものは存在しないから、最初はわけわからないけど、大丈夫。なんとかなる。どうとでもなる。ならなきゃならないで、どうにでもなる。

 ボリューム、カロリーは山盛りいっぱい夢いっぱい。学生街の定食屋さんみたいなゲームなんだ。

 邪悪なみんな! はやく宇宙に飛び出し、魂の洗濯をしよう!


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