表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワケあって、異世界審査通っちゃいました  作者: 蜂月 皐
第2章「リザードマン編」
20/78

第20話 「ワケありの商談と別枠の商談」

引き続きご愛読いただき、ありがとうございます!

現在、投稿中の「ネット小説大賞」様より感想をいただいておりますので、そちらのサイトもご見分していただけると嬉しいです。


鈴空の野望の第一歩。商談の行方はいかに………

僕達が、リザードマンの村に滞在し、早1カ月が立とうとしていた。村の破壊された建物の片付けは終わり、復興に向け動き出すところだ。ただ、そこには大きな問題があった。村人つまりは、移住者を含めた、住人の確保である。ルリアと龍じい以外のリザードマンは先の惨劇で全滅しており、現状この村の住人と呼べる者は2人だけであった。つまるところ、幼女と老人である。復興には、人手も大事だが、誰でも良いってわけではない。職人や、商人などの人材もほしい。そして、またこの村が危険にさらされないように、ギルドもあるといいな………。


「鈴空さん。今日の剣術稽古は終わりですか?」


僕が考えを巡らしていると、リアが声を掛けてきた。今日もリアは可憐だ。ケモ耳がふわふわと風に靡いておる。ケモ耳………


「はッ!!!俺としたことが、大事なことを忘れていた!」


そうだった!この村に一番必要不可欠なものを僕は忘れていたのだ………。

その晩、僕は床に就くと、一晩中悩み続けた。村の復興………即ち、リザードマンの村の復興、即ち、デミヒューマンの村の復興、即ち、ケモ耳村の誕生、イコール、僕のオアシスの爆誕!しかし、これをするには、僕が、この村の実権を握る必要がある。でも、こんな急にしゃしゃり出てきたヤツが、皆からの承諾を得られるのだろうか………。んー………。

ま、皆と言っても、幼女とじいさん、しゃべる刀だけか。リアは別枠だから良いとして………上手く話を持っていけばなんとかなりそうだな。明日にでも皆に話してみよう!

翌日、剣術稽古が終わると、僕は皆を集めた。


「えー。今日は、皆に話がある。我々が、この村に来て約1カ月がたった。荒れ果てた村の片付けも粗方終わった。今後は、復興に向けて動く時期だと思う。だが、その前に、ルリアと龍じいに話しておかなくてはならないことがある」


相手を信用させるには、まず、自分のことを知ってもらうことから始めないといけない。自分の素性を明かし、その上で提案を述べる。僕は、自分が異世界からの転移者であることを二人に話した。もちろん、自分の野望は()()()、だ。


「やはり、そうでおじゃったか。紗月を従えるとなると只者ではないと思っておったが異世界者か」

「鈴空は、違う世界の人だったんだね。道理で、他のヒューマンとは違う匂いがすると思った」


よし!龍じいとルリアの気持ちをつかめたな。とりあえず、始めのつかみとしては、これでOKだな。さて、ここからが重要だ。僕が提示するものと相手が望んでいるものを丁度いいところで合致させる作業だ。多少の虚言は、嘘も方便ということで勘弁してくれよ。


「俺は、異世界で国を動かす立場にあった。なので、政治経済には多少明るい。さらに、いくつもの企業を更生させる仕事もしていたのだ。そのかいあって、莫大な富を得ていた俺だが、本当に欲していたものは、富や名声ではなかった。国民皆が安心して暮らせる世の中を作りたかったのだ。だから、稼いだ金は、全てボランティアとして、寄付していた」


嘘もここまでくると、本当にリアルで自分がその立場だったような気がしてくるな………。でも、これって僕という人間と正反対の人間を仮想しているようにも思えてきて、なんだが虚しいな。


「ほほう。鈴空は若いのに、立派なことをしておったのでおじゃるな」

「ルリアね、鈴空の国見てみたい。どんな国だったの?楽しい国?」


心が痛むー!つらっ。そんな純粋な目で僕を見ないでくれー!し、しかし、これも僕の野望のため。血反吐を吐いても、この商談上手くまとめるぞ。


「俺の国は、それはもう豊だった。食べ物は余るくらいだし、高度な技術が発展し、人々の生活水準は高く、皆が平等で、幸せで楽しい生活を送っていたよ」


ぐあー!出血多量で死にそうだ!誰か、俺に治癒魔法をかけてくれー!


「へぇ。鈴空の国、行ってみたい!」


なんか、リア少し引いてない?大丈夫か?余殃眼で見透かされたりはしてないよな?


「俺もルリアを連れて行ってあげたいのは山々なんだが、現状、元の世界への戻り方がわからない。すまない………」


も、もう少しだ。耐えろ。耐えてくれ!俺の良心よ!野心が良心に打ち勝つまさにその時まで………。


「この先、元の世界への戻り方が判明するかもしれないし、もしかしたら一生戻れないかもしれない。だから、ルリアに連れて行くって約束はできない………。だが!この世界に同じような国を造ることはできる!」


はぁ、はぁ、はぁ。ラストスパートだ。ここで踏ん張れなくて、何がケモ耳王国か!僕の理想とする、僕中心の、僕の為の、酒池肉林。あっ、いや違った。僕の世界!ここから、この村から国を建国し、世界を掌握する。その第一歩だ!


「国造れるの?豊で楽しい国。ルリア達が、幸せに暮らせる、悲劇のない、安全な国」

「もちろん!俺なら、それが可能だ」


ルリアは、龍じいと顔を見合わせる。ポロポロと涙が頬を伝って地面に落ちた。


「わかったでおじゃる。この村の復興、しいては、我々の未来、鈴空、お主に託そうぞ!」


きた――――――!!!その言葉を待っていたぜ!


「わかった。その任、俺が承った。しかし、俺も異世界に来てから日が浅い。皆には、僕の手伝いをしてもらいたい。協力してもらえるだろうか?」


独裁政治だと思われると、厄介だからな。ここはまず、下手に出て相手の出方を伺おう。


「わしは、老兵。わしにできることがあれば、使い潰されるが良いでおじゃる。その先に明るい未来があるなら喜んで尽力するでおじゃる」

「ルリアも鈴空の手伝いするー!」

「わしは、名前をいただいた時より、主様の刃じゃ。常に主様の傍らで世の移り変わりを見分していきたい。主様の決めたことなら異存ない」


龍じいもルリアも紗月も了承してくれた。あとは、リアだな。


「リアはどうだ?南に向かっている途中で、こんな話になってしまって悪いが、このまま村を放っていけない」


リアは、俯いていた。しばらくすると笑顔で顔を挙げた。


「私も鈴空さんと同じです。このまま、村を去るなんてできませんね」


全員の了承を得られた。ミッションコンプリートだ!過酷な戦いを制した僕は、疲労困憊でその場に座り込んだ。すると、リアが僕の傍に寄ってきて、小声で囁いた。


「他の人は、騙せても私は、騙せませんよ。鈴空さんの心の内は、見えているんですから」

やはり、余殃眼で数々の虚言はバレていたようだ。でも、それでも了承してくれたのは何故なんだろう?リアは、続けざまに耳元で囁く。


「でも、この村を豊にしたいって気持ちは、偽りではないみたいなのでお手伝いします。あっ、それから、私のワケありの南行きの提案も忘れないでくださいね」


成る程。そうゆうことか………。お互いの望みの合致点。やはり、リアは別枠だったな。僕は、静かに頷いた。


読んでいただきありがとうございました。

これからも連載を続けていこうと思っておりますので、ご意見、ご感想等、寄せていただけると勉強にもなりますし、執筆意欲も出ますので、ぜひよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ