第18話 「続・リザードマンの村」
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龍じいの勘違いで、危うく殺されかけた鈴空。リザードマンの村で何が起こったのか?龍じいに真相を訪ねる鈴空達だが………
「ふむ。成る程な。どうやら、わしの勘違いで皆に迷惑を掛けしまったようでおじゃる。この通りじゃ」
リアの親切丁寧な説明で、小柄なリザードマンへの誤解が解け、彼は僕達に頭を下げ、謝罪を述べた。にしても、とんでも無いじいさんだ。武術を少しもかじったことのない僕にも、その強さを肌で感じ取れた。これからは、どうか仲間であってほしいものだ。
「龍じい様。無事で良かった」
龍じい?このじいさん、そんな可愛く、短い名前があったのか………。
ルリアが、龍じいの元へ駆け寄り、抱き着いた。こうやって傍目で見れば、孫を温顔で愛でている、普通のじいさんにしか見えないんだけどな………。
「ところで、契機合縁よ。お主、その姿はなんでおじゃる?そもそも、お主は、10年前の戦で、わしの目の前で死んだはずじゃが………」
先程の戦闘時の会話でもそうだったが、どうもこの二人は、古い知り合いみたいだ。これは、紗月の素性を知るチャンスかもしれない。黙って二人の会話を聞いているとするか。それはそうと、さっきから龍じいの語尾にちょくちょくくっついてくるおじゃるが気になって話に集中できん!
「そうじゃな。しかし、龍縫仁中、いや、龍じいよ。話しをする前に、一つ間違いを正しておこう。今のわしは、主である、紗月鈴空様より紗月の名をいただいた。もう、契機合縁ではない。紗月と呼んでくれんかの?」
「あるじじゃと?」
おいー!紗月のヤツ、僕のほうに話を振るなよー!しかも、さらっと、龍じいとか言っちゃっているし。お前らの関係は、それで良いのか?
小柄なリザードマン、もとい、龍じいは、年を取り、垂れ下がった瞼の隙間から、僕のほうをジロっと睨みつけてきた。じいさんに臆する僕ではないが、先程の戦闘を思い出し、無意識に目を逸らす。僕は、生唾をグっと飲み込み、深呼吸をして、自分のほうに流れてきた会話を繋ぐ決心をする。
「そ、そうだ!俺は、紗月の主人で、鈴空っていうもんだ。ついでに、仲間の自己紹介もしといてやる。こっちのケモ耳で可憐な奇跡の少女は、リアだ」
リアから、龍じいの人柄に関する情報を既に得ていた僕は、警戒することなく自己紹介をした。
「ふむ。鈴空とやら。お主が紗月を従えていると言うのが誠であれば、ただのヒューマンってことはないのでおじゃろ?そっちのデミヒューマンの娘、リアといったか?お主のその眼………それはまさか、余殃眼か?」
このじいさんも余殃眼に似たスキルでも持っているのか?まだなにも素性を明かしてないのに、不気味なじいさんだ。僕と、リアが返答せずに沈黙していると、紗月が口を開いた。
「我が主様の詮索はその辺でよかろう。まずは、この村の異変について聞きたいのじゃが………。龍じいよ。お主程の者がこの村に居て、どうしてこのような惨劇が起こるに至ったのか聞かせてもらえんか?」
龍じいは、ルリアを膝の上に抱きながら、静かに頷き、口を開いた。
「実のところ、わしは、今しがたこの村に帰ってきたばかりで状況がわからんのでおじゃる。というのも、わしは、ある人物からの依頼で、マシーネの統べる地、北へと出向いておった。依頼を達成し、里に戻ったのが、つい半刻前のことでおじゃる。村の惨劇を目の当たりにしたわしは、生存者がいないか探していたのじゃ。すると、かろうじて命を繋いでいる一人のリザードマンを見つけた。彼は、突然現れたヒューマンにやられたと最後に一言残し、息を引き取った………。そこへ主らが現れ、わしは、勘違いをして、襲い掛かってしまったというわけでおじゃる」
ヒューマン、か………。ルリアから聞いた話に出てきたヒューマンと同一人物と考えて良いのだろうか?それとも犯人は複数のヒューマンと考えるべきか………。いや、今考えるべきはそこではないな。
「龍じい。他に生存者はいないのか?」
僕らが今、優先すべきは人命。生き残ったリザードマンを助けることだ。
「残念ながら………。女、子供に至るまで殺されておったでおじゃる。わしの帰りがもう少し早ければこんなことには………。悔やまれるでおじゃる」
女、子供にまで手を掛けるなんてホント糞ったれヤローだな。同じヒューマンってのがまたムカつく!い、いや待てよ。ヒューマンなんてそんなもんか。人なんてどこの世界でも私利私欲にまみれ、力なき弱いものを排除し、踏み台にして、自分の欲望のままに動く。他人のことなんてお構いなし。自分さえ良ければそれでいい。そんな奴らばかりだろ。今更、人間になんの期待を抱いているんだ僕は………。
「龍じいさん。私達は、この村に訪れる途中で、一人のリザードマンに襲われました。彼は、何者かに操られているようでしたが、心当たりはありませんか?」
リアは、僕達が倒したリザードマンのことについて龍じいへ話しをした。
「そんなことがあったのでおじゃるか。重ね重ねの非礼申し訳けない。ただ、そのことについての心当たりはないでおじゃる。そのリザードマン、死体は今どこに?」
僕達は、龍じいとルリアを連れて、リザードマンとの戦闘があった場所へ案内した。首を切り落とされたリザードマンの死体は、まだそこに放置されたままになっていた。
「お兄ちゃん!!!」
突如ルリアが叫び、死体に抱き着いた。もしかしてとは思っていたが、嫌な予感ってどうしてこんなに当たるんだろう………。龍じいが、ルリアの肩を抱き、彼もまた、ルリアと同様、涙を流していた。
しばらくの後、リザードマンの死体………いや、ルリアの兄の遺体を村まで持ち帰り、全員で、ルリアの兄と他のリザードマン達の墓標を造り、供養した。
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