第17話 「リザードマンの村」
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ルリアの話しを聞き、急ぎ、リザードマンの村へ向かう鈴空達。そこは、まさに地獄絵図だった………。
ルリアは、一呼吸付くと、静かに震える口を開いた。
「ルリアの日課は、お父さんとお母さんのお手伝いで、畑仕事。今日もいつもと同じように、畑仕事をしてたんだけど、お昼近くになって、私達が仕事の手を休めると、畑の周りに設置された木の柵の辺りから、声が聞こえてきたの。
笑い声………。たくさんの楽しそうな笑い声が柵の向こうから聞こえてきた。興味を持ったルリアが近づくと、お父さんがルリアを止めに来たの。そしたら、急に小さな羽の生えた妖精達?が草むらからたくさん飛び出してきて、ルリア達の目の前を覆ったの。気付くと、お父さんは、ルリアの隣から居なくなっていて、お母さんのほうを振り向くと、お母さんの目の前に一人のヒューマンが立っていた。そのヒューマンは、お母さんと何か話していたみたいだけど、次の瞬間、お母さんもそのヒューマンの前から姿を消したの。ルリア、お父さんとお母さんがいなくなって、怖くて、同じ村に住んでる兄の家まで走った。兄に事情を話すと、兄は、様子を見てくるって言って、ルリアは家でお留守番しているように言われたの。でもそのあと、2,3時間しても兄が帰って来ないから、ルリア、兄の言いつけ破って村の様子を見に行ったの。そしたら、村の人たちが、全員血まみれで倒れてて、みんな息してなくて………」
「わかったわ。ルリア。もういいわ。もう十分よ。ありがとう。辛かったね」
成る程。これはなにやらやっかいな匂いがプンプンするな。面倒事に巻き込まれるのは、本意ではないんだが、ルリアの気持ちを思うと、胸の底が熱くなる。他人に対して、こんな感情を僕が抱くなんて、自分でも意外な結果だ。もうそんな気持ち、とっくに捨てたと思っていたんだが………。
「現状は理解した。一刻も早く、村へ向かおう!」
僕は、自分の気持ちを抑えきれなくなり、駆け出した。そのあとを、ルリアを連れて、リアも追ってきた。
村に付くと、ルリアの証言通りの凄愴な光景が目に入ってきた。残虐で残酷な、惨憺たる情景。無残に殺された、リザードマンたちの死体から鉄のような血腥い匂いが村中に充満している。こんな残酷非道なことをできるヒューマンって、本当に人間なのか?僕は、この世のものとは思えない情景を目の当たりにし、声が出ず、しばらくその場に立ち尽くしていた。
「性懲りもなく、戻ってきおったかー!このヒューマンめ!皆の仇!今ここで、わしが誅殺してくれる!」
突然、一匹のリザードマンが僕に切りかかってきた。先程、倒したリザードマンよりも小柄で細腕の老いたリザードマン。手には刀を持っている。凄まじいほどの気迫と剣気をその身に纏い、鋭い太刀筋が僕の首を刎ねようと目にも止まらぬスピードで迫ってくる。気圧された僕は、反応が遅れる。
「龍剣:由良の水鏡!」
僕は、殺されることを覚悟し、目を閉じた。だが、いつまで経っても苦痛は訪れず、いつも通りの呼吸を行えている。ただ一つ。僕の両腕だけは刀を握り、打ち込まれた刀を受け止めて、凄まじい衝撃をその両腕に受けて止めていた。
紗月だ!動けない僕の体を無理矢理動かし、攻撃を防いでいた。
「受け止めおったか!こしゃくなヒューマンめ!だが、次は、そうはいかぬぞ!」
「待てぃ!龍縫仁忠!わしじゃ!契機合縁じゃ!」
紗月の発声に反応し、小柄なリザードマンの動きが止まる。
「契機合縁?あやつは、10年前に死んだ。我を欺き、我が友の名まで語る、悪逆非道なヒューマンめ!許さん!覚悟しろ!」
小柄なリザードマンは、聞く耳持たず、再度刀を振りかぶり、僕に切りかかってきた。
「やめてー!!!」
次の刹那、僕とリザードマンの間に、ルリアが戦いを阻止しようと叫びながら飛び込んできた。しかし、小柄なリザードマンは既に攻撃態勢に入っており、途中で技を止められない状態だった。
「ルリア!逃げろー!」
僕は、リザードマンの攻撃など意に介さず、ルリアの身を案じ、叫ぶ。
魔法「ミスト・ラール!」
その時、急な突風が、僕ら3人を吹き飛ばした。リアの風魔法だ。
「みなさん、落ち着いてください!」
リアの発声に、その場にいる3人は、地面に伏しながら動きを止めた。
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