第16話 「ワケありのリザードマン」
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始めて剣を振るった鈴空。興奮冷めやらない様子だが、倒した敵は、ワケありのリザードマンだった。
「助けて………くれ」
「え?」
リアは、自分で使った、風魔法の反動で髪がそよぎ、左眼が露わになっていた。それと同時に、余殃眼の能力が発動し、敵のリザードマンの心の声を聴いていた。
「俺は………こん、なこと、したく、ない………。それ、よりも、村が、家族、が、友人が………」
「これは………!鈴空さん!ちょっと、まっ………て」
リアが僕に声を掛けようとするのと同時に、風の刃と化した刀は、敵のリザードマンの首をはねていた。
「うわっ!本当に切れた!しかも、攻撃までの動きも、なんだか侍のようだったぞ!」
僕は、初めて刀を使用し、敵の首を切り落とし、勝利した感動に打ち震えていた。
「やったよ!リア!倒せたんだ!俺が、剣を振るって敵を倒した!」
「………」
「リア?」
リアは、余殃眼で見た、敵、いや、同じ種族であるデミヒューマンの亡骸を前に、立ち尽くしていた。僕の興奮した声は、リアの耳には届かず、リアはその亡骸を左眼で見つめ、涙していた。
「リアどうした?怖かったのか?」
僕は、呆然と立ち尽くし、涙するリアの肩に手を置いた。
「い、いえ。そうゆうことではなくて………。お、おめでとうございます!初勝利!お見事でした」
リアは、涙を拭い、笑顔で僕の方に振り向き、そう言った。
「あ、ありがとう!」
「鈴空さん、向こうに村があるようなので向かいましょう」
なんで向こうに村があるってわかるんだ?リアは、この辺に来たことがあるのか?それとも、これも余殃眼の………?そうだ!余殃眼!もしかして、さっきのリザードマンの人と成りを垣間見たのか?
「リア、さっきのリザードマンは、どんなヤツだった?」
リアは俯く。悲しく、苦しそうなその表情は、どこか温かみもある。リアは、小さく薄い桜唇の口角をグっと噛み占め、さっきのリザードマンの心の声を僕達に話してくれた。
「そうだったのか………。あの狂暴さ、いや変貌は、なにかワケがあったんだな」
「はい。彼は、戦闘を望んでいませんでした。むしろ、彼の心は、傷付き、悲しみと絶望、憎悪に満ちていました。このさきの村に行けば、彼の身に何が起きたのか、はっきりすると思います」
「そうだな。わかった。これは、自分の身を守るとはいえ、彼の命を奪うことになってしまった俺の責任、使命だな」
自己防衛………。正当な行動と判断だったと思う。だけど、誰かの命を奪うってことの重さは、異世界でもリアルでも変わらないな。これに対する贖罪として、僕にやれることを、してあげられることを精一杯やることにしよう。僕達は、リザードマンの言っていた村へと向かった。
村へ近付くと、紗月が急に僕らに歩みを止めるよう指示を出した。
「紗月、前から思っていたんだが、お前、気配かなんかを感じ取れるのか?」
「うむ。人間じゃったときのスキルの名残りとでも言おうか。わしは、自分のテリトリー内であれば、生き物の気配を感じ取れる」
え?人間だった???
「お、おい。ちょっと待て。お前、どこからどう見たって刀だぞ」
「今はな。刀になる前のわしは………主様、何か近づいて来るぞ。用事されよ」
なにー!今度はなんだよ。次から次へと忙しいな。これが旅ってもんなのか?イベント発生しまくりじゃねーか。運営張り切りすぎだろ。運営なんていないけど………。
「はぁ、はぁ、はぁ………。剣士様ですか?どうかあたしの村を、竜の村をお救いください」
そう言って僕らの元に、傷だらけで、息も絶え絶えに駆け寄ってきたのは、まだ幼く12歳ほどの少女だった。
「どうした?何があった?おい!………おい!」
少女は、僕らに助けを請うと、すぐに気を失ってしまった。僕達はひとまず、村から離れ、近くの林で、彼女の治療をし、意識が戻るのを待つことにした。少女を放っておくわけにもいかないし、村の状況もわからない以上、近寄るのは危険だ。
数刻の後に少女は目を覚ました。
「おーい。目覚ましたか?わかるか?おーい」
「わっ!!!え?あれ?ここは?」
少女は、ひどく動揺していた。僕達は、怪しいものじゃないよってアピールしないとな。それにしても、俺、子供って苦手なんだよな。ロリっ子は平気、むしろ大好きなんだが、本物の子供は苦手だ。子供って何考えているかわからないし、相手するにしても全然接し方がわからん。ましてや、女の子ともなると尚更だ。耐性がない。ここは、リアに任せるか。僕は、リアにアイコンタクトをした。リアは察しが良いのか、すぐに僕の意図を組んでくれた。
「私は、リア。あなたの名前も教えてもらえる?」
「あたしは………、ルリアって言うの。あっ!そうだ!村が、村が大変なの!」
ルリアは、急に思い出したかのように慌てだした。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんたちは、冒険者の人たちだよね?お願い。あたしの村を助けて………」
ルリアは泣きながら、僕らに訴えてきた。村で、何か不幸な事件が起こっているのであろうことは、少女の姿と、震える声で僕達を頼ってきたことから、容易に想像できた。きっとあの死んだリザードマンが言っていた村というのは、この村なんだろう。
「わかったわ。でも、まずは落ち着いて。お姉ちゃんたちは、ルリアの力になるから」
「うん………」
「いい子ね。強い子。ルリア、村で何があったのか説明できる?少しでいいの。私達が、ルリアの力になれるように協力してもらえないかな?」
ルリアは、俯き、涙を堪えている。しばらくの沈黙の後、僕達の顔を見上げ、静かに頷いてくれた。
読んでいただきありがとうございました。
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