第14話 「ワケあり装備 3」
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ジャージと刀に隠された『ワケあり』とは………。装備した鈴空に起きた変化と新たな相棒との出会い。
目の前の金に目が眩んだ僕は、スーツと引き換えに大金とジャージと刀を手に入れた。早速装備して、鏡で自分の姿を確認する僕。
「え?これ、俺?」
そこに映し出された姿は、紛れもなく僕。紗月鈴空その人で間違えない。間違えないのだが、これは………。
「シューレ。これは、一体どうゆうことだ?」
鏡に映っている僕を、自分自身を信じられなくなった僕は、シューレを問いただす。
「君の装備は、あくまでワケあり装備。その姿が、このジャージのワケありってことさ」
鏡に映った僕は、高校生くらいの歳にまで、幼くなっていた。
「鈴空さん。可愛いです!」
リアは、子供の僕を見て、眼を輝かせている。
「シューレ。これって何歳くらい若返っているんだ?」
「確か、装備した人を10歳若返らせてしまうって」
つまり、さっきまで、25歳だった僕は、今は、15歳ということになるな。中身は25歳だけど、体は15歳か。少し、違和感を感じるが、まぁ、大してハンデにもならないか。
「ところで、一応聞いておくが、刀のほうのワケありってなんだ?」
「ちょっと鞘から刀身を抜いてみて」
シューレに言われるがままに、僕は、刀を鞘から抜く。
「なんだこれ?完全に錆びてるじゃん!これじゃ、敵を切るどころか、その辺に売ってる野菜だって満足に切れやしないぞ」
シューレのやつ、ワケありにカマかけてとんだ粗悪品を掴ませたんじゃないだろうな。ふざけんじゃねーぞ!これで、どうやって戦えってんだ。僕は、まだ魔法も使えないし、スキルだって透明化しかないんだぞ。
「シューレぇぇぇ!」
「ちょっ、ちょっと待って。落ち着いて。まだ全部説明してないよ」
説明たって、こんな使えない刀の説明をいくら聞いたところで、ガラクタはガラクタだろ。
「言い訳けがあるなら聞いてやる」
「言い訳けって………。良いかい?その刀は、魔法やスキルの付与で力を発揮するんだ。力の発動時は、付
与された魔法やスキルに依存して、刀身を変化させる」
「うん。つまり、普段はガラクタな。ガ・ラ・ク・タ!」
「さっきから、ガラクタガラクタやかましい!!!」
!?
僕でも、シューレでも、ましてやリアでもない怒声がシューレの小さな店の店内に響き渡る。
「誰だー!何処にいる!」
僕は、今までの話しを誰かに聞かれていたのかと思い、慌ててその声の犯人を捜す。
「ったく、こんなガキに、コケにされて、数百年ぶりに目覚めることになるとはな」
その声は、僕の手の中にある、刀から聞こえてくる。
「いやいやいや、まさか、刀がしゃべるワケないわ。異世界でもさすがにそれはないわ」
「はぁ。頭の悪いガキじゃのぉ」
「うお!刀だ!刀がしゃべった!」
「刀が口きいたら悪いんかの?刀だってしゃべりたいときもあるのじゃ」
声の主は、刀だった。その音吐朗々な声は、女性の声のようだ。
「ゴホンッ!主らがごちゃごちゃと言うものだから、自己紹介が遅れたわ。我が名は、『契機合縁』。古の名工、ベンケイの残した、繋刀の一振りじゃ」
急に、自己紹介始めちゃったよ。てか、使用がワケありなんじゃなくて、こっちのがワケありだろ!刀が生きてるほうが………。
「あー、えーと、俺は、鈴空。異世界人だ。こっちの二人は、リアとシューレ。ちなみに俺は、シューレから、お前を買った。つまり、お前の持ち主、もとい主人は俺ってことになる」
刀が話すことへ驚きは、ひとまず置いておいて、僕は、まず、この高飛車な刀に、僕がご主人様だということを教えてやることにした。
「お前がわしの主人じゃと?かっかっかっかッ!冗談じゃろ!主みたいな、ちんちくりんが主人とは、片腹痛いわ」
あっ!僕、今15歳か。嘗められてるわけか。
「俺は、今ジャージを装備しているから10歳若返っているが、実年齢は、25歳だ。そして、この刀は、今しがた、シューレから購入した。その事実に、何一つ偽りはない」
シューレもリアも息を飲んで、僕と刀の会話に傾倒している。
「ほう。仮に、主が我が主だったとして、その証はあるのか?」
証?なんだそりゃ?武器を使うのにそんなものが必要なのか?
「どうすれば、それを証明したことになる?」
「我を装備して、刀身を変化させてみせよ」
急!話しが、急展開すぎる!だいたい、僕はまだ、透明化スキルしか使えないし。でも、もし透明化スキルをこいつに付与したら、刀身はどうなるんだろう?
「ま、物は試しだ。やってみるか」
僕は、ジャージの上から、透明化スキルの付与されたローブを身に着けた。そして、鞘から抜いた刀を目の前に構えた。身体から、刀へ力が吸い込まれていくのを感じる。すると、刀の鎺が光り出したかと思うと、錆が切先に向け徐々に剥がれていく。切先まで錆びが剥がれ落ちると、刀身は無くなっていた。
「こ、これって成功なのか?」
僕は、自身が持てず、シューレとリアに回答を求めた。だが、二人も自身がないのか、沈黙を守っている。口火を切ったのは、刀だった。
「見事!主の言っていたことは、誠じゃったか!かっかっかっか!数百年ぶりの我が主じゃ!疑ってすまなかったな!我が主様よ!これからよろしくの」
どうやら、成功だったようだ。契機合縁は、上機嫌で僕の腰に収まった。
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