第12話 「ワケあり装備 1」
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常婆のところを後にした、鈴空とリア。一同、南を目指す方針となるが………。
「さぁて、これからどうすっかなぁ」
僕達は、常婆のところを後にし、目的地もなく、街道を練り歩いていた。
「鈴空さん。とりあえず、南に向かってみませんか?」
南?南って言えば、常婆曰く、デミヒューマンの領地だったな。でもなぁ、さっきのギルドでの一件もあるし、デミヒューマンってなんだか苦手だなぁ。
「な、なぁ、リア。俺の思い過ごしというか、偏見で物を言うつもりはないんだが---。デミヒューマンってさぁ、ヒューマンに対して少し、差別意識でもある?」
リアには、少し失礼な質問になるが、僕は、思い切って聞いてみた。今後、この世界で生きていく以上、この世界を僕のものにする以上、わからないことは、始めのうちに知っておくべきだ。ゲームであれば、それが鉄則。
「そうですね。残念ですが、鈴空さんの言う通りです。デミヒューマンは、生まれつき固有のスキルを獲得しています。これは、日常生活で使用する程度のものから、戦闘で使用できるものまで、多々ありますが、一般に販売されているスキルとは、少し各が違うのです。固有スキルは、その者だけのオリジナルスキル。そのため、その力を世間に出そうとするものは、まずいません。つまり、通常の手段では入手できない。特別なスキルです。これが、生まれつき、スキルを獲得していないヒューマンを蔑む原因になっています」
「やはり、そうか。当然だな。自分だけの特別な力。そんなものあったら、他の人には渡したくないものな」
リアは、それをわかっていての、南行きを提案したのか。なんか意図があるのか?
「だったら、なんであえて、南を選んだんだ?」
リアは俯いている。
「はぁ………。もしかして、ワケありか?」
「はい。ワケありです」
この『ワケあり』は、いろんなところで付き纏ってくるなぁ。まぁ、しょうがないか。常婆も言っていたし、この運命を受け入れるしかないんだろうな。
「そんな暗い顔すんなよ、リア。顔上げろ。これからが、俺たちの新しい旅立ちだろ?前向いて行こうぜ。それに、デミヒューマンの領地に行っても俺には、透明化スキルがある。ある程度の災難は、これで回避できるだろ」
「ありがとうございます!」
リアは、顔を上げ、笑顔で温顔だ。それにしても、こんな格好で街の外出て大丈夫なのか………?
「リア。わかっているとは思うが、俺の来ているスーツという装備は、ほぼ防御力0だぞ。武器も持ってない」
「その装備はスーツって言うのですか。変わった装備とは思っていましたが、防御力0じゃ、街の外に出た瞬間に即死ですね」
リアは、可愛い顔して、笑いながら、さらっと怖いことを言うな。そういえば、この世界で死んだらどうなるんだろう?生き返りのアイテムとか、魔法とかってあるのだろうか?一回死んでゲームオーバーなんてことは、さすがに無いよな………。
「ひとまず、道具屋………」
リアの会話が止まり、顔色が変わる。
「リア?どうかしたの?」
「そういえば、大事なことを忘れてました。鈴空さんは、普通の装備品は使用できないんでした。不覚でした」
「それってもしかして、装備もワケありじゃないとダメなの」
リアは、頷き、微笑を浮かべた。その時、僕の背中に何かが触れた。
「あのー」
慌てて振り向くと、小柄な、ヒューマンが僕のスーツの背中を軽く引っ張っていた。
「あのー。突然すいません。その、その………。その装備って、異世界のモノですか?」
小柄なそのヒューマンは、まだ幼く、15歳くらいだろうか。僕のスーツを物珍しく見ていた。
「え?あっ、これは、その………」
この世界の住人に、僕が異世界人だってバラして良いのかわからず、僕は、口ごもる。
「この人は、大丈夫ですよ」
耳元に、リアの美声と吐息が吹きかかる。振り返ると、リアは、左眼に覆いかぶさっている髪を少しずらしていた。余殃眼------。
なるほど、便利なスキルだ。リアが居れば、居てくれれば、これから先、悪い人に騙されずに済みそうだ。
「そうだよ。これは、!!!」
次の瞬間、小柄なヒューマンは、僕の口を小さい手で覆った。
「あのー。ごめんなさい。ちょっとここじゃ。僕に付いて来て」
僕とリアは、彼の言う通り、黙って彼のあとを付いていくことにした。
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