第11話 「ワケあり商品」
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ついに、鈴空も待望のスキルを習得。ただ、異世界人には、それなりの制限が掛けられている模様。漢にとって最高最上のスキルを手にし、歓喜する鈴空に待ち受ける運命とは………。
「婆さん、どうゆうことなんだ?僕は、魔法やスキルを習得できるのか?」
僕は、一縷の望みを、常婆にかける。
「結論から言うと………」
うんうん。結論から言うと………。
「できない」
「え---!う、嘘だろ………」
こんな理不尽なことがあるのか?あっていいものなのか?異世界人だから?ワケあり人間だから?確かに、普段から素行の良いほうじゃないけど、折角異世界に来れたんだ!頼むから嘘だと言ってくれ………。僕は、非情な結論にうな垂れ、床に膝を付く。
「嘘じゃー」
「嘘かーい!このバァバァ!冗談も大概にしろよ!今は、そうゆうのいらねーから!めっちゃシリアスモードだったわ!マジで焦るわぁ」
「今までの、お返しじゃー!お年寄りは、もっと大切にしなさい」
ぐっ。正論を。
「ったく、それで、結局のところどうなんだ?」
僕は、気持ちを落ち着かせ、気を取り直して、再度、常婆に問う。
「お主は、魔法もスキルも習得可能じゃ。ただ、公的に正規なものは、習得できないのは、変わらん」
「じゃぁ、どうすんだよ?」
「お主は、『ワケあり』。『ワケあり商品』であれば、魔法もスキルも習得できるのじゃ」
「あー、なるー。ってそこまで、『ワケあり』引きずる?しかも『ワケあり商品』って、消費者側としては、あんまり良いイメージないのだが……」
ワケありでってキャッチフレーズが付いて、売り出されている商品は、確かに格安で手に入ることもあるし、たまに当たり商品のときは、得したと感じることもあるけど、ほとんどの場合は、それ相応の代償が付きまとうと相場は決まっている。
「ワケあり商品は、正規のルートでは入手できん。だから、わしが力になってやると言っておるのだ。ただし、とどのつまり、ワケあり商品じゃ。何かしらの代償は覚悟されよ」
こえー!婆さんが言うと、さらにリスクが高まった気になってくるー!とはいえ、背に腹は代えられないな………。
「わかった。よろしく頼む」
ここに来て、初めて常婆に、頭を下げ、頼みを請う。
「うむ。リアや。アレをこちらに持ってきてくれんか?」
リアは、部屋の壁に吊るされていた、ローブを常婆の元に持ってきた。
「これは、闇ルートで入手した、ローブじゃ。付与されているものは、『スキル:透明』じゃ」
え?透明?今、透明って言った?
「常婆様。そ、そ、そ、それってつまり、その透明人間になれるってことですか?」
「ま、そうゆうことじゃ」
きた---------!!!漢の欲望をそのままローブにしたようなマントじゃねーか!そうそう!これだよ。こういうの!僕が求めていたのはコレぇ!しかもいきなりのチートスキルじゃね?間違えなく、『買い』だわ!いきなりの当たり商品だわ!
「婆さん、そのローブ買うぜ!いくらだ?」
「目が血走っておるぞ。まぁ、落ち着け。このローブは餞別として、ワシがお主にくれてやる」
「マジ?婆さん良い人だったんだなぁ。今まで会ってきた老人の中じゃ、ダントツ1位で愛してるぜ!」
僕は、常婆からローブをもらい、早速装備してみる。
どれどれ、透明化しているか確認してみるか………。僕は、リアに近づき、耳元で「ふッ」と吐息をかけて………。
ドカッ!常婆の会心の一撃が僕の脳天に突き刺さった。
「いってー!何しやがる!ていうか、なぜ僕の居場所がわかった?!」
「お主の、やりそうなことくらいだいたい想像できるわい!ワケあり人間とは、ようゆうたもんじゃわい!」
リアは、顔を赤くして、その場に佇立している。
「いいか!お主が装備できる時点で、そのローブもワケありじゃ!代償があるのじゃ!」
そうだった。ワケあり商品!すっかり忘れていた。人間の欲望とは恐ろしいものだ。
「色欲………。恐るべし」
僕は、ぼそっと呟いた。
「それじゃ!このローブの代償は、己の色欲を封じ込める」
な、なんだとー!それじゃ、透明化の意味ないじゃん………。
「まったく、先走り追って。お主が、欲望に忠実なのは、すでに、リアから聞いておる。そもそも、この世界に来る、ワケありの異世界人とは、そうゆう輩なのじゃ。だからこそ、公的に正規の商品は装備できないようになっとる。ただそれくらいでないと、この世界は変えられないだろうがな」
不合理だー!一体、僕が何をしたっていうんだぁ!
「まぁ、それを差し引いても、このローブは、これから色々な場面でお主の助けになるじゃろうて」
「透明化最大の特典スキルが使用できないが、とりあえず、これはこれでありがたくもらっとくよ………」
「では、最後に。お主がこれからも魔法やスキルを習得するために、ワケあり商品は必要不可欠になってくるはずじゃ。ただ、こうゆう物は、まず市場には出回らん。入手が非常に困難なのじゃ」
無理ゲー。
「そこで、ワシが力を貸してやる。これは、ワシのスキルを封じ込めた本じゃ。この本に、現在闇ルートで販売されているワケあり商品が載っている。そして、この本は自動更新され、常に新しい商品が付け足されていく。これをお主に渡す。習得したいものがあれば、そこから選択しなさい。選択すると、ワシの帳簿と連動し、記載されるように組んであるのでな」
なるほど。スマホのネット通販みたいなものか。
「ところで、婆さんのスキルってなんなんだ?」
「これは、『スキル:商売』じゃ。ローブと本は餞別としてお主にくれてやったが、今後は、きちっと料金をいただくぞい。これも商売なんでな。お互いウィンウィンの関係でありたいものじゃな」
ケチ臭い婆さんだな。でも、現状、常婆に頼る以外、魔法やスキルを習得する手段はないわけだし、ここは………。
「あぁ。よろしくな」
僕は、下手に出ることにした。
「あっ、そうじゃ。この本はお主が使用できるように、ワケあり商品になっておるでな。代償がある」
でたでた。そうゆうことは、先に言えよな。にしてもこの先、ずっと何かを代償にスキルや魔法を習得しないといけないわけか………。まさか、代償は『命』とかそうゆう恐ろしいものはないよな………。
「この本の代償、それは、リアと行動を共にすることじゃ」
「え?それってマジかー!そんなんもはや、代償どころか特典じゃねーか!」
「リアが近くにいないと、この本のスキルは使用不可というわけじゃ。よろしく頼むぞい」
「よろこんで!」
今日一番の決め顔で僕は、答えた。
読んでいただきありがとうございました。
これからも連載を続けていこうと思っておりますので、ご意見、ご感想等、寄せていただけると勉強にもなりますし、執筆意欲も出ますので、ぜひよろしくお願いします。