表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

3.

 あれから銀河標準歴で二十八年の月日が流れた。

 今でも時々、あの時の記憶を反芻(はんすう)することがある。

 なぜマサトは大学を辞め、私と別れ、軍隊に入ったのか?

 恐らく()()()()()は、こうだ。『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 私には分かる。

 なぜなら、私と彼は似た者同士(どうし)だから。私も同じ思いだったから。『完全に自分のモノにならないのなら、いっそ目の前から消えてしまった方がいい』と。

 私も卒業間際にマサトに別れを告げようと思っていた。先を越されてしまったが。

 マサトは「近くまでは行けても、ギリギリの所で自分は山の頂上には辿(たど)り着けない」と言った。

 なまじ登ろうとするから、なまじ頂上の一歩手前まで行けてしまうから、頂上へ辿(たど)り着けない苦しみが心を()がす。

 ならば、いっそ、山を降りてしまえ。山に登るのを辞めてしまえ。


 * * *

 

 大学卒業後、私はバルメン星系最大の新聞社に入社し、ジャーナリストとしての第一歩を踏み出した。

 下積み(アシスタント)から始めて、一歩ずつ記者としてのキャリアを積み、三十歳で退社してフリーランスになった。

 いくつかバルメン星系内の社会的対立に関する記事を売った後、ある出版社に自ら企画を持ち込んだ。

 題して、『ヴァレゴナ7内戦記』

 ……長く続いた独裁軍事政権の弱体化と同期して、虐げられていた民衆が惑星各地で武装蜂起し、地表のあらゆる場所で政府軍と反政府勢力が、反政府勢力と別の反政府勢力が銃を撃ち合う惑星、ヴァレゴナ7。

 星一個まるごと戦場とも言えるその場所へ出向いて捨て身の取材を敢行し、書き下ろしノンフィクションを書く。

 幸いにも我が故郷バルメン星系は、長いあいだ戦禍に(さら)されていなかった。

 バルメン星系人は刺激に飢えていた。

 無い物ねだりは人の常だ、と、企画を買ってくれた出版社(クライアント)の編集長が言った。

 この大銀河においては戦争こそが常態。自分たちの平和が危ういバランスの上に成立していることは、皆んな本能的に分かっていた。

 だから、故郷の平和の永続を願いながら、同時の他の星系の血なまぐさい話に耳をそばだてた。

 一つは、単純な好奇心から。

 一つは、いずれはこの星系にも来るであろう戦禍に対し、無意識に心の準備をするために。

 出版社の経営陣も編集部も、私の企画に商業的な勝算は充分あると見込んだ。

 単身戦地に乗り込む私が無事に取材を終えてバルメン4帰って来さえすれば、の話だが。

 半年後、私は新しいノート数冊と愛用のコンパクトカメラを持って、独りバルメン発ヴァレゴナ星系行きの宇宙船(ふね)に乗った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ