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勇者による召喚勇者救出大作戦  作者: ちかえ
第4章 変化の兆し
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道惑い

 王族の訪問にあわせて魔王城に潜入出来たのは幸運だった。


 魔王も甘いところがある。この訪問を許せば、こんな風に隠密も入ってくる事は予想出来るはずだ。


 国王からは王妃と王太子の訪問が終わってもまだヴィシュには戻るなという命令が出ている。当然だ。魔王領に入れたのは幸運なのだ。だったらそれを最大限に有効活用するべきだ。


 きっと、この訪問が終われば、魔王達は油断をするだろう。この滞在中に話せなかった事も会話してくれるに違いない。


 とりあえず、今、大事なのは王族滞在最後の舞踏会のざわめきの中でいろいろな情報を掴むことである。


 社交の場には魔族の貴族が大勢来ている。そこで交わされた会話にはかなりの価値があるものもあるだろう。

 侯爵家の夫人だという魔族が休憩のためか場所を移動した。何かがあるかもしれないと彼もそれに着いて行く。


 だが、何かがおかしい。普通なら人のざわめきが聞こえるはずである。なのに、どんどん静かになっていく。


 今、見ている景色はおかしくないはずである。なのに、どうして不安に陥っているのだろう。


 何だか自分の意思とは違う方向に向かわされている気がする。しかし、道は一本しかない。まっすぐ進んでいるだけだ。


 そんなはずはない、と自分に言い聞かせる。


 そのまま進んで行く。今、追っている女性は何も変わらない様子で歩いている。

 女性が一つの部屋に入った。彼もそれを追う。


 部屋に入った途端、景色が変わった。


 普通の部屋だ。だが、そこには魔王領の隠密であろう魔族達が何人かいる。それを見て彼はつい息を飲んでしまう。


 部屋には魔族以外に人間がいる。だが、それは顔見知りの隠密ばかりだ。


 魔族達は自分に敵意は見せない。優しい態度で『しばらくここでおくつろぎください』と言ってくる。その言い方はとてもわざとらしい。


 つまり、魔族に監視されながらここで大人しくしていろという意味だ。


 まさか、隠密全員にこれをしているのだろうか。

 だったらこれから自分達はどうなるのだろう。


 彼の背筋に冷たいものが伝った。

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