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プロローグ
紙に向かって書く。
他人が読むものなのできちんと文法も間違いないように気をつける。それでいて自分の気持ちもしっかり伝わるようにしなければいけない。そうでなければ伝わらない。私の文章を読む者に迫っているのは『危機』なのだ。
自分が生きているのは奇跡のようなものだ。幸運な偶然と、周りの人の優しさのおかげで死なずに済んだ。
でも自分の後に続く人はどうだろう。自分のように幸運をつかめるだろうか。答えは否だろう。
だったら自分が助けるのだ。私を周りの人が助けてくれたように。
だから私は書く。自分の後に続く者に真実を教える為に。
これ以上不幸な「勇者」が出ないよう強く願う。
これが「勇者」としての自分の役目なのだから。