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1話

 かくして俺は幸運な勘違いで田氏の一族として、田横の客となった。


 俺は姓が(でん)、名が(ちゅう)になりました。



「帰れば従兄(じゅうけい)や兄上もいる。お主や一族のことも知っているかもしれん。詳しい話は狄の屋敷に着いてからにしようか」


 すみません、絶対知らないと思います。





 暫く歩くと、城壁に囲まれた街が見えてきた。


 城壁には門番が二人いたが、近づいて来たのが田横だと判ると笑顔を向け、


「田横殿お帰りなさい」


「また人を拾って来たのですか?今回はまた変わったなりですな。旅芸人ですか?」



 門番や賊の格好をみるに、作務衣みたいな着物で、麻か何かの荒めの素材そのままの生成り色で帯は草木染めの茶や緑だ。

 田横は上流階級なのか、膝丈の着物が淡い青で染められ、帯は紺、その下にズボンの様なものを履いている。

 オシャレさんだ。


 一方俺は、綿シャツに紺色のカーディガン、カーキ色の綿パン。地味な格好だが、様式がまるで違う。変に見えるか。


 しかし俺は捨て犬かなんかか。「捨ててきなさい」とか言われるのかな。


「この男は田中という。遠い縁者だ。武器も持っていないし危険な者ではないよ」


 とりあえず親戚ということにしとくらしい。


 田横がそう言うと門番達は納得して、道を開ける。

 まだ若いのに信用されてるな。




 狄の街に入るとあちこちから声が掛かる。


「田横様、お帰りなさい」


「田横様、お疲れ様です」


「田横様、この間はお世話になりました」


「田横様」


 どうやら彼は地元の名士らしい。

 その一人一人に、笑顔で応える。


 やがて他の民家とは違う、大きな屋敷に着いた。


 確かに客が一人や二人増えても余裕だろう。

 ここに暫く厄介になろう。

 できたらずっと厄介になろう。




 そして働かずに暮らそう。


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