24話
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「二人同時にお相手しましょう」
そう言われて、相手は腹が立たない訳がない。
名家の警護を任されているのだ、腕に自信があるのだろう。
「誰か木剣を持ってこい!」
侮られたと思った警護の二人は、こめかみに青筋を浮かべ奥の広場へと足早に移動した。
「……大丈夫でしょうね?」
俺は田横に近寄り小声で確認する。
「至高の盾とまで言ったのだ。一人ずつ勝っても印象は薄かろう。まぁ見ておけ」
田横は不安そうに叔父を見つめる田広の肩を叩き、気負いもなく広場へと進んでいった。
そうだよな、あの男は出来ないことは言わない。
大きな後ろ姿が頼もしい。
「横殿を信じましょう」
田広に声を掛け、家宰と共に俺達も広場へ向かう。
相手の二人はすでに木剣を構え、すぐにでも飛び掛かって来そうだ。
田横はゆっくりと二人の前に立ち、受け取った木剣を二、三振り、半身に構えた。
「さぁやろうか。なに、すぐ終わる」
またも侮られ、いきり立った二人が剣を振り上げた瞬間。
田横が一人と間合いを一気に詰め、振り上がった剣を持つ手を小さく打つ。
さらに肉薄し反転しながら鳩尾に柄を打ち込み、目測を誤り虚空を斬ったもう一人の剣を狙って横に薙ぐ。
剣は甲高い音を立てて弾かれ、相手の喉元に田横の剣が添えられた。鳩尾を打たれた一人は蹲っている。
まさに一瞬の出来事。
つえーな。やっぱあの男が異常に強いんだよ、うん。
田広も拳を握り締め、目をキラキラさせて叔父を見ている。
君の叔父さん強いね。あんだけ強いんだから、素人にもっと手加減するように言ってよ。
「二対一なのでつまらん挑発をした、許してくれ。そちらのあなたは俺と彼が近すぎて、剣を振り下ろすのを少し躊躇したな。仲間思いな男だ」
田横は微笑み、蹲っていた相手に手を貸しながら二人に話しかける。
二人は意外そうな顔をしたが、やがて笑顔で先程の試合の感想などを言い合っている。
全力を尽くしたらもう仲間かな?甲子園かな、ここは。
試合前の言葉といい、相手のフォローといい、格好いいじゃねーか、くそう。
おっと、家宰にアピールしとかねば。
「いかがですか、我が主なら如何なる者が襲ってこようと跳ね返す、蒙毅様の盾となりましょう」
「なんと、あの二人は主の護衛に付く事もある手練れです。それをこうも容易く。なるほど真に至高の盾ですな」
終始落ち着いた様子の家宰も、これには流石に驚いたらしい。
「田氏のご要望承りました。しかと我が主に伝え、後日お呼び立てすることになりましょう」
こうして俺達は蒙家を後にした。
ん、何か今視線を感じたが……気のせいか?
~~~~~
「これで蒙家の客となれますね!」
帰りの道中、田広が犬のようにはしゃいでいる。
「まだ家宰に認められただけです。蒙毅殿に認めらないと意味がないですよ」
俺は田広を窘めるが、興奮は覚めないようだ。まぁ田横のあの試合を観たら、そうなるわな。
「大丈夫ですよ!叔父上の剣の腕と中殿の弁舌があれば、必ず蒙毅様にも認められます!」
「そうだな。しかし中、お主の弁には驚いた。口が回るとは知っていたが、よくもまぁあれほどスラスラと。お主が狄の纏め役だったかと錯覚したぞ」
田横は苦笑いで答えながら、俺に話し掛けてくる。
「まぁここまでに聞いていた事を繋ぎ合わせて話しただけですよ。それに話しぶりを家宰殿の性格に合わせたというか」
「性格?」
田広が首を傾げる。やっぱ犬みたいだ。
「はい、あの家宰殿は俺達をさして待たせず、直ぐに来てくれました。ということは田氏に興味があったか、時間の無駄を嫌う性格か、或いはそのどちらもか、と考えました」
「ほう、それだけで」
田横が感心している。
「そしてすぐに本題へ入ったので無駄を嫌う性格だと判断し、貴族的な言葉遊びは避けて直接的に現状を述べました。
また真面目で厳格な蒙毅様が家宰に据えるような方ですから、その誠実さを思い、正義を訴えました。実際役人の話で眉を顰めてましたので当たりでしたね」
「う、うむ」
「途中、少し話を先回りされそうになったので、飽きられてはいけないと剣や盾の例えを入れ、尚且つ横殿の護衛の話に繋げられるように持っていきました」
「……叔父上、私はちょっと中殿が怖いです」
「そうだな、あやつに弱味は見せれんな。どこから攻めてくるかわからん……」
おい、何で引いてんの!
詐欺じゃねーよ!真っ当な話術だよ!
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