6話
初投稿から三日、思ってもいないようなPV、ブックマークで、しかも感想まで沢山頂いて本当にありがとうございます。管理画面を二度見どころか五度見位しました。
喜びと戸惑いで胸がざわついております。
それと同時に、この辺りのジャンルが好きな方が多くいるとわかり、嬉しく思っております。
更新頻度は、今後落ちていくと思いますが、完結させるよう頑張りますのでよろしくお願い致します。
田栄は目を閉じ暫くの思案の後、口を開いた。
「太子の扶蘇は聡明で、慈悲深く、人格者として人気があります。扶蘇の治世になれば民も安心して暮らせるかもしれません」
「兄上!」
「しかし、このほど皇帝の焚書坑儒に対して諫言し、その怒りを買い北方の匈奴との国境に飛ばされたそうです。
さらに、左丞相の李斯との間には確執があったようです」
左丞相李斯といえば始皇帝に次ぐ権力者。
そして宦官の趙高と組んで、扶蘇を自殺に追いやり、二世皇帝胡亥を擁立した男だ。
田栄は一度言葉を切り、静かな声で言った。
「廃嫡の可能性があります」
「それではやはり」
「横よ、焦ってはいけません。中殿の言ったことが真実なのか、真実だとして、皇帝が崩御すれば暫し混乱はするでしょうが、それだけで秦が倒れるというものでもありません。
扶蘇の廃嫡の後、新太子は誰になるのか、李斯や始皇帝の下で甘い汁を吸っていた権力者達、秦の兵力。詳しく調べなければ事は起こせません」
田横も少し落ち着いた様で腰を下ろした。
「ではいかがしますか?このまま傍観していれば機を逃しますぞ」
「まずは今の話を従兄に伝えましょう。
明朝、従兄の元へ行きましょう。中よ、今日の話を明日従兄にもしてください」
「わかりました」
「私は少しやることができました。横、後は頼みます。中殿、申し訳ないが失礼させてもらいます」
そう言って田栄は立ち上がり部屋を出ていった。
「中よ、お前のおかげで秦を倒す機会が訪れるかもしれん。今日は眠れそうにない」
田横はまだ興奮が収まらない様で、大きな身体を震わせた。
「いえ、私も同じ田氏ならばお役に立ちたいと」
「うむ、田一族が一丸となれば大きな力となる。問題は、一つに纏まるかどうかだが……」
「田氏も一枚岩ではないと?」
「うむ、この辺りの一族は従兄を中心に纏まっているが…なにしろ田の氏は多い。俺達もそうだが、元王族も多くいる」
その後、田横は斉の歴史や秦の支配の現状など、様々な情報を語ってくれた。
「すっかり遅くなってしまったな。ゆっくり休んでくれ」
そう促され、自室へと戻り寝床に体を投げ出す。
はぁ、何とか上手くいった。
信憑性を持たせるため徐福を登場させたのが効果があったようだ。徐福さん、実在してくれてありがとう。
これで有力な情報を持ってきた俺を無下には扱わないだろう。
なんというか詐欺師になった気分だ。いや、この時代でいうなら弁舌家か。
しかし、田栄の話に出た焚書坑儒から暫くして、始皇帝は没したはずだ。間違った情報ではない、はず。
それから趙高と李斯が胡亥を擁立して、陳勝、呉広の乱があって……あ、項羽とはどうなるんだ、いや、まだ項羽じゃないな叔父の項梁か、敵対するのか?なんか揉めた様な気が、確か…。
いかん、色々、ありすぎて、
もう眠気が、限界、だ…。
用語説明
焚書坑儒 (ふんしょこうじゅ)
古を重んじ、秦の新しい制度を批難したとして左丞相の李斯が進言して、民間にあった医、占、農業などの実用書以外の書物を焼き、儒者(儒教の学者)約460人を坑に埋めて殺した。
儒教に対する言論弾圧。
匈奴 (きょうど)
秦の国の北部に存在した遊牧民族。前時代からたびたび国土を犯していたが、始皇帝が万里の長城を修築し、将軍蒙恬がその侵入を防いだ。
左丞相 (さじょうしょう)
君主に次ぐ、人臣最高位の官職。2名おかれた場合、右丞相、左丞相と呼ばれた。




