5話
初めて評価をつけていただきました。 ありがとうございます。嬉しくて思わず声が出てしまいました。
誤字脱字、御指摘等ごさいましたらよろしくお願い致します。感想など頂けたら非常に喜びます。
大雨の被害に遭われた方へお見舞い申し上げます。一日も早い復旧復興をお祈りしております。
持ってきてもらった着物に着替え、今後の事を考えていると、
「お食事の準備ができました。ご案内致します」
家僕に呼ばれ部屋を出る。
「おお、似合うじゃないか」
庭に面した大きめの部屋に入ると二人が待っていた。
「私と背格好が同じ位でよかった。横の物だと大きすぎますからね」
田栄が微笑む。
「さぁ長旅の間は粗食であったでしょう。食べてください」
「肉も酒もあるぞ」
二人の歓待を受けながら、食事をいただく。
肉入りのスープは、鹿肉か山羊肉か、野趣あふれる塩味だ。ぶっちゃけ臭い。
酒も酒精は弱く、温い。
………まぁ期待してなかったから。
食えるだけマシだ。
あとで家僕に聞いたところ、肉が出るのは稀で、田横が狩りで仕留めた時や客が来た時しか出ないようだ。
その時は家僕達も余った部位を頂けるので客人が来たら皆喜ぶそうだ。
食事も終わり二人は談笑している。
よし、
「お話があります」
「ほう、なんだね?」
「皇帝はもうすぐ死にます」
「なに?」
「ほう?」
二人は酔いも忘れて鋭い顔付きになった。
「中、お主は占者か?兵や農夫の様な体つきでもないし、変わった格好をしていた」
田横が片眉を上げながら尋ねる。
「私達を喜ばせようと阿るつもりなら止めておいた方がいい」
田栄もバッサリと切る。
手厳しい反応だ。二人とも腰が据わっているというか、精神的に強そうだからな。
この時代占いは広く信じられているが、偽占者も多いのだろう。
「いえ、私は占者ではありません」
「ならなぜ皇帝の崩御などと?」
「故郷で徐福という者に会いました。その者は、皇帝の勅命で不老不死の薬を探して、島まで来たそうです」
大嘘だ。徐福が実在するかも定かでない。
「うむ、その話は聞いたことがある。確か東の海へ旅立ったと偽り、隠れていたとか」
おお!いたのね。流石田家、情報通。
「そう、そしてもう一度命を受け、今度こそ旅立って島に来たのですが、もちろん不老不死の薬などあるはずもありません」
二人は頷く。
「徐福殿は言っていました。帰れば皇帝の怒りを買い、死罪は免れないだろうと」
「うむ、あの皇帝のこと、勘気に触れれば、間違いなく死罪になろう」
「徐福殿はこうも言っていました。暫くすれば皇帝は崩御する。太子の扶蘇様の御代になれば帰れるだろうと 」
「徐福は、何故皇帝がもうすぐ死ぬと?」
「皇帝は不老不死の妙薬として水銀を常飲していたそうです。水銀は薬などではなく猛毒です」
現代人からしてみれば水銀を飲むなんて正気の沙汰とは思えない。
綺麗な物質なので、珍しいからと薬と思い込んだのだろうか。
「徐福は水銀が毒だと知っていたのに、皇帝に進言しなかったのか?」
「はっきりとは聞いておりませんが、恐らく進言しても聞き入れられるかどうか。仮に聞き入れられたとして、代わりの妙薬を持ってこいと催促されるだけでしょう」
「ふむ…。」
「兄上、これは秦を打倒するまたとない好機、今こそ一族の力を合わせ倒秦に声を挙げる時です!」
田横が立ち上がり、大きな声が部屋に響いた。
おい、聞かれたら不味いんでしょう!落ち着いてー。
用語説明
勅命 (ちょくめい)
皇帝の命令。