登場人物紹介(8章迄)
田中 (たなか・でんちゅう)
主人公。31歳、独身、中肉中背。
秦王朝末期の中国へタイムスリップしてしまった。
山賊に襲われているところを田横に助けられ、名前を田中と勘違いされ、田横の客となる。
口が達者で、現世では「口の数だけ口がある男」と呼ばれていた(田中の漢字の中に口が沢山あるため)。
本人は斜に構えているつもりだが、義理堅く、お人好し。
姉が中国人と結婚していた為、中国語はある程度話せる。
◇◇◇
斉
田横 (でんおう)
27歳 。秦に滅ぼされた斉の国の王の子孫。
角張った輪郭に、固そうな髭、意思の強そうな太い眉、真っ直ぐ高い鼻、人をも飲み込みそうな大きな口。その姿は大岩を思わせる。
兄の田栄、従兄の田儋と共に狄の田三兄弟と呼ばれ、仁と義に篤く、民の敬愛を集めている。
剣術の腕は随一で、人を惹き付ける魅力がある男。
賊に襲われていた田中を助け、一族と勘違いし客とする。
田中が何か隠している事に気付いているが、面白そうな男なので様子を見ている。
田栄 (でんえい)
30台中盤。狄の田氏の分家の長。田横の兄。
線は細いが姿勢よく伸ばされた体に、切れ長の涼しげな目、艶やかで綺麗に纏めた髪、筆のような美髯。イケメン。
穏やかで冷静沈着に見えるが、田三兄弟の中で一番苛烈な性格をしている。
田中の事をやや疑っているが、田横がついているので何かあれば即刻斬り捨てるだろうと思っている。
田儋 (でんたん)
40台前半。狄の田氏の本家の長。田横、田栄の従兄。
おおらかで親分肌。
一人は背が高く、がっしりとした体格で、角張った輪郭と大きな丸い目。
秦の支配に苦しむ民をみて、斉の復活を密かに目論んでいる。
田中の情報を千載一遇の機会とみて密かに同志を集める。
息子の田巿には甘い。
田広 (でんこう)
田栄の息子で美少年。
気弱な性格を直すため、田中、田横と共に咸陽へ旅立つ。
叔父田横の強さに憧れ、田中の弁舌に感心する素直な子。
田巿 (でんふつ)
田儋の息子。甘やかされて育ったため、プライドが高く傲慢。
叔父の田栄、田横を煩わしく思っている。
田中に対しても集りにきた田舎者だと見下している。
田突 (でんとつ)
母方が騎馬民族の出身で馬の扱いは田家一。
無口な若者。
田假 (でんか)
斉最後の王の弟。老年。
田安 (でんあん)
斉最後の王の孫。自尊心が高く傲慢な若者。
臨淄の者達からは腫物を触るような扱いをされているが、それを畏れ敬われていると思っている。
田都 (でんと)
田假の一族出身で従者。野心家。
華無傷 (かぶしょう)
古くから狄の田氏に仕えている華一族の若者。
田横から剣術を学んでいる。楽天家。
◇◇◇
漢
劉邦 (りゅうほう)
後の前漢初代皇帝。高祖。
中肉中背。面長な顔に、高く伸びた鼻、ギョロリと大きな目、そして豊かな髭と眉が、龍を思わせる。
仕事もろくにせず任侠を気取る遊び人。
しかし何故か人に愛され、彼の行く所には人が集まる。
今はまだ沛の小役人として燻っている。
蕭何 (しょうか)
有能で真面目な沛の役人。公平で誠実な仕事ぶりで民からの信頼も厚い。
フラフラ遊び歩いている劉邦を県に推薦して役人の亭長にした。
不真面目な劉邦に振り回される苦労人。
張良 (ちょうりょう)
秦に滅ぼされた韓の国の出身。祖父、父は宰相を勤めていた。
秦に強い怨みを持っており、始皇帝の暗殺を計画実行したが失敗に終わり、現在下邳に隠れている。始皇帝暗殺は諦めていない。
病弱で、美女と見紛う様な美しい容姿をしている。
夏候嬰 (かこうえい)
沛の厩舎係(馬の世話や御者)。劉邦を兄の様に慕い、常に付き従っている。
曹参 (そうしん)
沛の刑務所の官吏(獄吏)。文武ともにそつなくこなす筋骨隆々の男。蕭何とは互いを認め合う仲。
◇◇◇
楚
項羽 (こうう)
旧楚の大将軍項燕将軍の孫。
大柄で長い手足、艶のある黒髪と同じ色のつり上がった太い眉、目は虎の様に鋭い。
両親は早くになくなり叔父の項梁に育てられる。
何事も力任せで、身内に甘く、他人に冷酷。
叔父の決起を待ち望んでいる。
項梁 (こうりょう)
旧楚の大将軍項燕の末子で、項羽の叔父。現在項羽と共に呉に潜伏中。
葬式の仕切りや賦役の手配など邑の顔役をしながら、反乱に向け使える人材を見極めている。
甥の項羽の将来を期待しながらも、その強引な性格を案じている。
項伯 (こうはく)
項梁の異母兄。母の身分が低いため家督を項梁に譲った。
人のよさそうな外見だが、楚の男らしく武に優れている。
◇◇◇
秦
蒙毅 (もうき)
細身で背が高く、白髪混じりの渋いナイスミドル。
真面目で厳格な故、始皇帝が寵愛する趙高を告発し、その恨みを買う。
娘の蒙琳を溺愛している。
蒙琳 (もうりん)
亜麻色の髪を持つ美女。蒙毅の娘。
髪色のせいで自分に自信がもてず、いつも黒く染めていたが、田中に誉められ染めるのを止めた。
武芸が苦手な父を見て育ったため、武ばった男は苦手。物腰の柔らかい父のような男性が好み。
蒙恬 (もうてん)
中背のがっしりとした体格の壮年。蒙毅の兄。上郡を守る始皇帝の信の篤い秦の名将。
命令に忠実ではあるが応変の才に欠けることを本人も自覚している。
趙高 (ちょうこう)
始皇帝の寵愛を受ける宦官。
教育係だった胡亥を太子にしようと暗躍し、それ以上の欲望を抱いている。
蒙毅に死罪を求められ免職されるが、始皇帝のとりなしで復職した。
そのため蒙毅を恨んでいる。
胡亥 (こがい)
秦の皇子。
趙高に唆され、次期皇帝になろうと画策する。
まだ若く、趙高に誘導されているのに気付いていない。
扶蘇 (ふそ)
秦の太子。仁徳の人。
始皇帝に諫言したため左遷され、北方の守りに就く。
父、始皇帝を敬愛している。
章邯 (しょうかん)
秦の九卿の小府。
軍才、政治的感覚に優れているが、それを隠し万事にやる気がないように見える。
司馬欣 (しばきん)
秦の官。章邯とは友人。
秦の行く末を憂い、章邯の才に期待している。
興奮すると顔を近づけて話す癖がある。
◇◇◇
その他
彭越 (ほうえつ)
安邑を拠点に活動する大義賊の頭領。
手下達と漁師として生活しているのを装い、塩の密売や役人や秦に関係深い商人などを襲っている。
一時期、秦打倒を唱える田横を受け入れていたが、清廉な性根の田横には賊は向かないと判断し狄への帰郷を促した。。
張耳 (ちょうじ)
旧魏の臣で外黄という県で、県令を務めたこともある政治家。
魏が秦によって滅ぼされると危険人物として手配されるが、逃亡し陳の名もない邑の門番として潜伏。
秦への復讐の機会を伺っている。
陳余とは刎頸の交わり(用語説明参照)を交わしている。
陳余 (ちんよ)
旧魏の臣。儒者。張耳に仕えていたが、互いに深く尊敬し合い刎頸の交わり(用語説明参照)を交わした。
秦に追われ、張耳と共に名もなき邑で門番として潜伏。
陳勝 (ちんしょう)
雇われ農夫や兵士などで日銭を稼いでいた。賦役の引率を任されたが、大雨のため、期日に間に合わなくなり、同じく引率役の呉広を誘い賦役の人夫と共に反乱を起こす。
大沢郷で起こった反乱は成功し瞬く間に巨大な反乱軍へとなった。
呉広 (ごこう)
陳勝と同じく賦役の引率役をしていたが、陳勝に誘われ反乱を起こす。陳勝を首領とし、自らは副将となった。控えめで仲間思いの男。