④後日談編
これはブラック企業を退職させられてから
自宅で静養していたときの話
パソコンにてコーディングをしている最中、
普段あまり鳴らない携帯が鳴り響いた。
「誰だろう?あ、前の会社の同僚のBさんからだ」
作業中のコーディングしたコードから目を離し
殺人的な加速で銀色のスマフォに手を伸ばす。
「あ、お久しぶりです。Aです。
元気でしたか?」
すると、電話先のBは突如
会社の現状、いや、惨状を重たい口調で語りだす。
「君が辞めさせられてから会社が相当危ないよ」
「何がありました?」
「定型業務については人が足りなくて全然捗らない。
そればかりか、解雇する予定だった俺に対して社長が
『次の会社ァ決まるまでもう少しいてもいいよ』
と言って来たんだ。」
「ひどい、人を玩具か何かだと思ってる!!」
「さらに続きがあって、奴はとんでもない事を言った」
「そういえば辞めたあいつどうなっている?」
「それってつまり…」
怒涛の展開に頭の思考が追いつかない
「君を復職させようと思ってるらしい」
「冗談じゃないっすよ」
青年はボロ雑巾のようにこき使われて
ゴミを投げ捨てるように辞めさせられたことを思い出す。
「ははっ、だよな。俺は家庭もあるからまだやっているけど
次が見つかったら即行で逃げるよ」
電話先のBさんは少し明るい声に落ち着きを表しながら
言った。
「そういえば、前に言ってた副業のデイサービスの件
やばいらしい。因果応報とはこのことだ。」
「介護事業をやるに当たって助言をもらっている知り合いのケアマネージャー
が、そいつの所属している会社から特別背任で査問委員会にかけられて辞めさせられたんだぜ」
「ひえぇ、貧乏神だなあの会社の奴等」
「そればかりじゃない、社内でまともな上司の人いただろ?
あの人病気が再発して病院通いで仕事がまともにできなくなって
社内の調整役がいなくなってしまった」
当時、お世話になった上司が入院していたときの話を思い出した
商品が競合する他社にとられ、入札も敗北した事があった
それを踏まえると社内の空気は死刑囚のいる独房のような感じなのだろう
「そして、その介護事業の件で、デイサービスをやっている
お客様から目をつけられて、次の商品の契約を断られてしまった」
「さらにいえば、A君と懇意にしていた顧客からは
A君の解雇の件で怒られて、取引を打ち消された。」
「えぇぇ…恐ろしい」
「な?やばいだろう?」
「やばいですね…」
「分かりました、就職先決まったら連絡するんで今度飲み会でもいきましょう」
「おう、またね」
「因果応報ってあるんだな」
fin