①入社編
これはある男が入社面接を受け、内定を獲得後に
入社手続きをしたときの話
田舎独特のひなびた雰囲気の
ホームセンターの一室
「内定おめでとう!今日から君はうちの正社員だ」
白髪に黒髪が多少混じった恰幅のいい年配の男性が
企業担当者独特の笑顔をしながらそう言った。
「ありがとうございます。今日から正社員ですね?」
内定を獲得したと思われる少しおとなしくて
人の良さそうな青年がはにかみながら聞き返す。
「実は...国からの補助金が欲しくて…」
ばつが悪そうに恰幅のいい年配の男性は告げる
「えっと、どういう事です?」
青年はそっとペンに触れながら聞き返す。
「君を正社員にすることは約束しよう、しかし、
国からの補助金が入ると我々のような田舎の企業は大いに
助かるんだよね...人助けだと思ってジョブカード制度使ってみてくれないか?」
「はぁ、分かりました」
青年は困惑気味に反応する。
「よし、じゃあ正社員前提のジョブカードって事で書類作るね!
今日からよろしくな!君はタバコ吸うのかな?」
恰幅のいい男性の隣にいる地黒で髪をオールバックにした
どこかの芸人に似た男が営業が客に見せるような
出来るだけ自然だがどこか作り笑顔のような感じで言った。
「……はい、条件が遵守されるのであればよろしくお願いします。」
青年はペンから手を離し、入社書類に記入し始めた。
-これが地獄の始まりになるとはその時はまだ知る由も無かった。