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第四章 二つの決着……かと思いきや

バトル書くのしんどいです。これを書き続けられるラノベ作家ってすごい(小並感)


「――――珍しいな。貴様がこうして敵の前に姿を晒すなど」



 旧知の仲に話しかけるような、柔和な口調。事実二人の付き合いは長いのだ。ずっと一緒にいたわけではないが、役割上顔を突き合わせることが多かった。


 ――――【言霊王】と【否定姫】。始まりの【十二使徒】と、始まりの【姫】。長男と長女のような関係性が、二人にはあった。

 言葉から推察するよりも、ずっと殺伐とした関係だけれど。


 綴町は【一期一会】の出力を弱め、現在男に対し存在を明らかにしていた。彼女の言霊はオンオフは付けられなくとも、強弱は付けられるのである。


「言ってしまえば足止めね。……恐らく、間もなく【修羅王】との決着を見るでしょう。その時また柳生武蔵のように、新たな【王】として勧誘されては本末転倒だもの」

「随分とあの少年を買っているのだな。まさか勝つ前提で話しているとは」

「あら、女の勘というのはこの世で最も優れたものだと思っているのだけど」


 そもそも【十二使徒】の最終目的として、種の存続がある。全人類を滅ぼしたのち、選ばれた六人の【王】と【姫】の間で子を成し、優れた遺伝子を残すために。故にでき得る限り空席を残したくないので、相応しい人材を見つけたならその者を【十二使徒】に据えるのである。


 二人のいる場所は、街を離れた場所にある山の麓。これも護国寺に対する綴町の配慮であった。――――万が一にもここで巻き起こる戦いの余波が、彼の邪魔にならないよう。

 はは、と【言霊王】は笑う。妹の悩み相談に乗ってあげているような気軽さだった。


「それにしても……うむ。貴様の裏切りはあくまでも想定内だが、ここまで早いとは。いつだったか、小娘一人御し切れていないと激昂していたがあれも演技かね?」

「いいえ。あの時は謀反を起こそうだなんて露も考えていなかったわ。……人生、いつどこで転機が訪れるか分からないものね」

「あの少年に誑かされたか。見た目によらず魔性の男だったか、あれは」


 断じてそういうわけではないが、訂正するのも面倒なので放置しておくことにした。正直それどころではない。神経を休ませる暇などないのだ。綴町は言霊の特性上奇襲を得意としている。得意どころではなく、もはや必殺のワンパターンなのだが。

 しかしそれも【言霊王】に通じるかどうかは怪しい。そもそも当の綴町は通じないと想定して臨んでいた。無闇に攻撃したところで大抵のそれは弾かれてしまう。加えて綴町の目的は時間稼ぎ、自分から仕掛けていく理由はない。

 つまり、戦闘の合図は【言霊王】次第である。青年の気がいつ変わるか――――それで火蓋は切って落とされる。


「ともあれ、まあ――――そろそろ始めようか。あと一時間足らずで今日が終わる」


 青年は右腕を天高く掲げた。あたかも月を掴もうとしているような所作で、柔和な態度を覆すことなく。


「気は乗らんが……仕方あるまい。長男として、貴様(いもうと)に少し灸を据えてやろう」


 右腕を縦に振るう。たったそれだけで放たれるは何人も抗えぬ一撃。【不可抗力】――――その力が、綴町に対し牙を剥く。

 此れより幕を開けるは地獄の一刻。耐え忍ぶには、あまりに険しい惨劇であった。




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