1人目のカレシ 3日目
一人目のカレシ 三日目
昨日はちょっとお高いカフェで話をして楽しんだ。リュウも楽しんでくれたのかな? そうだといいな。って、そうじゃないでしょ! 彼が私を楽しませてくれる、そういうサービスなんだから。
それにしても、あんなセリフを平気で言えるなんてこれまでどれだけの女性と契約をして来たのだろう。私にとっては1人目だというのに。あんな、あんな恥ずかしいことを言われたら好きになってもおかしくない。
でも、何かがわたしの中で引っかかっている。まるで私のことを最初から知っていたかのような言動をしているような気がする。年下に知り合いなんていない。今まで付き合ったことのある人は、大抵年上か、同じだったけど、リュウはどこかで会っている。そんな予感さえ感じていた。
私が喜ぶツボを知っているような、何をどういえば舞い上がるとか、惜しげも無くキザなセリフを言える辺りがどうにも引っかかる。誰なんだろう? 詮索する必要はもちろんする必要もないし、実際に付き合えるわけでもないのに、何だか騙されているような気がしてならない。
でも考えていても仕方ないよね。すでに支払ったお金は戻ってこないわけだし、楽しむしかないよね。どうせ”キス”も出来ない関係なのだから。
「お、今日の服も可愛いね。よく、似合ってるよ」
「あ、ありがと」
「じゃあ、映画見に行ってその後は水族館にでも行こうか?」
「うん」
「アケノは恋愛映画じゃなくて、アクションが好きだろ。だから、これを見ようか」
あれ? どうして知っているの? 事前に情報を得ていた? ううん、映画とか趣味に関することは一切開示していないはず。なのにどうして断言できるの?
「うん、それでいいわ」
映画を見ている最中、映画の内容よりも彼の横顔をずっと眺めながら、何となく見たことのある輪郭に、疑心が湧いて来ていた。リュウは確かにイケメン。そして年下。タブレット画面で私の指をスライドさせた時には、気付く筈も無く見た目と性格と年下という所でしか見ていなかった。
それがどうして疑問を浮かべるようになったんだろう。エセカレだろうと何だろうと、彼氏として契約中はいちゃいちゃ出来るはずだったのに、何だかそうもならずにいる。
よく思いだせわたし。リュウのことをわたしは知っているはずだ。どこかで会ってるはず。
「……アケノ、アケノ。映画終わったよ。どうしたの? 具合悪い?」
「えっ……? あ、ううん。平気。じゃ、じゃあ次は水族館よね」
「ああ、じゃあこっちから出よう」
何か遠い昔に似たような感じを受けたことがある様な、ないような――