表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で綴る物語  作者: 漬物王子
5/5

5話

 空は雲一つない快晴、奴隷商館より脱出してから半日ほど街道を進んで現在は太陽が頭上で輝いている


「フェリ、そういえばさ、この街道って真っすぐ行くとどこに着くんだ?」

「私はあんまり村から出たことがないからわからないよ?」

「えっ?」

「え?」

「まぁあれだ、道はきっとどこかに繋がっているから!」

『なんとかなるさー』


ぐぅ~


 二人分のお腹の音が街道に響く


「腹減ったな」

「……うん」

『あ、タクヤ、マナちょーだい』


 俺の返事も聞かず、リアは背中に飛びつき首筋にちゅぅ~っと吸い付く

「お前は吸血鬼か」

『わたしは人間みたいに食事はいらないからねー! エコだよ!』

「エコじゃねーよ! 俺と言う資源をガリガリ消費してるよ!」


ぐぅ~

「馬鹿な事やってたら余計に腹が減った……。なんかこの世界に来た時を思い出すな、よし! なんか食料を探すか」

「おー」

『まんぷくー』

(こ、こいつ)


 街道から少しそれた森へ入って食料を探す事にしたタクヤ一行、俺はそれらしい植物、キノコ、果実に片っ端から鑑定を掛けて食べられるか調べていく、フェリはもともと村の周りが森だった為こういった食料探しは得意らしく次々と木の実や果物を集めていった


「フェリー、どうだ、集まったか?」

「うん、そこそこ集まったよ」


 どさーっと集めて来た獲物をまとめて床に並べる、色とりどりの果物やキノコが並べられる。これだけ集められるならサバイバルも楽勝じゃないか


「おー、結構集まったな! こっちはメインデッシュを捕まえてきたぜ」


 じゃーん!と見た目がでかい鴨っぽい鳥をフェリの前へ獲物を持っていく


「にくっ!」

「食えそうな鳥が居たから撃ち落としたんだ」


それから俺達は魔法で火を起こして獲ってきた鳥やキノコを調理しながら果物をつまみつつ現状確認をする。


「とりあえずお互いステータスの確認でもしておくか」

「ん、了解」

「んじゃ俺から【ステータス】」


コガシ タクヤ 人族 27歳 男 レベル9 契約精霊:リア

HP:1757/1757 MP:7347/9965

筋力:136+25(161)

体力:125+17(142)

敏捷:113+26(139)

魔力:301+185(486)

魔耐:112+323(435)

【スキル】

鑑定レベル3(5) 体術レベル3(5) 痛覚軽減レベル2(4) 

【魔法】

強化魔法レベル1(3) 火魔法レベル2(4) 水魔法レベル1(3) 風魔法レベル1(3) 土魔法レベル1(3) 氷魔法レベル1(3) 雷魔法レベル1(3)

【ユニークスキル】

連理之契

【称号】

転移者 契約者 光の精霊の加護 ????


「んー、なぁフェリ、このステータスって高いよな?」

「ん、高すぎ。筋力にしても同じレベルで獣人の倍近くある、それに全属性の魔法が使えるなんて聞いたことない……」


 フェリの話によると、この世界の成人男性ステータスの三倍ぐらいあるらしく補正を入れれば四倍近い数値になる、魔力とMPはもうお察しだ。それとこのステータス補正はおそらく連理之契で繋がったリアとフェリのステータスがそのまま来てると思う、チートだなこれ。いやでもボッチの人には全く恩恵がないけどな。そしてスキルのレベルは10が限界らしいがそこまで上げてる人はもはや化け物で数える程しか居ないらしい。あとレベルが上がった時などに聞こえる声は祝音と言われてるらしく、レベルが上がった本人しか聞こえず、何の声なのかは謎らしく神の声だの世界の声だのいろいろ説があるらしい。


 魔法に関しては、もともと氷と雷の適正を持つ者はかなり珍しいらしく、ましてや全属性に適正があるなんてことは聞いたことが無いらしい、魔力に長けているエルフですら二属性に適正がある者がごく少数いるだけで、だけど過去に人族で『英雄』と呼ばれていた者がいて、その人族は火、水、風、土の四属性を操ったと言われているらしい。それなのに六属性と+強化魔法とか言う未知の魔法を持つ俺か、やっぱチートだな。いや、元々リアの能力なんだからリアが凄いのか。そもそも光の精霊なんて聞いたことが無いって言ってたし、リアって一体……。


「タクヤ、強化魔法って聞いたことないんだけど、どんな効果なの?」

「使った事ないからな、まぁ元の持ち主に聞くのが早いだろ。リア、どんな効果があるんだ?」

『強化魔法? んーっと、体が強くなったり? 武器がしゃきーんってなったり?』

「意味わからん上に何で疑問形なんだよ」

『むー、だって使った事ないんだもんー』


 あ、そうか。精霊って言ってもちょっと前に生まれたばかりなんだった。0歳って書いてるしな


「あー、リア、少し前に生まれたばかりなのを忘れてた、ごめんな」

『うん! いいよー!』


 いいよと言いつつ撫でろと言わんばかりに頭をぐいっとこっちに向けて来る、俺が悪いので大人しく頭をなでなでしてやると、ふにゃ~っと表情を和らげ気持ちよさそうにしている。それを見ているフェリからの視線が痛い、あ、あとでな。後でするから! あ、鳥が焼けてるぞ! どんどんお食べ!


「んじゃ試しに使ってみるか、攻撃魔法じゃないし危なくはないだろ、体が強くって言ってるし、身体強化的な魔法だろ!――【魔闘気(マナオーラ)】」


 ぶわっと体から白く光る湯気の様な物が溢れ出て来る


「うおおお?! なんだこれ!」

「綺麗……」

『きらきらー!』

「なんか変わったのかな?」


コガシ タクヤ 人族 27歳 男 レベル9 契約精霊:リア

HP:1757/1757 MP:7261/9965

筋力:136+65(201)

体力:125+55(179)

敏捷:113+59(172)

魔力:301+185(486)

魔耐:112+323(435) 


「おぉ! 上三つがかなり強化されたな、数値的に1.3倍ってとこかな?」


 強化魔法はどうやらかなり使える魔法みたいだ、MPは持続的に減っていくみたいで10分ほどこのままでいるとMPが2000ほど減っていた。燃費はそこまで良くないな、ずっと使っていると40分ちょっとでMPが枯渇してしまう、ご利用は計画的にだな。ちなみに頭の中で解除と念じると効果は消えた。他人に掛けることはできるのかと、試しにフェリに掛けてみたら普通に掛かったが、MPは自前のを使うので10分程でMPが無くなってしまう。


フェリ 猫人族 14歳 女 レベル2 

HP:833/833 MP:1979/2348

筋力:17+73(90)

体力:11+65(76)

敏捷:22+62(84)

魔力:4+151(155)

魔耐:6+57(63)


「……んっ、これ結構きついね。それに、今の私のステータスじゃあんまり上昇しないし、まだ必要じゃないかな」

「だな、MPが無くなっていくのって結構しんどいよな」


 チラっと膝の上にいるリアの方を見ると、んゆ? と見つめ返してきた。かわいいから許そう、だがどさくさに紛れてMPをガンガン吸うのはやめれ


「こう見たらフェリのステータスもかなり高いよな」

「ん、でもほとんどタクヤのおかげ」

「俺のステータスの半分が補正で上がってるっぽいな」

(ってことは俺が強くなればそれだけフェリも安全になるのか、レベリングしないとな)

「そういえば、このステータス画面って誰でも見れるのか?」

「ううん、タクヤがこの人ならって思う人しか見えないよ?」

「結構フレーバーなんだな、それじゃあフェリが見えるのは当然だな」


 話し込んでいる間に辺りはすっかり暗くなり、俺が拾って来たバナナの葉っぱっぽい大きな葉を地面に並べる。大量に拾ってきた果物のおかげでかなりお腹が膨れたので二人で横になって食休みする。


「いやー、こんな所でお腹一杯食べられるとは思わなかったな」

「うん、鳥美味しかったね」


 あの鳥は確かになかなかいけた、鴨に似てるだけはあるな


「……タクヤ、これからどうするの?」


 フェリが不安そうに身を寄せてくる


「とりあえずどこかの町にたどり着かないとなぁ、そこでこの世界の情報を集めたい。どんな国があるのか、まずここが何処なのかだな」

「……ん、ごめんねタクヤ、私、村以外の事全然知らなくて……」

「フェリが謝ることなんて何もないぞ? こんなかわいいフェリ、もとい獣人を迫害する世界が悪い!」


 そう言ってフェリの頭を撫でり撫でりしながら猫耳をクニクニする

「か、かわ……ふぁ、んっ、あ、耳は……あっ、んんっ」

「あ、ごめん。耳は触られるの嫌だったか?」


 フゥ、フゥと荒い息を整えながら赤い顔で

「……タクヤ、ならいい」

「俺だけ?」

「……獣人の耳や尻尾は、お母さんと……その……た、タクヤだけっ」

「お、おう」

(なんだろう、世の中のお父さんが悲しそうな顔してるのが目に浮かぶ。一緒に洗濯しないで!的な)

「……私はいいけど、他の子は許可なく触っちゃだめだよ?」

「あぁ、気を付けるよ。っと、話の途中だったな。まず、町に着いたら冒険者になろうと思う」

「……冒険者」


 冒険者という単語を聞いてフェリがピクッと反応し、俺を見つめる瞳が不安に揺れている


(しまった、フェリの村は冒険者に襲われたんだった。ったく、もうちょっと考えて話せよ俺)

「フェリ、冒険者に思う事はあると思う、だけど俺を信じてくれないか?」 

「……うん、タクヤを信じる」

「ありがとな、冒険者になる理由だけど」

『ぼうけんするのー?』

「冒険もする! しかしそれ以前に俺達には重大な問題がある!」

「……私が獣人だから?」

「ちがう! フェリはそんな事気にする必要ない、何があっても俺が守る。あとでフェリは耳ふにふに尻尾もふもふの刑だから」

「えぇ?!」

「俺達が抱える問題はそう……金が無い! 町に着いても金がなけりゃ食事もできないし宿もとれない!」

「た、たしかに」

『わたしはタクヤが居ればそれでいいよ?』

「――ッ!わ、私もタクヤが居れば他に何もいらないよ?!」

「何張り合ってんだ。まぁ金が無ければ何もできん! ってことで冒険者になるのはほぼ確定だ」


 冒険者になれば依頼やクエスト的なのをクリアすれば報酬がもらえるはず、俺達の強さなら問題ないだろう。まぁ問題は町がどのぐらいの距離にあるのかわからないって事だな、街道があるからこれに沿って行けばいつかはたどり着けるんだろうけど。


「あの、タクヤ、一つお願いがあるの」

「ん、なんだ?」

「……さっきも少し話たんだけど、私は獣人だから、きっと迷惑をかけてしまうと思う。だから、私をタクヤの奴隷として扱ってほしいの」

「フェリが俺の奴隷に……? いや、そんな事無理にしなくえも別にいいんだぞ?」

「違うの、タクヤの奴隷になれば、私はタクヤの所有物ってことになる。そうでもしないと、奴隷じゃない獣人なんて町に居ないから。きっとタクヤにいろんな迷惑がかかる」

「でも……」

「お願いしますっ……」


 フェリの言っている事は理解できる、理解できるが……俺はフェリが好きなんだ。そんなフェリを奴隷扱いなんてしたくない。だけど、それはフェリを守る為でもあるんだな、あーくそっ! 何なんだよこの世界!


「わかった、表向きはそうする。だけど俺達だけの時は普通にしてくれよ?」

「んっ! タクヤ、ありがと。でもタクヤの奴隷なら本当になってもいいよ?」

「勘弁してくれ、どこの世界に好きな女を奴隷に…………案外居そうだな」


 案外どころがかなり居そうな気がする、俺は嫌だが


「あ、あの。タクヤ!」


フェリがぐいっと身を乗り出して息がかかるぐらいの距離になる


「うお! ど、どうしたんだ?」

「あ、あの、あのね。まだ、言ってなかったから……」

「まだ何かお願いがあるのか?」


 フェリはすーっと深呼吸をしてから間を置いて。


「……私も、タクヤが大好き」


 大好き  大好き  大好き


「お……」

「お?」

「おぉおおおおおおお!」


 俺がいきなり大声を出したせいでフェリの尻尾がピンッてなってる


「た、タクヤ大丈夫?」

「あぁ、いや、脅かしてごめん」

「ううん、大丈夫。タクヤ……」 


 フェリが俺の手をぎゅっと握り尻尾を足に絡めてくる


「フェリ、俺も大好きだよ」


 自然に二人の距離が縮まる、影が重なりお互いの唇が触れる。ほとんど触れるだけの、ついばむような口づけ。そっとフェリを抱き寄せてさっきよりも強く唇を押し付ける、ビクッと体が強張るがすぐに手を背中に回し抱き返し、自分から小さな唇を開けておずおずと舌を出してくる。俺とフェリの舌が絡み合いぴちゃっと小さな水音が静かな森の中に響く。そしてもう一度ぎゅっと抱きしめ合いそっと唇を離そうとすると、フェリの唇が俺の唇を最後にちゅっとついばみ二人は離れる。


 実際には数十秒だったんだろうが、あまりにも濃厚な時間だったため、かなり長い時間キスしていたような気になる。


「フェリ、これからもよろしくな」

「んっ! ずっと一緒」


 と、フェリと二人だけの空間を作っていると


『じー』

「あ、どうしたんだ、リア」

『んぅ!』


 んーっと口をタコの様にしてこちらを見ている


「えっと、リア? マナの補給はキス以外でするんだろ?」

『うん、でもキスは口でするものだよ?』


 助け船を求めてフェリの方へ視線を向けると、ニコッとかわいい笑顔を見せながら頷くフェリ

 え、まじで? いいの? 


「リアは俺の事が好きなのか?」

『大好きだよ?』

「私は、タクヤの事がほんとに好きな子ならいいよ?」

「まぁ俺もリアには世話になってるからな、リアの事は好きだ。でも俺の世界だと一夫一妻が普通だったんだ、この世界では違うのか?」

「強い雄はいっぱい奥さんがいるかな?」


 この世界は一夫多妻制らしい、強い雄はたくさん奥さんがいるのか、その辺は獣っぽい習慣なのか。いや、人族も金持ちや、貴族、王族なんかは一夫多妻だっけ、どっちも同じだな。


「なら、改めて。リア、俺もリアが好きだ。ずっと一緒に居てくれ」

『うん! ずっと一緒にいる! タクヤ大好きー!』


 がばぁっと抱き着いて唇を奪われる、前はされるがままだったが今回は違う! リアの唇を押し広げて舌を入れ絡め合う。主導権は握らせない! お互いの唾液が混ざり合い唇から滴り落ち、リアの口から、んんーっと苦しそうな声が漏れるが、声とは裏腹によりいっそう唇を押し付け強く抱きしめてくる。そんなリアをやさしく抱き返してやりゆっくりと唇を離す。


『はぁ、はぁ、んっ、ふぁっ』

「リア、大丈夫か?」

『か、体が熱いよぉ……』

(や、やりすぎたか)


 ふぅ、ふぅ、と苦しそうに息を吐くリアを見ていると、とんでもない事に気づいてしまった。


(二人の事が好きすぎて何も考えていなかったが、フェリはまだ14歳で中学生ぐらい、そして今も息を荒くしているリアに至っては幼女……お、俺は中学生と幼女にディープキスしてたのか。やばい、やばすぎる。急に自分がとんでもない犯罪をしてしまった気持ちになった、ち、違う! 俺はロリコンじゃないんだ! 好きになった子が小さい子と幼女だっただけなんだ! だめだ言い逃れできねぇ。この世界にポルノ法があったらどうしよう、俺は犯罪者になって捕まってしまうのか……


 うぅ……うぅ、と葛藤していると今だ息の荒いリアの体が淡い光に包まれた、え? と間抜けな声を出しているとリアの体がビクンッと反り返り強い光が視界を奪う


「な、なに?!」

「うお! リア?!」

 眩い光が世界を白く染め、徐々に元に戻ってゆく。だんだん視界が良くなり、腕の中にいるリアに目を向ける。そこには、幼女と言うには少し成長していて、天使と見間違てもおかしくない小学生・・・ぐらいの美少女がいた………………全裸で


「「え?」」


 フェリと顔を見合わせる


『んぅ、タクヤ……』


 甘い声で愛しい人の名を呼び、再び唇を重ねる


「んむっ! んんっ、ぷぁっ、ちょ、リア? お前……」

『うん? どうしたのタクヤ』

「いや、どうしたのって……っ! と、とりあえず服着ろ!」

『あれ? タクヤが脱がしたの?』

「ちがうわ!」


 パァっと光に包まれると見慣れたゴスロリ幼女、ではなく少女になる。


「リア、お前成長したのか?」

「ん、かわいい」

『んー、成長と言うよりは、進化?』

「自分の事だろ、なんで疑問形なんだよ。まぁ見てみるか」


リア 光の精霊 0歳 女 契約者:コガシ タクヤ

HP:1291/1291 MP:15182/15182

筋力:12+68(80)

体力:9+62(71)

敏捷:7+56(63)

魔力:364+150(514)

魔耐:658+56(714)

【スキル】

強化魔法レベル1 浄化魔法レベル1 火魔法レベル1 水魔法レベル1 風魔法レベル1 土魔法レベル1 氷魔法レベル1 雷魔法レベル1 

【ユニークスキル】

宝物庫 原始魔法 

【称号】

原始の精霊 連理之枝


「おぉ、ステータスがかなり上がって、浄化魔法ってのが増えてるな」


 いろいろ調べてみると、原始魔法の二つ目が解放されていた。覚醒段階によってスキルが増えると書いてあるので、今さっきの光は覚醒した時の光なんだろう。たしか、一回目は名前を付けた直後だったか? んで今回がキスの後か、いやでも前に一度おもいっきり口からマナを吸われた事があったな。マナの吸引はあいつのシマじゃノーカンなのか? 何か覚醒するのに条件があるのかもしれないが今はわからないな。


「リア、浄化魔法ってどんな魔法なんだ?」

『んーっとね、あらゆるけがれをじょうかするまほうだよ!』

「大雑把な説明だな、魔法って自由度が高すぎて鑑定しても大雑把な説明しかなくて、逆に何ができるかわからんのがネックだな」

「浄化っていうぐらいだし、綺麗にする魔法?」

「うん、自分に試してみるか。えーっと清潔なイメージで…………【クリーン】!」


 パァっと一瞬だけ体が光った、それだけだが汗のべた付きや顔や頭の油などの嫌な感じがスッと無くなった。風呂上りのようなスッキリ感である。大層な名前(原始魔法)の癖にえらく家庭的な魔法だな。その効果を絶賛していると、フェリが身を乗り出して顔をぐいっと近づけてきた


「うお! ど、どうしたんだフェリ?」

「?! スン、スンスン……しない……」

「ん? しない?」

「……タクヤの匂いが、消えちゃった。その魔法キライ」

『くんくん、むしゅう!』


 ふわふわの猫耳がへにょんと垂れ下がっている。どんだけショックなんだよ


「いやでも汗臭かったろ?」

「私は好きだもん……」

「ふむ、どれ――」


 前かがみになっているフェリを引っ張って抱き寄せ、首筋に顔を近づけ――


「ふぇ? にゃ、にゃああああ!」

「くんくん、くんくん、フェリの匂いがするな」

「んにゃっ、だ、だめ! いっぱい汗かいたからっ」

「それがいいんだろ? くんくん、確かに、この匂いが失われるのはもったい無いな」


 にゃぁにゃぁ言うフェリを取り押さえてひとしきり匂いを堪能した後解放してやった。今は少し離れた所で尻尾の毛をボンッ逆立てフー、フーとこちらを恨めしそうに睨んでいる、やりすぎた。

 しばらく口を聞いてもらえなかったが、どこぞの無差別格闘流奥義……土下座で誠心誠意謝罪してお許しを得ることができ、フェリにもクリーンを掛けてあげた。


 すっかり夜になり、明日の移動に備えて寝る準備を進めるが、ここは森の中なので当然動物や魔物も存在する。二人とも寝てしまうと危険なので交互に火の番をしつつ休息をとろうと提案すると


『タクヤ、タクヤー。浄化魔法を使えばいいんじゃない?』

「浄化魔法を? んー、んー? どうするんだ?」

『んーと、ここら辺一帯をサーッと浄化しちゃえば魔物は近づいてこないんじゃないかな?』

「……結界?」

『そうそれ!』

「魔物は空気中の魔素の穢れによって生まれるんだって、だからその穢れを浄化するって意味じゃないかな?」


 なるほど結界ね……指定範囲を浄化する感じか? 聖なるエリア的な場所になるのか? まぁリアができるって言ってるしやってみるか。


(えーっと、俺達から半径20mぐらいでいいかな? そこを囲んで中の穢れを浄化って所か……)

「……よし! 聖域守護結界セイクリッドフィールド


 グンッっとMPが減り足元がふらつくがなんとか踏ん張った、俺を中心に聖なる領域が広がっていく。 

 だいたい20mぐらいの所で止まり、結界の内と外の境界線が透明な靄がかかっている。


「はぁ、はぁ、めちゃくちゃMP持っていかれたぞ、結界って便利そうだけど燃費悪いのな」


 リアが少し前に覚醒してくれたおかげで、だいぶMPが増えていたが1万近く消費していた。


「だけどまぁ、こんだけMP食ったんだ、それなりに信用はできるな」

『うん! これで安全だよ!』

「……これで一緒に寝れる」

「だな、んじゃー明日も移動しないとだから寝ますか」

「『はーい』」

(まぁ、あの狼の時よりもかなりステータスが上がってるし、襲われてもなんとかなる……か?)


 バナナモドキの葉っぱを敷き詰めて、同じ葉っぱを布団替わりにして三人で川の字になる、もちろん俺が真ん中だ。二人は疲れていたんだろう、俺の腕を当たり前のように枕にして規則正しい寝息をたてている。木々の隙間から少しだけ見える、日本じゃお目にかかれないような美しい星空を眺めながら物思いにふける。

 この世界に来て最初に居た場所が森で、狼に襲われ死にかけてなんとか助かった。 

 だけど助かったと思ったら助けてくれた恩人に売られて奴隷になって、そこで精霊のリアと猫人族のリアに出会って。

 奴隷商館から逃げ出して、また森に戻ってきたか。


「全く、どうなってんだ俺の小説は。まぁほとんど書いてなかったしな……」


 どうせなら完結してから転移してほしかったな、言ってもどうにもならないが愚痴も言いたくなる。本来なら奴隷なんかになるはずもなく、勇者として召喚されるとか、とんでもないチートを使って英雄になるとかいろいろあっただろう。 だんだんグチがヒートアップしてきたが、右腕で寝ているリアが寝返りを打って俺の体に半分体を重ねるように転がってきた。


『んにゅぅ……タクヤぁ…………いただきますぅ……』


(食うの?! マナだよな? マナの事だよな?)


 リアの食人発言にびびっていると左腕にいるフェリもこちらに転がり体を半分乗せてくる。こいつら起きてるんじゃないよな?


「んゅ……タクヤ……離れちゃ…や」


(フェリ……不安なんだな。大丈夫、何があっても離さないぞ)


 その為にはもっと強くならないとな。とにかく今は早く町に辿り着いて冒険者として足場を固めないとな。リアも、フェリも、俺の大事な者は全部守ってやる! ふっふっふ! ハーレムも夢じゃないな! あ、ちょ、フェリさん腕が首に回って、絞まる! 絞まってるから! あ、だめだ意識が……   


なんだ――――


 案外、悪くない物語じゃないか


 

一応スキルレベル早見表です

レベル1~3:初心者(初使用からようやく実践で使えるぐらい)

レベル4~5:中級者(中堅冒険者、衛兵、騎士見習いレベル)

レベル6:上級者(上位の冒険者や王国に採用される騎士レベル)

レベル7:達人(王国上位騎士レベル。努力の限界点、これ以上は才能と努力が必要)

レベル8:神業(王国騎士団長、Aランク冒険者にもちらほらいる)

レベル9:絶技(Sランク冒険者に選ばれる者はたいがいこのレベルのスキルを所持している)

レベル10:化け物(一人で一軍を相手にできるレベル。現在確認できているのは冒険者に3名とその他1名)


雑だけどこんな感じです・3・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ