4話
書いてるうちにやたら長くなってしまいましたorz
見切り発車の行き当たりばったりなんでお許しを。
「んぅ、うんー」
(もう朝か、妙に暑いな……それにやわらかい。…………やわらかい?)
フニフニ
『んっ、んんーぅ』
(えっ?)
瞬時に頭が覚醒する、なぜなら有るはずのない温もりと感触、そしてなにより少女の声が聞こえたからだ。タクヤは覚悟を決め、恐る恐る目を開ける。
目が合った
「『ふぇ?』」
ハモった
(まて、落ち着け、もう一度目を閉じよう。ここは奴隷商館で檻の中だぞ? 腕の中に”全裸の幼女”なんかがいるわけがない。よし、ゆっくり目を開けて……)
『じー』
(めっちゃ見てるぅぅ! 落ち着け、と、とりあえず挨拶しないと)
「あの、おはよう……?」
腕の中に居たのは、薄暗い部屋でもその輝きに曇り一つ無い綺麗な銀色の髪に、まだ子供のあどけなさを残しながらも、見つめられると目が離せなくなるような透き通った金色の瞳、きめ細かくずっと触っていたくなるようなやわらかい肌、まだまだ成長途中であろう二つの膨らみかけの胸、幼いながらもどこか女を感じさせるような不思議な魅力がある、見た目は10歳前後だが控えめに言っても将来は確実に美人になるのが確定している容姿だ。とりあえずこの未知の生物とファーストコンタクトを取るべく挨拶すると、幼女の顔がぱぁーっと花が咲いたような笑顔になり
『タクヤぁ!』
満面の笑みの幼女が自分の名前を叫んで胸に飛び込んでグリグリと顔を胸に押し付けてくる
「うおっ! えっと、君は誰なんだい? っていうか何で俺の名前を知ってるんだ?」
ひとしきりグリグリを終えるとぷはぁっと顔を上げてぐいっと鼻が当たりそうなぐらいに顔を近づける
『うん? ずっと一緒に居たよ?』
何言ってるの? とキョトンとした顔を向けてくる
「ずっと一緒に? 俺の名前を知ってるみたいだけど、俺は君の事を見たこともないぞ?」
『こうして会ったのは今が初めてだよ!』
「んん? どうゆうことだ?」
『んとねー、まだ意識がはっきりしてない時にタクヤに川で拾ってもらった!』
「川で拾った……?」
(なんだその桃太郎的な展開は)
『うん! それでタクヤのマナをちょっとづつ貰ってたの! で、昨日目が覚めたんだよ!』
(マナ? MPの事か?)
「それってもしかして、昨日の夜めちゃくちゃ一気に吸わなかったか?」
『タクヤが辛そうだったから……。”ちょっと”多めに貰っちゃった! でもおかげでこうして会えたよ?』
「あれはお前の仕業だったのか! 死ぬかと思ったぞ!」
『うぅー、ごめんなさいー』
どうやら昨日のMPが激減した原因はこの子らしい
「ちょっとまって。ってことは、君はあの川で拾った石なのか?」
あの時たしかに、あの石が光ってMPが吸われてる感じがした、なにより握ったまま寝たはずの石が無くなっている
『そうだよー!』
(あの石がこの子だとして、一体何者なんだ? とりあえず鑑定してみるか)
光の精霊 0歳 女 契約者:コガシ タクヤ
HP:182/182 MP:5284/5284
筋力:8
体力:6
敏捷:4
魔力:181
魔耐:317
【スキル】
【魔法】
火魔法レベル1 水魔法レベル1 風魔法レベル1 土魔法レベル1 氷魔法レベル1 雷魔法レベル1
【ユニークスキル】
宝物庫 原始魔法
【称号】
原始の精霊
(どこから突っ込めばいいんだ)
『かんていできたー?』
「なっ、分かるのか? 俺が鑑定を使ったって事」
『タクヤの事ならわかるよー! 他の人は知らない!』
「そ、そうか。ちょっとステータスを見せてもらってもいいか?」
『うん! いいよー』
(とりあえずはこれだな)
『光の精霊:同世代に一体しか存在しないとされる幻の精霊』
(なんかめちゃくちゃ珍しい精霊ってことはわかった。そもそも精霊って何なんだ? まぁそれは置いておこう。次はこれかな)
『宝物庫:生物以外を無限に物を収納する事ができる』
(アイテムボックスだこれ! 異世界に行ったら必須スキルになる一つじゃねーか! う、うらやましい。くぅ、次だ!)
『原始魔法:光の精霊のみが使える魔法、覚醒段階によって使える種類が増える。1、※※※※ 2、※※※※ 3、※※※※ 4、※※※※ 5、※※※※』
(魔法自体がぴんとこないからいまいちよくわからんが、今は何も使えないってことかな? まぁとりあえず考えるのは後にして最後の見てみるか)
『原始の精霊:全ての精霊の始祖、火、水、風、土、氷、雷、全ての属性を操る』
(この幼女実はすごい奴なんじゃ……今は深く考えるのはよそう)
「ありがとう、見させてもらったよ。ステータスに書いて無いんだけど、君の名前はなんて言うんだ?」
『なまえないよ? タクヤがつけて!』
「まぁ、今生まれたばかりっぽいしな。わかった! んー、そうだなー。 リアなんてどうだ?」
『りあ! りあはりあになるね!』
「おう、 喜んでもらえたみたいでよかったよ」
『うん! タクヤぁ!』
ふたたびがばっと胸に飛び込んで顔をぐりぐり押し付けてくる全裸幼女リアの体がパァァっと強い光を放つ、目がぁ、目がぁ! 光が収まるとさっきと何も変わらない全裸の幼女が今もぐりぐりしていた
>ユニークスキル『連理之契』により、対象者:リアとのパスが繋がりました。
>称号『光の精霊の加護』を取得しました。
>スキル『状態異常耐性』が上位スキル入手により消滅しました。
(なんか増えたみたいだけど、とりあえず置いておこう)
「お、おい大丈夫か? めっちゃ光ってたけど……」
『ん? あぁ! タクヤがわたしに名前をくれたから一つ大人に近づいたんだよ!』
と、幼女が言っているが何か変わったのだろうか、試しに鑑定してみる。
リア 光の精霊 0歳 女 契約者:コガシ タクヤ
HP:649/649 MP:6926/6926
筋力:8+59(67)
体力:6+54(60)
敏捷:4+50(54)
魔力:181+135(316)
魔耐:317+49(366)
【スキル】
【魔法】
強化魔法レベル1 火魔法レベル1 水魔法レベル1 風魔法レベル1 土魔法レベル1 氷魔法レベル1 雷魔法レベル1
【ユニークスキル】
宝物庫 原始魔法
【称号】
原始の精霊 連理之枝
名前に強化魔法、連理之枝なる物が増えていた、いろいろ鑑定で調べてみると原始魔法が一つ解放されていた
『原始魔法:光の精霊のみが使える魔法、覚醒段階によって使える種類が増える。1、強化魔法 2、※※※※ 3、※※※※ 4、※※※※ 5、※※※※』
これは名前を得たことで覚醒したってことか? あと四つあるし、他にも覚醒方法があるんだろうか。あとは連理之枝か。
『連理之枝:想いが通じ合い、深い絆で結ばれた者』
想いが通じ合う……? 深い絆って。まぁ命を助けてもらったし、こんなかわいい子とだったら悪い気はしないな。いろいろ考えるが、目の前の全裸幼女に現実へと戻される。
「ってそうだった! 何か着る物があればいいんだけど、このままじゃいろいろヤバイ」
リアがきゃっきゃとじゃれてくるのをあやしつつ、何かいい方法は無いかとあたふたしていると、背筋が冷えるような感覚と誰かに見られているような視線を感じる
(っは! まさか)
ギギギギとゆっくり顔を横に向けると、じとーっと目を半開きにしてこっちを見ているフェリと目が合った。
「や、やぁフェリ。きょ、今日もいい天気だな!」
「…………」
(やっべぇ、こんな状況どう言い訳したらいいんだ! 全裸の幼女を抱いてる時点で言い逃れ不可能だわ)
「ふ、フェリさん、君は誤解している」
『タクヤぁーお腹空いたー、マナもらっていい?』
「ちょっと黙っててくれるかな?! フェリ、これには深い事情があるんだ!」
「……何一人で騒いでるの?」
「いやほんと騒いでごめん……え? 一人で? フェリ、コレが見えてないのか?」
「…………大丈夫?」
『あ、りあは精霊だからふつうの人には見えないよ? あと声に出さなくても頭の中で、ん~とどけぇ! ってすれば聞こえる!』
「それを……」『先に言えよおおお!』
『うわあああんタクヤが怒ったああ』
『う、怒鳴ってすまん。あとで好きなだけ魔力吸っていいから許してくれ。』
『ほんと……? ならゆるすぅ』
『ありがとな』
(さて、どうやってフェリの誤解を解くか。いい機会だな、リアの事も含めて本当の事を話すか)
「なぁ、フェリ。少し話をしたいんだが、聞いてくれるか?」
真剣な声で、真摯に願う
「……うん」
それからタクヤは今までの事を全て話た、記憶喪失は嘘で自分がこの世界の人間では無く違う世界からの転移者である事、見知らぬ森で目が覚めてそこで綺麗な石を拾い狼に襲われて死にかけたが、近くの村人に助けれらた事、恩人だと思っていた村長さんに睡眠薬を盛られ奴隷商人に売られて裏切られたこと、そして昨晩川で拾った石にマナを吸い尽くされて気を失い、朝目が覚めたら見た目幼女の精霊が側に居たこと、そしてその精霊は自分以外には見えないらしい事、途中フェリがうさんくさそうな顔をしていたがしかたない、こんな事信じろと言う方が無理がある、だけど、フェリに嘘はつきたくなかった。話を終えてタクヤは恐る恐るフェリの顔をうかがう。
「……他の世界から、正直信じられない」
「まぁ、そうだよ――「でも」」
「嘘を言ってるとは思っていない」
「え、信じてくれるのか?!」
「……わからない、でも信じてもいいかなとは思う」
「フェリ……ありがとうな」
「あとその精霊? っていうのはほんとに今そこにいるの?」
「あぁいるぞ、俺の足の上にいる」
「私たち獣人は魔力に恵まれていない、だから精霊を見る事はほどんどできない」
「そうか、何か見える方法は無いのかな」『リア、フェリに姿を見せる事はできないのか?』
『んー? できるよー?』
『え? できんの? じゃあちょっとお願いしていいか?』
『タクヤの魔力を感じなきゃ無理かな? ちょっとお手てを繋いでくれる?』
「フェリ、なんか姿を見せる方法があるみたいなんだ、ちょっと俺の手を握ってくれないか?」
そう言ってタクヤは檻から手をグッっとフェリの方へ伸ばす
「て、手を? わかった」
手を服にゴシゴシしてからおずおずと手を伸ばしてくる、それをそっと掴むとビクッっと反応するがすぐに握り返してくる、緊張しているのか少し手が汗ばんでいる
『握ったぞー? これからどうするんだ?』
『まかせてー』
まかせてーと無い胸をトンっと叩くとまたあの感覚が襲ってくる、マナが吸われてる感覚は慣れそうにない。昨日みたいに大量に吸われてるわけじゃないから大丈夫だが、どうやら俺のマナをフェリに送っているらしい。胸の辺りから腕の方へとマナが流れてるのがわかる、マナが俺の手のひらからフェリの方へ届いた瞬間握っている手がギュッっと握られフェリのネコミミと尻尾がピンッと上に向いていた。
「んっ……んなぁっ、あっ、ふぁ……」
「ちょ、大丈夫か?! おいリアどうなってんだ!」
『だいじょぶだいじょぶー』
「フェリ、辛かったらやめていいんだぞ?」
「だい……んっ、じょうぶ、はぁっ、ふぅ、ふぅ」
『こんなもんかなー? もう見えてるんじゃない?』
「フェリ、もう終わったみたいぞ、どうだ? 見えてるか?」
ぎゅぅぅ
「フェリさん? なんでそんな手に力を、いたいいたい!」
ジトーっとどこか軽蔑するような目でこちらを睨みながら手にギリギリと力を込めてくる
「……そんな趣味があるとは思わなかった」
「そんな趣味? なにを言って……」
タクヤは自分の状況を確認する、フェリと手を繋ぎながら膝の上に全裸の幼女を乗っけている……”全裸”の幼女を!
(しまったあああああ! これじゃあただの変態じゃねーか! こいつか全裸なのを忘れてた……)
「フェリっ! 違うんだ! こいつ起きた時からこの格好で着る服が無いんだよ!」
「……貸してあげればいいじゃないですか」
「あ、うん。そうだね。」
『服? あぁ、人間の着物の事かー。着た方がいい?』
『え? 服あんの?』
『精霊は体がマナで出来てるからねー! マナで服を構築すればいいだけだからねっ!』
グッとサムアップしてこのドヤ顔である、生まれて初めて幼女を殴りたいと思った
『と、とにかく何か服を着てくれ』
『りょーかいっ』
「あ、あの。この声が精霊様なんですか?」
「ん、フェリにも聞こえてるのか?」
『魔力パスをつなげたからねー!』
「フェリ、頭の中で相手に伝えたい事を念じてみてくれ」
『……こう、かな? 聞こえる?』
『おー、聞こえるぞー。あんまり声に出すと他の奴に聞かれるからな、基本こっちで話そうか』
『わたしとタクヤの空間にあんまり入ってきてほしくないんだけどね!』
『そんな事言うんじゃない、っていうか早く服着てくれ!』
『はーいっ』
元気よく手を挙げるとピカッと一瞬光り、次の瞬間には服を着ていたのだが
『なぁリア、その服ってこの世界じゃ普通なのか?』
リアが着ていたのはどうみても”ゴスロリ”服であった
『ううん? タクヤの記憶から好きそうなのを選んだんだよ! ほめてー!』
『そんな事できんのか! ってか勝手に記憶を読むなよ! まぁでも恐ろしく似合ってるな』
『うん、似合ってる。かわいい』
『タクヤ以外に褒められてもうれしくないもんー』
『ご、ごめんなさい』
『おいリア、そんな言い方するなよ。お前を褒めてくれてるんだから、仲良くしてくれ。ごめんなフェリ』
『う、ううん。気にしてないよ』
『タクヤがそう言うなら仲良くするー! りあの事はりあって呼んで! ていねいな言葉もいらないよー』
『うん、よろしくねリア、私もフェリって呼んでね』
『仲良くなー、その方が俺もうれしい』
『……それはそうと、どうして裸の女の子をずっと抱っこしていたの?』
『え゛、それはリアが離れてくれなくて仕方なく』
『……タクヤのばか』
『ん? あれ、名前……』
『……知らない』
そうして3人で暫く雑談を続けているとガチャっと正面の扉が開きイライザさんが昼食を持ってきて檻の前へ並べてゆく、今日のメニューは水、パン、シチューのみたいな物だった。
「おぉ、今日はシチューか。うん、うまい! 相変わらず飯はいけるな。今日は嫌いな物はないか?」
「ん……シチューおいしい」
『タクヤぁー、まーなーちょーだいっ』
『あぁ、そう言えばあげるって言ってたな。吸っていいぞー、あ、でも全部吸うなよ!』
『はぁーい!』
するっと膝の上に陣取って吸い込まれるような美しい金色の瞳で見つめられる
『そんなとこで吸われたら俺がたべにく――ッン!』
スッとそのまま唇と唇の距離が0になる、ピチャ、クチュと粘り気のある音が響く。両手を食器で塞がれているタクヤは思考が停止したことも相まって固まったように動けなくなり、リアの舌がタクヤの口内を隅々まで舐めまわすように動き回り、されるがままに唇を蹂躙される。フェリは信じられない物を見るような目で口をパクパクさせながら眺めている。やがてゆっくりと唇が離れて行きツーっと唾液が糸を引く、そしてもう一度触れるようなキスをする
『ぷっはぁ! まんぞくー』
満面の笑みを浮かべ満足そうな顔をするリアだが、二人がわなわなしてるのを見てキョトンとした顔する。
『どうしたのー?』
『んな、んな……』
『どうしたの? じゃねーよ! いきなりなにすんだ!』
『だってマナをもらおうと思ったらキスするしかないよー?』
『絶対嘘だろ! だったらさっき俺からフェリにマナを流した時も、俺とフェリがキスしないといけないはずだろ!』
『き、キス……』
『チッ』
『おい、今舌打ちしただろ』
『だって今できるのだとキスするのが一番効率がよかったんだもんー、肌をくっつけるだけでもできるけど、味が落ちちゃうし多く吸えないし』
『はぁ、まぁ次からはキス以外で頼む。俺の精神がもたん』
『むー、はぁい。たまにならいいー?』
『んー、まぁたまーにな!』
こいつは本当に精霊なのか、絶対サキュバスかなにかだと思うんだが
『……タクヤ、変態』
なぜこうなる!
『ぐっ、そ、そういえば! ごたごたしてて後回しにしてたんだが! リアって俺の契約者なの?』
『りあはタクヤの契約精霊だよ? すてーたすで確認してみたら?』
『なるほど『ステータス』』
コガシ タクヤ 人族 27歳 男 レベル8 契約精霊:リア
HP:1209/1209 MP:3641/8584
筋力:118+8(126)
体力:109+6(115)
敏捷:101+4(105)
魔力:271+181(452)
魔耐:98+317(415)
【スキル】
鑑定レベル3(5) 体術レベル3(5) 痛覚軽減レベル2(4)
【魔法】
強化魔法レベル1(3) 火魔法レベル1(3) 水魔法レベル1(3) 風魔法レベル1(3) 土魔法レベル1(3) 氷魔法レベル1(3) 雷魔法レベル1(3)
【ユニークスキル】
連理之契
【称号】
転移者 契約者 光の精霊の加護 ????
『なんかめっちゃパワーアップしてるんだが』
『たぶんそれはタクヤのユニークスキルの効果かな?』
『ふぁー、タクヤ、本当に転移者だったんだね』
『え? これフェリ見えてるの? なんか恥ずかしいんだけど。まぁちょっとこの機にいろいろ鑑定してみるわ』
『HP:自らの命を数値化した物、この数値が0になると死亡する』
『MP:体内にあるマナを数値化した物、この数値が0になると意識を失う』
『筋力:この数値が高いほど力が強くなる』
『体力:この数値が高いほどスタミナが多く体が頑丈になり、物理攻撃に強くなり、HPの自然回復量も上昇する』
『敏捷:この数値が高いほど素早く動ける、神経の信号伝達が早くなり動体視力なども上昇する』
『魔力:この数値が高いほど魔法の威力が上昇し、マナの自然回復量も上昇する』
『魔耐:この数値が高いほど魔法に対する防御力が上昇し、状態異常、精神異常にもかかりにくくなる』
『体術:肉体を使用する全ての行動に補正 レベル5/10』
『痛覚耐性:痛みをある程度まで緩和する レベル4/10』
『連理之枝:深い絆で結ばれた者同士のステータスを上乗せする この絆で結ばれた者達は、お互いが思い合う限り何者も干渉する事は出来ない 対象者:リア』
『契約者:精霊と契約せし者、精霊の能力の全てを使う事ができる』
『光の精霊の加護:全ての属性適正を得る 状態異常無効 スキルレベル2段階上昇』
『いろいろわかったが、MPめっちゃ吸ったな! 半分以上無くなってるじゃないか』
『おいしかったよ?』
『そ、そうか。ってか思ったんだけど、俺奴隷じゃなくなってない?』
『……ほんとだ、どうして?』
『あ、それ契約する時に邪魔だから消しちゃった』
『『えっ』』
『え?』
『消せるのか! それって他人のも消せるのか?』
『うんー、たぶん無理かな? まぁでもフェリちゃんなら何とかなるかも?』
『ほんとうか! ならフェリの奴隷紋も決してやってくれないか?』
『わたしじゃむりー』
『どうゆうことだ?』
リアの話によると、奴隷紋と言うのは一種の呪いのようで、現状の主人はここの奴隷商人であるモーリスになっている。そこで仮に俺のユニークスキルである連理之契の効果をフェリが受ける事が出来たなら、俺とフェリの障害である奴隷紋の呪いはかき消される確率が高いという。だが連理之契を発動させるには深い絆を結ばなければならないため、こればっかりはやろうと思って出来ることではない。
あれこれ悩んでる内にかなり時間が経ったらしく夕食を持ったイライザさんが入ってくる、檻の前に夕食を並べられ食べ始める、正直言って食欲があまり無いが残すのはもったいないのでしっかり完食したが、あまり味も覚えていない。しばらくしてイライザさんが食器を回収していく、そのまま部屋を出ていくのかと思ったが、その足がフェリの前で止まる。
「フェリだったかしら? あなたを購入して下さる方が決まりました、明日の朝引き取りに来られるので今からお風呂に入って少しでも体を綺麗にしてきなさい」
頭が真っ白になった、今何て言った? フェリが……買われる。
ガチャ
フェリの檻が開けられイライザに別室に連れて行かれる、部屋から出る直前にフェリと目が合う。フェリは――――笑っていた
心臓の音がやけに五月蠅い。フェリが買われる、フェリが居なくなる、そればかりが頭の中をグルグルと回っている。
『リア……何かいい方法はないか……』
『さっき言った方法以外にはないかなー』
クソッ! いくらなんでも早すぎるだろ! 何とか、何とかならないのか。
『リア、魔法でこの檻を破壊することは出来るか?』
『かんたんだよー! タクヤにもできると思うよー?』
(最悪覚悟を決めるか……)
リアに魔法のレクチャーをしてもらいながら今後の事を考える、どうやらこの世界の魔法はかなり自由度が高いらしい、たとえば火魔法と言うのはレベルが上がるごとに使える魔法が増えるという訳ではなく、あくまでも火の操作がうまくなったり、より大火力を扱えるようになったりと、レベルと言うよりは熟練度みたいな感じらしい。つまり! しっかりとしたイメージとそれを行使するマナがあれば、”ぼくのかんがえたさいきょうのまほう”が使えるということだ! これはその内いろいろ研究しないとな、だがまずはこれからの事を考えないとな。
フェリに連理之契が適応されて奴隷紋が消滅するのが一番ベストなのは間違いない。だがもし、それが無理なら俺は……。ハハッ、自分でも馬鹿だと思うぐらい他の答えが見つからないな、そうと決まればいろいろ下準備をしないとな。リアに頑張ってもらうか……あとでいっぱい褒めてやらないとな。
フェリが出て行ってから2時間程が過ぎた。ガチャっと正面の扉が開く、イライザに連れられてフェリが隣の檻へ帰ってきた。さっきまだ話していた元気な姿は無く、足取りは重く、体に力が入っていないのかフラついていて、目は腫れていて泣いていた跡があった。
再び檻に入れられたフェリはしばらく俯いていたがすぐに顔を上げると笑顔を作る
『ただいま!』
『あぁ、おかえり』
お互いの息遣いが聞こえるほどの沈黙が流れる
『タクヤ、私の主人が決まったの』
『そうみたいだな』
『優しそうな人だった! ちょっと安心しちゃった』
"悲痛"な笑顔で彼女は答える
『フェリ――』
『タクヤ! 私は大丈夫だから……タクヤとリアならここを出られるよ』
『俺は、フェリに謝らないといけない事がある』
『……なに?』
『ここに来た時に俺はフェリに行ったよな、一緒に逃がしてやるとか、獣人の事を、フェリの事を何も知らないでいい加減な事を』
『タクヤは異世界から来たんだもん、知らなくても仕方ないよ。だから、怒ってないよ』
『"あの時"は覚悟もなく適当な事を言ってしまった、本当にごめん』
『ううん、大丈夫。私、明日行かなきゃだから、寝不足の顔で行くわけにはいかないし、そろそろ寝るね』
『あぁ、おやすみフェリ』
『うん、おやすみタクヤ』
フェリはこちらに背を向けて丸くなって眠る、しばらくすると静かにすすり泣く声が聞こえてくる。胸が抉られるような気持ちだった、そんな声も次第に聞こえなくなる、泣きつかれて眠ったようだ。正確な時間はわからないがおそらく深夜の3~4時ぐらいだろうか、俺は――――覚悟を決めた
『リア、起きてるか?』
『もっちろん!』
『今からこの檻を破壊する、俺が鍵を火魔法で熔解させるからリアは音と火の明かりを遮断してくれないか』
『まかせてー! 【サイレント】【ロックキューブ】』
リアは風魔法のサイレントで室内全ての音を消しつつ、土魔法のロックキューブで俺達を檻ごと包み込んだ
『よし、やるぞ【バーナー】』
火魔法でガスバーナーを思い浮かべる、タクヤのありあまるマナをガンガンつぎ込んでいるため青白く輝く炎が手のひらから放出される、檻の鍵は瞬く間に赤く染まりあっという間に溶け落ちた。
『よしこれで出られるな、リア、サイレントは維持しつつロックキューブを解除してくれ』
『はーい!』
ロックキューブが解除されタクヤは外に出る
『よし、念のために扉を封鎖しておいてくれ』
『あい! 【ロックグレイブ】』
地面から鋭い岩が何本も突き出し扉を固定する、これで準備は整った。再びリアにロックキューブでフェリの檻ごと囲ってもらう
『フェリ、フェリ! 聞こえるか? 目を覚ましてくれ』
「…………!………?!」
『フェリ落ち着け、魔法で音を消してるんだ』
『タクヤ……?どうゆうこと』
『フェリ、ここから逃げるぞ』
『逃げるって……無理だよ。タクヤだけで逃げて』
『だめだ! お前も連れていく』
『だって、私には奴隷紋があるんだよ? 逃げられるわけない!』
普段大人しい彼女からは想像できないくらい感情を表に出し声を荒げ、その目には涙が浮かんでいる
『だったら追いかけれないくらい遠くへ逃げるさ』
『だめ、タクヤ一人なら逃げきれるかもしれない、私は買い手がついてるからきっと躍起になって探される』
『フェリ一人ぐらい俺が何とかしてやる』
俺は手に炎を纏い鍵を溶かしてゆく
『タクヤっ、だめ! 私は獣人なの! ここを出ても私はタクヤの足手まといになる! 私はここに居ても、外に出ても獣人である限り変わらないの!』
ガシャンと鍵が溶け落ち檻の扉が開く
『タクヤ、お願い。一人で逃げて、私は――』
ガバッ
檻へ入り問答無用でフェリを強く抱きしめる
『どうして……』
大粒の涙がフェリの澄んだ二藍の瞳から零れ落ちる
『ここを出たら俺達は追われる身になるのかもしれない』
下手をすれば賞金をかけられ兵士や冒険者に狙われ、怯える日々が続くかもしれない
『獣人であるフェリは、また意味もなく人間に狙われると思う』
フェリはまた人間に狙われ、蔑まされ、傷つく事もあるかもしれない
『俺は、獣人全員を救うなんて言えないし、できない』
『…………』
『だけど、たとえ兵士や冒険者に追われようが、この国を敵に回そうが、人間が敵になろうが』
俺は覚悟を決めて、誓ったんだ
『惚れた女ぐらい、命を懸けて守ってやる! だから――』
この腕の中の温もりは絶対に離さない
『フェリ、俺と一緒に来い!』
『んぐ、ふぇ、ダグヤぁ、タクヤぁ! 怖かったよ、買い手が、決まったって聞いた時、もう終わりなんだって思った、これから起こる事が怖かった、けどタクヤとさよならしなきゃいけないのが怖かったよぉ!』
すると、フェリの胸元が薄っすらと光る。
>ユニークスキル『連理之契』により、対象者:フェリとのパスが繋がりました。
『ぁ……』
『フェリ! もしかして』
フェリ 猫人族 14歳 女 レベル2
HP:559/559 MP1658/1658
筋力:17+59(76)
体力:11+54(65)
敏捷:22+50(72)
魔力:4+135(139)
魔耐:6+49(55)
【スキル】
体術レベル1 飛脚 痛覚軽減レベル1 空腹耐性レベル2
【称号】
連理之枝
(称号が増えてる! やっぱり俺のスキルが適応されるとつくみたいだな)
『消えてる、奴隷が解除されてる!』
『タクヤぁっ』
泣きじゃくるフェリの背中を優しく撫でながら落ち着くのを待つ
『……ん! もう大丈夫』
『よし、ならさっさとこんな所から脱出するぞ』
『でも、どうやって?』
『ちゃんと考えてある、リア! 手筈通りに行くぞ』
『まかせてー!』
リアには事前にこの部屋の外を調べてもらっていた、正面の扉の向こうには常にここで働いている獣人奴隷が2~3人いる。俺達が搬入された右の扉は出口に繋がっているが、そこにも見張りの獣人奴隷が一人いる。そして俺達がいる檻の後ろの壁の向こうは倉庫になっていて普段人はいないらしい。
『リア、サイレントはこの隣の倉庫にまで効果は届いてるよな?』
『ばっちりだよー』
『フェリ、後ろにいろ』
『んっ!』
『よし、【ウィンドプロテクション】』
風魔法のウィンドプロテクションで俺とフェリに風の鎧を付与する
『これで! 【フレイムボルト】』
魔法を発動させると消え入るような声で、え……? とつぶやくがサイレントがあるせいでタクヤには聞こえない。炎の塊が壁に激突して粉々に打ち砕く、飛び散る破片はウィンドプロテクションが全て弾き、ロッ1クキューブが周りに飛び散るのを防いでくれている。
『サイレントが無かったら大騒ぎだな、フェリ、怪我は無いか?』
『ん!大丈夫』
出来上がった穴から倉庫の中を確認するが、リアの情報通り人は居ないみたいだ。そのまま真っすぐ反対側の壁まで移動する。
『この壁を越えれば建物と建物の間で二人が通れるぐらいの狭い路地に出る、そしたらこの町を出るぞ』
『んっ!』
再びリアにサイレントの効果を確認し、フレイムボルトで倉庫の壁を破壊する。穴から顔を出し人が居ない事を確認して三人は奴隷商から脱出する。リア情報によると、町の出口まではそう遠くは無いらしい。裏通りを小走りで抜けつつ出口へと向かう途中で浮浪者の様な奴に訝しげな目を向けられるが無視だ。
5分ほど走ったがステータスのおかげなのか全く疲れない事に驚いた、フェリは猫の獣人なのでもともと走るのは得意なのだろう。そして俺達がこの町に入った時に通ったであろう出入り口が見えてきた、物陰に隠れながら出口の様子を窺うと見張りの兵士が二人いて辺りを見渡していた。
『……兵士、どうする?』
『大丈夫だ リア、頼む』
『おっけー! 【ミラージュミスト】』
リアが万能すぎる、魔法を唱えたら俺とフェリを霧が覆い光を乱反射させ光学迷彩のように俺達の姿を隠す。
『え、タクヤ?』
お互いが見えなくなりフェリが不安な声で俺の名前を呼ぶ、すぐに手を握ろうと手を伸ばすとふにゅっと柔らかく、弾力のある”何か”を掴む
『んやっ……タクヤ、そこ……お尻』
『ご、ごめん! わざとじゃないんだ、手を握ろうとしたんだ!』
『……えっち』
『むぅぅぅ! タクヤはわたしのお尻の方が好きだよね?!』
『はぁ?! 何言ってんだこんな時に!』
『……どっち?』
『フェリまで……。と、とにかく! 今は早くここから出るのが先だ! 追手が来るかもしれないんだぞ!』
『『はーい』』
全然納得してないぞと言わんばかりに頬を膨らませる二人、逃げてる内に忘れてくれる事を祈ろう。
気を取り直して出口を見てみると兵士は二人で何やら話しているみたいだった
『よし、今のうちに横を通るぞ、なるべく足音を立てないようにな』
『……ん』
『はーい!』
心配しなくてもリアは見えないし聞こえないとはつっこまない
「なぁ次の給金が出たらよ、ちょっと前にできた新しい娼館に行かねぇか?」
「お前ほんと好きだよなー、前にハマってた所はどうしたんだ? お気にりがいたんだろ?」
すぐ横を俺達が通ってるとも知らずにくだらない話をする兵士を無視して慎重に進む
「あぁ、あそこな。テンションあがっちまってさー、死なせちまって出禁になった」
「どんなプレイしてんだよ、でも獣人一匹死なせただけだろ? それで出禁になんのあそこ」
『ッ……』
繋いでいる手がビクッと反応する
「いや、三匹目だったんだわそれが」
「そりゃ出禁になるわ、まぁ気持ちはわかるけどなー」
「だろ? あの死にかけてる時が一番締まって気持ちいいんだよ、痛がって泣き叫ぶのもたまんねぇ。あー安かったのになあの店、獣三匹殺したぐらいで出禁にしやがって」
ぎゅっと握られている手が汗ばみ、震えているのがわかる
(このクズ共が……)
『フェリ、耳をかすんじゃない、行くぞ』
フェリの手をぎゅっと握り返し出口から少し離れた木の影に隠れると同時にミラージュミストが解除されると、真っ青な顔で震えるフェリをすこし強引に抱き寄せた。
「フェリ……」
「タクヤ……怖いよ、私だって明日が来れば同じような――「フェリ!」」
フェリの震えが止まるように強く抱きしめる
「そんな明日はもうこない、これからもな。言っただろう? 何者からも俺が守ってやる」
「タクヤ……うん、信じてる」
「よし、じゃあフェリはちょっとここに居てくれ」
「……ん、どこいくの?」
「なぁに――」
俺はニタァと口角を上げて
「ちょっとムカつく野郎の心を折りに行くだけだ」
そう言って二人の兵士が見える位置に移動する、兵士は相変わらず呑気に話している。俺は二人の股間に狙いを定め
「砕け散れ!【バレッテーゼフレア】(極小)」
>レベルが9に上がりました。
>スキル『火魔法』のレベルが2に上がりました。
レベルアップ音とボフンッという音と共に二人の兵士の股間が爆発する、漫画の魔法って一度やってみたくなるよな、反省も後悔もしていない。よほどの衝撃だったのだろうか二人とも倒れて気絶してしまった。二人共再起不能にしてやり、満面の笑みでフェリ達の居る方へ振り返り
「よし、逃げるか!」
「………」
『きたねーはなびだぜー』
ぽかーんとしてるフェリの手を取って街道を走る、呆れたかな? と振り返って見るとフェリは天使の笑顔を見せてぎゅっと手を握ってくれた
「よーし! とりあえず街道を真っすぐ行ってみるか―」
『おーう!』
「んっ!」
こうして他の町を目指して街道を進むタクヤ一行が迷子になったのは言うまでもなかった