3話
ガゴンッ ガタンッ
(んぐぅ……そんなに揺らさないでくれ。もうちょっとだけ寝かせてくれ。)
そこそこ激しく揺れているが、今回の睡魔はちょっとやそっとの事じゃ根をあげない。この睡眠を邪魔するのなら戦争も辞さない! まだまだ惰眠を貪ろうと卓矢は寝返りを打ち、毛布をかけなおs
「床硬っ! え? なんだ?! どうなってんだこれ」
あまりの床の硬さに卓矢は飛び起きた。昨日は村長宅のふかふかのベットとふわっふわの毛布に包まれて夢の世界に旅立ったはずだった。Before ⇒ Afterが酷すぎる。なんということでしょう、なんてもんじゃない! どうしてこうなった。
だんだん頭が覚醒してきて現状の異常性に気付く。どうやら馬車かなにかで移動しているらしい、そして同乗者? らしき人が数名。そしてなによりも……目の前に聳え立つ鉄の棒…………どう見ても檻です本当にありがとうございます。
(え? なんで俺、檻に入れられてんの?)
檻のサイズは小さく、一人一台という感じだ。その中には10歳ぐらいの子供から40代ぐらいの男女様々な人が入れられている。共通して言えるのは、皆ボロボロの服を着ていて―――――――――目が死んでいる事だ。
(全員この世の終わりみたいな顔してんな。あの女の子なんてまだ…………クワッ!!!)
目玉が飛び出すかと思った。見てしまった、見えてしまった、15歳ぐらいの少女の頭から猫耳が生えているのを!! ショートボブ風の吸い込まれるような漆黒の髪で猫耳の内側には真逆の純白でふわふわな毛が生えている、どこか妖艶な雰囲気を漂わせるダークパープルの瞳、ぼろぼろの服の上から小さく主張する二つの膨らみは今後に期待と言ったところか、スレンダーな体を下へなぞっていくと小ぶりなお尻から延びる黒毛でもふもふの尻尾が不安そうに体にピタッとくっついている、その整った容姿は100人いたら100人が美少女と絶賛するだろう。
(獣人キタァアアアアア!! しかも猫耳! もしやとは思っていたが、やっぱり獣人は居たんだ! これだけで異世界に来た甲斐があった!)
獣人発見によりテンションが天元突破した卓矢だが、上り過ぎたテンションが一周回って次第に冷静になる。村長の家で寝ていたはずなのに、起きたら馬車に乗せられていて、しかも檻の中に閉じ込められている。よく考えなくてもやばい事態に、嫌な汗が流れてくる。とにかく現状を知るべく、隣の檻に入っているおっちゃんに話を聞こうと視線を向ける。
「あの、すみません。この馬車はどこに向かってるんですか?」
第一印象が大事だと思い、できるだけ笑顔で丁寧に尋ねた。
「ア〝ァ〝?」
どうやら第一印象は最悪らしい
「すみません、家で寝ていたはずなのに、目が覚めたらここに居たんです。」
それを聞いた男はニタァと口を歪め
「アッハッハッハッハハハハハ」
(は? 何だこいつ、気持ちわりぃ、聞く相手を間違えたな。)
誰かまともそうな人は居ないか辺りを見渡していると、不意に男が呟いた。
「売られたんだよ……」
「……は?」
「だぁから! お前は家族に売られたんだよ! アッハハハハハ」
「売られた……? どうゆうことだ?」
「この馬車がどこに向かってるかって聞いてたなぁ? 教えてやるよ―――奴隷商さ」
「奴隷って……」
「やっと理解したか? 俺もお前も、奴隷として売られたんだよ!」
頭がくらくらする。俺が、奴隷? あの夫婦は俺を売ったのか? 優しくしてくれたのは演技だったのか。助けたのは売る為だったのか。
「お前らうるさいぞ! 静かにしてろ!」
馬車の操縦席にいる御者が怒鳴り散らす、あいつが俺達を買った奴隷商人らしい。
(とりあえず、どうやって逃げるかを考えないとな。そうだ! 鑑定で相手の能力も見えるんだろうか? 試すか)
気づかれないかと若干びびりながら御者に鑑定を発動させる
モーリス 人族 38歳 男 レベル34
HP1460/1460 MP128/142
筋力:102
体力:88
敏捷:68
魔力:21
魔耐:43
【スキル】
剣術レベル3 体術レベル2 乗馬レベル3 操車レベル3 状態異常耐性レベル1 痛覚軽減レベル1 奴隷契約
(おっさんレベルたけぇー! でもレベルの割にステータスは大したことないな。スキルに奴隷契約があるからこいつが奴隷商人に間違いないな。あ……ま、まさか)
そんなことあっていいはずがないと思いながら猫耳の少女に鑑定をかける
フェリ 猫人族 14歳 女 レベル2 奴隷 所有者:モーリス(仮)
HP:92/92 MP16/16
筋力:17
体力:11
敏捷:22
魔力:4
魔耐:13
【スキル】
体術レベル1 飛脚 痛覚軽減レベル1 空腹耐性レベル2
(あのクソ野郎……。俺の猫耳少女の所有者だと……。許さん、断じて許さん! っていうことは俺もあのおっさんの奴隷ってことかよ)
卓矢がいろんな事に絶望している間にも馬車は走り、目的地が見えてくる。見える景色から、それなりに大きな町らしい。町の入り口っぽい所で兵士が検問をしていて、そこで渋滞が出来ている。しばらく待っていると、順番が回ってきたらしく兵士と奴隷商人が話している。
「止まれ! 通行証を…おぉ! モーリスさんでしたか!」
「お勤めご苦労様です」
「こちらこそ、いつも『クスワイゼ』にはお世話になっています。一応規則なので、通行証をお願いします」
(おっさんの顔はそこそこ広いみたいだな、兵士が奴隷商人になんの”お世話”になってるんだか)
「どうぞ、ご確認ください」
「はい! 確認できました。お気をつけてお帰りください」
難なく検問を突破した馬車はしばらく走った後に小奇麗な建物の前で止まる、何も知らなければ高級宝石店と言われても信じてしまうだろう。そこからゾロゾロと筋骨隆々の獣人の男達が出てきた。
「お前達! 中へ運んでおけ!」
(おいおい、なんだこのマッチョ獣人達は、うわっ! ちょっ)
男の獣人達は奴隷商人が持って帰ってきた”荷物どれい”を檻ごと担ぎ上げて店の中へ運んでいく。正面の綺麗なドアからでは無く、裏手にある無骨な鉄の扉を開けて奥へ進むと、外の煌びやかな外装からは考えられない程の小汚い通路を通り辿り着いた部屋は窓一つ無い薄暗く、鼻にツーンとくる臭いが充満している。そこには先住の奴隷達が同じ檻に入れられ並べられていて、今連れて来られた卓矢達も同じように並べられていく。
(うっへぇ、臭い……やばい吐きそう)
卓矢の檻は壁際に設置され、そこにお隣さんが運ばれてきた。
(神は俺を見捨てなかった! 神様ありがとう!)
隣に設置されたのは先ほどまで一緒に馬車の旅をしていたネコミミ少女ことラナだった。卓矢と同じく臭いにやれれたのか青い顔をしている。全員が運び込まれたら、卓矢達が入ってきた扉ではない、立派な扉の方からモーリスが現れた。
「今日からここがお前達の家だ! まぁ売れるまでの辛抱だ、精々いい主人に買われるように祈っていろ」
それだけ言ってモーリスは部屋から出て行った。
(はぁ……ほんとに奴隷になっちまったのか、どうしたらいいんだこれ。異世界に来たと思ったら狼に襲われて、助かったと思ったら売られて奴隷にか…………どんなハードモードだよ! やっぱり見捨てられてるわ! 神様この野郎! これはマジでいい人に買われるのを祈るしかないかもな。でも俺みたいな男を”いい人”を買うかと聞かれればNO! としか言えない。やばい詰んでる! もう脱獄、いや悪いことしてねぇし! 脱出するしかない! となれば一人じゃ厳しいだろうし協力者がいるな)
チラッ
(よしっ! とりあえず相棒は隣の猫耳少女しかいないな! まぁ隣の彼女しか物理的に居ないんだけどな。まぁなんにせよ声をかけてみるか、共犯者になってもらわないとだめなわけだしな)
「なぁ、君の名前何て言うの?」
(ナンパだな)
ビクッ
「ひっ……」
(めっちゃ怯えさせてしまった)
「急に声をかけてごめん。脅かすつもりはなかったんだ」
「…………」
「こんな状況だけど、折角隣同士になったわけだし自己紹介ぐらいはと思って。えと、俺はタクヤって言うんだ、君は?」
(まぁ鑑定で知ってるんだけども!)
「……フェリ」
「フェリか、いい名前だな。フェリはどうして奴隷になっちまったんだ?」
「……村が、冒険者に……襲われた。それで捕まった……」
(やっべぇ、いきなり地雷を踏み抜いた。というか――)
「なんで冒険者なんかに襲われたんだ?」
(冒険者っていうとやっぱ魔物を倒して金を稼いだりするあれだよな?)
「……? 獣人だから」
フェリは困惑していた、どうしてそんな当たり前の事を聞いてくるのか。それに、何故獣人の自分なんかに話しかけてくるのか、変わった人間もいるものだ。
「獣人だから? え? 何か悪い事をしたからとかじゃないの?」
「……獣人は、存在自体が悪だから。」
タクヤがどうゆうことだ? と考えていると、俺の二つ隣――フェリの横に設置された檻から声を掛けられる
「おい兄ちゃん、悪いこと言わねぇから獣人なんかと関わるな」
(なんだこいつ、俺がフェリと仲良くなるのが気に食わないから邪魔しようってか!)
「俺が誰と関わろうとあんたには関係ないだろ?」
「おいおい、獣人だぞ? そいつ」
「そんなもんこのプリティーな猫耳を見ればわかるわ!」
「ぷりてぃー? 何言ってんのかわかんねぇが、そいつも言ってただろ? 存在自体が悪なんだよそいつらは」
(存在が悪……? どうゆう事だ。何もしていないのに冒険者に村が襲われたって言うし、どうなってんだ)
「なぁおっちゃん、存在自体が悪ってのはどうゆう意味なんだ?」
「はぁ?! 常識だろ?! そんなこと」
(なんだと。常識なのか……あ、そうだ)
「実はな、奴隷になる前に魔物に襲われてな、それ以前の記憶が曖昧なんだよ。それで近くの村人に助けられたんだが、睡眠薬を盛られてな。それで気づいたら奴隷になってたんだよ。あ、なんか思い出したら腹立ってきた」
「兄ちゃん……苦労したんだな」
見ると檻の中でおっさんが鼻をすすっていた
(お前の同情なんていらねぇよ!)
「んで、その常識ってのを教えてくれないか?」
この世界での獣人の立場を聞かされてタクヤは絶句した。
要約すると、この世界には大まかに人族、獣人、エルフの三種族が存在しているらしい、そしてその人口比率が8:1:1とされているが、獣人とエルフは人族に見つからぬように隠れて住んでいる為、正確な数は分からないと言う。そして獣人は遥か昔に、罪を犯した人族が魔物と契を交わし混じり合い、魔法適正がほとんど無くなる代わりに強靭な肉体を手に入れ、当時まだ魔法技術が広まっていなかった人族を恐怖に陥れたらしい。
獣人の圧倒的な身体能力に押されて守りに徹する人族だったが、後に形勢は逆転する事となる。この世界に住むもう一種類であるエルフは精霊に愛される種族でもあった。彼らは空気中に漂う微精霊に『願う』事でその力を借り、魔法を顕現させる。今では一般的になった魔法だが、当時の人族はその力を求めてエルフ狩りを行った、魔法を駆使して人族を退けていたエルフ族だったが、いかんせん戦力の差が激しかった。圧倒的物量で責められたエルフは少なくない人数が人族に捕まり、研究の材料として命を落としていった。今はどこかの秘境に結界を張り、隠れて暮らしているらしい。
そして魔法という強力な武器を手にした人族に、獣人は穢れた悪しき存在として次々と狩られて、その数を減らしてゆき、今では人族から隠れ、怯えながらひっそりと暮らしているが、獣人はその身体能力と頑丈な肉体から、奴隷として取引される事が多くなった。奴隷の獣人に人権なんて物は無く、男は強制労働や、冒険者などが荷物持ちやモンスターを狩る際の囮などに使われるのが一般で、女でもかなりの身体能力があるので上記の使われ方をするが、金持ちの性処理道具や痛めつけて反応を楽しんだりし、飽きれば処分すると言うのが普通で、基本的には物以下の扱いらしい。
(なんだよ……それ)
「分かっただろ、これ以上ソレに関わるんなら俺にも関わるな、巻き添えはごめんだ」
「あぁ、助かったよ。感謝する、あんたには迷惑かけない」
「馬鹿が」
(想像以上にやばい世界だな、こんな愛らしい獣人を迫害するとか頭がおかしいとしか思えん! つーかここって俺の書いてた小説の世界じゃないのかよ! 俺がこんな世界考えるわけないだろ! っと、フェリを放置したままだった)
「まったく……フェリ達は何も悪いことしてないのに酷い話だな?」
「…………」
「あれ? フェリー?」
「……話、ちゃんと聞いてたの?」
「存在が悪って話か?」
「……ん」
「聞いてたけど、だから?」
「え? 獣人なんかに関わると碌なことに……」
「まぁまぁ、俺が構わないって思ってるんだからいいじゃん」
「……きっと後悔する」
「どうにかしてここから逃げられないかなー」
「……んぅ」
「むくれるなよー、いい案があれば一緒に逃がしてやるからさ!」
「……はぁ」
その後もタクヤが話題を振ってフェリが相槌を打つという会話? が続いてそれなりに時間が経過し、盛り上がっている? と女性が食事を持って部屋に入って来て檻の前に置いていく
(ここの従業員か?)
イライザ 人族 31歳 女 レベル4 奴隷 所有者:モーリス
HP:62/62 MP:25/25
筋力:8
体力:11
敏捷:9
魔力:10
魔耐:7
【スキル】
家事レベル5 算術レベル2 房中術レベル4 痛覚耐性レベル3
(おおう、意味深なスキルが二つあるな。どうやらここの従業員も奴隷らしいな、しかしなかなかの美人さんだ。あの野郎……毎晩彼女としっぽりしてやがるのか、しかもSMプレイでもしてやがるのか。チクショウ、悔しくなんてないし)
並べられた食事は水とパン一つにスープと野菜炒めの様な物だ、ここに来た時はおそらく昼過ぎ頃だったから晩飯だろう、思ったよりいい食事に腹が減っている事も相まって笑みが零れる
「食べ終えたら檻の外に食器を出しておいてください」
そう言ってイライザは部屋から出ていく、タクヤは檻から手を伸ばして食器を取りスープを口へ運ぶ
(お、結構いけるな。奴隷なんて残飯みたいなの食わされると思ってたから普通にうれしいな)
もりもり野菜炒めを食べながら横でちびちび食べているフェリへ視線を向けると、フェリはもう食事を終えたと言わんばかりに食器を檻の外に出そうとしていた
「ん、フェリ? 野菜炒めがほとんど残ってるぞ?」
少しだけ食べた後があるがほとんど残っている
「……これ嫌い」
「嫌いでも食べておいたほうがいいぞ? 腹が減ったら気分が滅入るし、なによりちゃんと栄養とらないと大きくなれないぞ?」
「…………どうせ、大きくなれない」
「そんな事言うな、ほら、俺のスープをやるから、その野菜炒めと交換してやる」
「いらない」
くぅ~
「うっ……」
くぅ~っとかわいいお腹の音がなってカァァっとフェリの顔が赤くなる
「ハハハッ、ほら、お腹は正直みたいだぞ?」
「……もらう」
おずおずとタクヤからスープを受け取ると、コクコクと喉を鳴らし飲み干してゆく。飲み終えたフェリのほっこりした顔を見てこっちもほっこりする
「あ、俺が一口飲んじまってたけど大丈夫だったか?」
「……だ、だいじょうぶ」
そういってお椀の底に残ったスープをズズズっと飲み干したフェリの顔はさっきよりほっこりしている気がした。
「ん……ありがと」
「おう、どういたしまして」
食事を終えて暫くするとイライザが食器を回収しに来た、その時フェリの檻の前にスープのお椀が二つ、タクヤの檻の前には野菜炒めのお皿が二つ置かれている事で、ん? っと小さく声を出していたが、気にする事無く回収して正面の扉から出て行った。
(腹も膨れたし、本格的にどうやってここから脱出するか考えないとな、って言ってもこの檻から出れない事にはどうしようもないな)
「なぁフェリ、どうやったらここから脱出できると思う?」
「……本気で言ってるの?」
「あたりまえだろ? 何としても売れる前に「無理だよ」――やってみなきゃわかんないだろ?」
彼女にしては強い口調で言い放つ
「無理、わかる」
「まぁたしかにこの檻は厄介だけど」
「檻だけじゃない、これ」
そう言ってフェリは着ているぼろぼろの服の襟を胸の辺りまで引っ張る
「っちょ! な、なにして! って、痣?」
「……奴隷紋。まだ仮登録」
「まじだ、俺にもある」
「……逃げれない。場所、ばれるから」
「まじか、消す方法はないのか?」
「……これをつけた人だけ」
(思ったよりやばい状況だった、檻は何とかできてもこの奴隷紋が問題か。これはまじでいい主人に買われるように祈るしかないのか……)
「……あなたは」
「うん?」
「……まだ可能性がある、いい主人に買われるかもしれない」
「ぐぅ、まじでそれしか無いのか、お互いそれを祈るしかないのか」
「……わたしは、ここに来た時点で『終わり』だから」
「え……? もしかしたらいい主人が、あっ……」
そこで思い出す、獣人がどうゆう扱いを受けているのかを。
(そうだ、獣人奴隷の扱いは……。クソッ! 俺は何をのんきな事を言ってたんだ。フェリがどんな気持ちでここに居るのかなんて、考えればすぐ分かったはずなのに)
「……だから、わたしにはもう関わらない方がいい」
「…………」
タクヤは何も言えなかった、掛ける言葉が見つからなかった。 腹が立つ 能天気な自分に腹が立つ
「……今日はもう寝る」
「あぁ……」
なんて無力なんだろう
心のどこかで、自分はこの世界の主人公なんじゃないかと思っていた。
どんな窮地に陥っても最終的には何とかなる、そんな風に考えていた。
でも現実は甘くは無かった
一人の少女を救うどころか、少女の気持ちを何一つ理解せずに、知らぬうちに心を傷つけて。
無責任に逃がしてやるなんて、あの時の自分をぶん殴りたい。
これまで生き延びれたのも運が良かったんだろう、その運もここで尽きたみたいだ。
(はぁ、これからどうなるんだろうな)
ついさっきまでは何とかして脱出してみせる! なんて思っていたのが嘘のように絶望に塗りつぶされる。自分がこの先どうなるのかが全く予想できず、とたんに恐怖が押し寄せてくる。
(クソッ、クソッ、怖えーよ……。でも、諦めないぞ俺は)
「スゥ~、はぁー。明日フェリに謝らないとな、何ができるかでもないけどな。さて、俺も寝るか」
何があっても諦めないと決意し、明日の為にも寝ようとする
(床硬いなぁ、これ寝れるかな)
いいポジションは無いかと寝返りを打っていると、コトンッと胸ポケットから何かが転げ落ちる
「あ、この石取り上げられてなかったのか」
ここに来た時に見つけた川で拾った綺麗な石だった、結局宝石かどうかわからなかったな。
「なんかこの石は不思議な感じがするんだよなー。もしかして今までお前が守ってくれてたのか? んなわけない――」
ポォ
石に話しかけていると、突然石が淡い光に包まれた
「んな!? ちょ! え? どうすんだこれ」
グンッと急に体がだるくなる
(なん、だ? 急に体がだるく、何かが抜けていくような。そ、そうだ! 【ステータス】!)
コガシ タクヤ 人族 27歳 男 レベル8
HP:935/935 MP:1472/3284
筋力:118
体力:109
敏捷:101
魔力:271
魔耐:98
【スキル】
鑑定レベル3 体術レベル3 状態異常耐性レベル1 痛覚耐性レベル2
【ユニークスキル】
連理之契
【称号】
転移者 ????
(めちゃくちゃMP消費してる! え? この石に吸われてるのか?)
石はドクン、ドクンと脈動するように光る
(や、やば。す、【ステータス】)
コガシ タクヤ 人族 27歳 男 レベル8
HP:935/935 MP:229/3284
筋力:118
体力:109
敏捷:101
魔力:271
魔耐:98
【スキル】
鑑定レベル3 体術レベル3 状態異常耐性レベル1 痛覚軽減レベル2
【ユニークスキル】
連理之契
【称号】
転移者 ????
(もうMPが、くっ、だ、めだ……)
MPが枯渇してタクヤの意識が薄れていく中、声が聞こえた気がした
『やっと―――――――』
毎回意識失う主人公ェ。