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異世界で綴る物語  作者: 漬物王子
2/5

2話

小説ってむずかしい。

語り部の部分がよくわかりゃん^q^


ガルゥァ!!


「やばいやばいやばいやばい、まじでやばい」


 目の前にいるのは体長3mはあるであろう巨大狼に卓矢は腰を抜かした。


「何なんだよこいつ……。いきなりこんなのアリかよ!」


 狼はこちらの様子を伺いつつジリジリと近寄ってくる。腹を空かせているのか口からは大量の唾液が垂れていて、その口に見える巨大な犬歯で噛まれたら致命傷は免れないだろう。


(や、やばい……逃げないと)


 卓矢は震える足に気合で力を込め立ち上がった。背中を向けて走ると、獣は本能で追いかけて来るだろうと思い、ゆっくりと正面を向いたまま後ずさりするが、狼はそれを許さなかった。こちらが後ろに下がるのに合わせるように、少しずつ近づいてくる。


(――ッ! こいつ!)


 卓矢と狼の距離はどんどん縮まってゆき、両者の距離は約8m。そしてそれは既に狼の間合いでもあった。


グゥゥゥ グルァァァ!!


 狼はその強靭な跳躍力で一気に間合いを詰め、前足の鋭い爪で切り裂く


「は、はやッ……」


 一瞬で間合いを詰められ、眼前に自らの命を刈り取らんとする狼の爪が迫る。卓矢は咄嗟に横に飛び、間一髪でそれを回避した。


(ああぁ、死にたくない! こんな所で死にたくない!!)


 怖い、怖い、怖い。 卓矢は木々を躱しつつがむしゃらに走った。後ろは恐ろしくて確認できないが、確実に追って来ている。


「はぁ、くっ!! こんなところで死んでたまるかあああ!」


ベギィッ


(え……? あぁ)


ズシャァァァァ


「あぐぁあああああああ」


>スキル『痛覚耐性』を取得しました。

>スキル『痛覚耐性』のレベルが2に上がりました

>スキル『状態異常耐性』を取得しました


 自動車に撥ねられたような痛みが卓矢を襲う。普通の人間の足で狼から逃げられるはずもなかった。狼の前足で薙ぎ払われ、右腕はあらぬ方向へ曲がり、吹き飛んで地面にスライドしたせいで皮膚はずたぼろになっていた。


「うぐっ、がはっ。これはもう……まじで詰んだかな」


 虫の息の獲物に狼が近づく。


(だめだ……痛みも感じ無くなってきた)

「くそぉ、折角異世界にこれたってのに、こんな終わり方あんまりだろ。どっかで神様とか女神様が見てるなら助けてくれよ」


 狼が獲物に止めを刺そうと、その顎を大きく開ける。


(はぁ……くそが…………胸の辺りが温かい、なんだ?)


 突然体がぬるま湯につかったような感覚に覆われる。そして胸ポケットから微かに光が漏れている。


「なんだ……これ」


グルゥゥゥ ガウァ! ガウァ!


「襲って来ない……?」


(ッ! だめだ……意識が)


 そこで卓矢の意識は暗転した。






※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※







「うぅ、ん……ここは……? はっ! 狼は、あがっ……いってぇ!」


 起き上がろうとすると、体中に激痛が走った。たしか狼に襲われて、かなりの怪我をしていたはずだ。


「助かったのか……?」


 周りを見渡すと、価値はよくわからないが高そう?な調度品が飾られており、それなりに裕福な家なのだということがわかる。遠くの方から生活音が聞こえるので人は居るみたいだ。


「助けてもらったみたいだし、礼を言わないとな。すみませーん、誰かいますか」


 こちらに向かって小走りで向かってくる音が聞こえる


「あら、目が覚めたのね! よかったわ、ひどい怪我だったから心配だったのよ」


 現れたのは、見た感じ40~50ぐらいのふくよかな女性だ。


「あの、助けてもらってありがとうございます。本当にありがとうございます」

「3日も目が覚めなかったのよー? いきなり血だらけのあなたが担ぎ込まれて来たからびっくりしたわー。でも無事でよかったわねー! あ、ちょっとまってね! あなたー!彼が目を覚ましたわよー!」

(俺は3日も寝てたのか。よく生きてたもんだ)

「お、やっと目覚めたのか、気分はどうだ?」


 女性の旦那さんらしい人は見た感じ50台後半はいってそうで、優しそうな雰囲気の人だ。


「体中まだ痛いですが、それ以外は悪くないです。あの、助けていただいてありがとうございます」

「元気そうで何よりだ。私はこの村の村長をしているユージンだ。そしてこっちが妻のサラだ」


(苗字はややこしくなりそうだし、言わない方がいいか)

「ユージンさんにサラさんですね。俺は卓矢といいます」

「タクヤ君か、それで聞きたいんだが、たまたま村の狩人ハンターが狩りの最中に血だけで倒れているタクヤ君を見つけてね、それでこの村に連れて帰ってきたんだが、どうして一人であの森に居たんだい?」

「それは……」

(まさか異世界から来ましたーなんて言っても信じてもらえるわけないしな。ここはあの手を使うしかないか……)


「狼のような魔物に襲われた事は覚えてるんですが、それ以前の事が思い出せなくて」 

「まぁ、余程怖かったのね、かわいそうに」

「だが命が助かっただけでも幸運と言えるだろう。ショックでの一時的な記憶喪失かもしれない、時間がたてば思い出すんじゃないか? あまり大きな村じゃないからね、この村の住民で無いことは確かだよ」

「そうですか……」

「まぁこれも何かの縁だ、体調が良くなるまで暫く家に居るといい」

「そうね!それがいいわ!」

「すみません、お言葉に甘えさせて頂いていいですか」

「あぁ、かまわないよ。これでもこの村の村長なんだ、それなりに余裕はあるからね」

「ありがとうございます! 俺にできる事ならなんでも手伝いますので、遠慮なく言ってください!」

「まぁ!頼りになるわー! 今日はもう遅いから、明日からお願いね。あ!でもまだ無理しちゃだめよ!暫くはゆっくりしてなさい」

「はい、お気遣いありがとうございます」

「もう少ししたら夕食を持ってきてあげるからゆっくりしてなさい。じゃあまた後でね」


 一人になった卓矢は安堵のため息をつく。定番の記憶喪失なんて言ってしまったがなんとかなるものだ。3日間も寝たきりだったので少し動きたいが、まだ体が痛いので大人しくすることにする。だが不思議な事に、かなりの重症だったはずなのだが、骨はくっついている気がするし、爪でやられたであろう傷も、古傷のような跡があるだけでほぼ塞がってしまっている。この世界に来てなにか体に変化があったんだろうか?まぁ異世界転移なんて非常識な事が起こったんだ、もしかすると自分にもいわゆるチート能力があるんじゃないかとわくわくしてしまうのは仕方ない事なのである、仕方ない事なのである。


「そうだ!もしかして……【ステータス】!」


コガシ タクヤ 人族 27歳 男 レベル8

HP:935/935 MP:3284/3284

筋力:118

体力:109

敏捷:101

魔力:271

魔耐:98

【スキル】

 鑑定レベル1 体術レベル3 状態異常耐性レベル1(NEW) 痛覚耐性レベル2(NEW)

【ユニークスキル】

 連理之契(れんりのちぎり)

【称号】

 転移者 ????


「うおっ! ほんとに出た……こんな風に見えるのか。なんか魔力とMPだけやたら高いな、俺は魔法系なのか?でも使える魔法はないけどな! 他は平均なのかな?よくわからん。体術は前に空手をしてたから高いのか? 状態異常耐性と痛覚耐性は新しく覚えたって事か? そういえばあの狼に吹き飛ばされた時なにか声が聞こえたような気がしたけど、まぁそのうちわかるだろ。そして定番のチートスキル鑑定!さっそくこの意味深な称号????を鑑定してみるか」


 『鑑定不可』


「むぅ、まぁ鑑定レベル1だしな。んじゃ転移者はどうだ?」


 『転移者:異世界からこの世界へ転移した者 言語翻訳 LvUP時のステータス上昇率が増加 スキルの取得難易度緩和』


「おぉ!? これはなかなかすごいんじゃないのか? まぁどのぐらい上昇してるのかがわからないから何とも言えないけど。次はこのユニークスキルだな」


 『連理之契:深い絆で結ばれた者同士のステータスを上乗せする この絆で結ばれた者達は、お互いが思い合う限り何者も干渉する事は出来ない』


「ずいぶん独り身に厳しいスキルだな……。まぁその内役に立つと思いたい! 切実に」


 夕食までまだしばらく時間がありそうなので、その辺にある家具やら調度品に手あたり次第に鑑定していく。いくつか鑑定していると抑揚の無い声が頭の中に響き、スキルレベルが上がった事を告げてくれた。


「2回レベルが上がったみたいだし今は3レベのはずだよな、この部屋にある物はだいたい鑑定したしちょっと確認してみるか」


コガシ タクヤ 人族 27歳 男 レベル8

HP:635/635 MP:3252/3284

筋力:118

体力:109

敏捷:101

魔力:271

魔耐:98

【スキル】

鑑定レベル3 体術レベル3 痛覚耐性レベル2

【ユニークスキル】

連理之契(れんりのちぎり)

【称号】

転移者 ????


「あれ、MPが減ってる。まさか鑑定ってMP使うのか?! まぁあんまり減ってないからそんなに問題はないか。こんな短時間にスキルってレベルがあがるもんなのか? 転移者の効果が大きいのかな? もっかいアレを鑑定してみるかー」


『※※※※※※:※※※※ア※※※る※※※※※※※ 自※※※※※※※以※※※理、魔※、※※※※※干※※※※※する、※※※属※、※※、※※※※※支※※、ス※※※※、※※※※※大※※』


「おお?少しだけ見えるようになったけど、まだ全くわからないな。まぁその内わかるだろ」


 コンコン


「どうぞー」

「夕食を持ってきたわよー、まだ体が本調子じゃないだろうからおかゆにしたからね、胃がびっくりしちゃうからゆっくり食べるのよ?」


 出てきたのおかゆは、具がない麦粥っぽい感じのものだった


「すみません、いただきます。ふーふー、あっつつ。んぐ、おいしい……」


 実に3日ぶりの食事だ。薄味だが、噛めば麦の風味が口に広がり、妙な苦みもあったがほんのり甘味もあって結構おいしかった。体が栄養を求めていたのか3杯もおかわりしてしまい、サラさんも『それだけ食欲があれば大丈夫ね』と苦笑いしていた。空いたお椀を下げてもらい、また一人になってふと考える。自分はこれからどうするんだろうか、この異世界で生きていけるんだろうか。ずっとここで世話になるわけにはいかないし、何か仕事を見つけてお金を稼がないとだめだろう。


「やっぱ定番の冒険者かなぁ。でも正直戦える気がしないんだよな、またあの狼みたいなのに出くわしたら次こそお終いだ。この世界の事をもっと知らないとな。それと……」


 気になる事があった、狼に襲われて絶体絶命だった。村の狩人の人が血だらけで倒れてる俺を助けてくれたらしいけど、その場に狼は居なかったみたいだ。


「そうだ、あの時胸の辺りが淡く輝いて、温かい光に包まれたんだ。」


 意識が朦朧としてたのであまり覚えてはいないが、たしかにあの時光に包まれて、狼が襲ってこなくなった。


「たしかこの辺りが光って……ん?何か入ってる。これは……石? あぁ、あの川で拾った石か! これが俺を助けてくれたのか? …………んなわけないか。ん、ふぁ~~」


 体が疲れているからだろうか、急に強烈な眠気が襲ってきた。


(あーだめだ、眠い。目が開けられない……また明日考えよう……)


 強烈な睡魔が卓矢を襲い、耐え切れずに目をしかめる。意識を手放す間際にうっすらと開いた視界に、少しだけ開いたドアから覗いている誰かが見えた気がした

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