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第98話 種族の垣根を超えて


 プレアデス甲板、ティナは倒れる吸血鬼の前へ立っていた。

 空から降る光が明るく照らし、少し強めの風が髪の間を吹き抜ける。


「殺しなさいよ......その剣で。私にはもう、生きる意味も資格も無いんだから」


 プレアデスの足音と、ほんの少しの風音が駆ける。両手の剣を置いたティナは、エルミナに怒気をこもらせながら言った。


「あなたはまだ死んじゃいけない、多くの人間がこの計画に巻き込まれた。その罪を償わなければならない」


「なに言ってんのよ......、償うったってどうや――――わぶっ!?」


 言い終わる前に、ティナはスカートのポケットに入れていた回復ポーションをエルミナにぶっかけた。

 戦闘で負った傷がみるみる癒え、彼女の受けたダメージがほぼリセットされる。


「なに......してんのよ! 私よりあんたの方がボロボロじゃない! 分かってるの!? 私なら死んだって、誰も悲しまな――ッ!?」


 胸ぐらを捕まれ、目の前の騎士にエルミナは頬をひっぱたかれた。何が起きたか分からず呆然とする彼女にティナは叫ぶ。


「いい加減にしなさい! 少しは周りを見たらどうなの!? あなたが死んで悲しむ者はちゃんといるじゃない!!」


 ティナが指指した方向に首を向けると、ミーシャ、ルノ、クロエにフィリア、そして"アルミナ"をおぶったヘルメスが立っていた。


「お姉ちゃんを置いて逃げる気? 家族に先立たれて悲しくないわけないじゃない、それにアルミナだけじゃない、あなたに死なれたら私だって悲しい」


 想定外の答えに、エルミナは思わず身を起こした。


「悲しむってあんた......、私はひどいことばかりしたじゃない! そんなの嘘よ!!」


「嘘じゃない! お互いに本気でぶつかり合ったからこそ、私はエルミナの本心が知れた! 人間は、そうすることでも分かり合ってきた!」


 崩れていく、エルミナは、自身の心に築いた灰色の城壁が崩れ去るのを胸の奥で感じた。


「ふっぐ......エグッ、うう......」


 涙が溢れ出る、閉ざされていた心に入ったそれはまるで希望の光。無意識に、エルミナはティナの胸で大泣きしていた。

 グチャグチャになった想いを、まるで吐き出すように――――。


――――ガゴォンッ――――。


 だが突如響いた金属音は、そんな泣き声を一蹴した。

 見上げれば、プレアデス上部に設置された『爆裂魔法発射機』が稼働していたのだ。


「まさかっ......、ヒューモラス!!」


 ヘルメスが戦慄する。


「グスッ、あれが発射されたら、ここだってひとたまりもない......。早く逃げないと、......ティナ?」


 エルミナは、抱きしめていた少女の異変に気付く。

 ティナの意識が無かったのだ。


「ティナ!!」


 クロエ達が駆け寄る。

 だが無慈悲にも、頭上の爆裂魔法はその発射準備を完了、今まさに放たれようとしていた。


「全員その場に伏せろ!!」


 せめてもの防御、やらないよりマシの行動。

 火球が辺りを照らした瞬間、大きな爆発音と揺れが襲った。しかしそれは、爆裂魔法の発射ではなく、プレアデス内部で起きた人為的な爆発。


『こちらアミアン一等騎曹! 魔甲障壁発生装置の破壊に成功!! 繰り返す! 破壊に成功だ!! 全火器、全魔法はこれで通じる! 王国軍本隊に通達、石器時代に戻してやれッ!!!』


いよいよ最終です、あと少しだけ、お付き合い頂ければ幸いです。

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