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第97話 蒼国のクロムウェル


 ――プレアデス甲板。

 遺跡のような建造物で飾られたそこで、ティナとエルミナは一心不乱の攻防を繰り広げていた。


「滅軍戦技――――『ブラッディメテオ』!!!」


 極大の一撃に薙ぎ払われる甲板、瓦礫まみれの床を蹴り、ティナもまた二刀流の連撃を雨にように浴びせる。

 まさに一進一退、血界魔装を使うエルミナにほぼ互角の戦いを展開していたのだ。


「だあああぁぁぁぁぁッッ!!!」


 負けられない、信念と信念のぶつかり合い。ティナもまた守るために剣を振る。

 瞬く剣撃は意地を燃料に猛攻を繰り出す、もう少し、もう少しでガードを突破できる。


「ハアアッッ!!」


 二本の剣を振り下ろす、エルミナはその両手で防ぐが、状況はティナが圧倒的に優勢。

 いける、やれる! 確信の下に叩き付けた一撃は、しかし思わぬ邪魔によって中断させられた。


「ッッ!!?」


 全身を襲う激痛、ロンドニアで受けたダメージが、激しい戦闘行動によってぶり返してしまったのだ。

 ――あと少し......、あと少しだけ動いて!


「この......ッ、一兵卒如きがあああッッ!!」


 装甲板もひしゃげる魔装を付与した膝蹴りが、ティナの腹部を叩き潰した。


「あッがッッ!!?」


 吐き出した血が地面に咲き、視界が暗くなる。

 トドメと言わんばかりに、エルミナはその胸ぐらを掴むと、何が記されているかも不明な石碑にティナを思い切り叩き付けた。


「かはっ......」


 幾何学な文字がヒビに覆われ、石碑の一部がガラガラと崩れ落ちる。


「ハアっ......ハアっ、所詮ただの人間が、王の力に勝てるわけが無いのよ。ティナ・クロムウェル......か、名前だけは覚えておくわ」


 魔力も限界に差し掛かったエルミナが、動かなくなったティナにそう言い残し、その場を去ろうとした時だった。


――ピリッ――


「......えっ!?」


 静電気がエルミナの頬を触った。

 まさかと思い振り返ると、剣を杖代わりに立ち上がるティナがいた。


「......私は、我が国の平和と独立を守る、王国軍の使命を自覚し」


 それは宣誓の言葉。


「ストラスフィア王国憲法と法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し――」


 ありえないと叫ぶエルミナ。そんな彼女に、ティナは決意に満ちた碧眼を向けた。


「強い責任感をもつて、専心職務の遂行に当たり......、事に臨んでは危険を顧みず」


 周囲に電気にも似た魔力が走る、ティナは再び両手に剣を携えた。


「もつて......国民の負託に答えることを――――ここに誓います!」


 莫大な魔力の柱が昇る、それは信念と血の力、ドラゴンを彷彿とさせる力の中心で、ティナはそれを纏っていた。

 雷をほとばしらせ、意思の力に満ちた一人の少女。


――『血界魔装・ドラゴニア』


「なんで......お前がそれを!? なぜ一騎士のお前が、王の力である『血界魔装』を纏っている!!」


 憤怒するエルミナ、だが次の瞬間に彼女は捉えきれない攻撃をぶつけられた。


「がッッ!?」


 イナズマが如き剣舞、一発に見えたそれは連撃だった。


「私が騎士になった理由は、大切な家族や友達、街を奪わせない為! 絶対に、お前なんかに滅ばさせやしない!!」


 魔力を解き放ち、ティナは叫んだ。


「私は蒼国を守る騎士! ティナ・クロムウェルだ!! あなたの正義は、私が倒す!!」


「国家のあやつり人形めッ!! 国の前に、まず貴様を消してやる!!」


 エルミナは残った全魔力を右腕に込めた。全力で、これまでにない本気の一発。


「滅軍戦技――『ブラッディメテオ』!!!」


 彗星に等しい魔法がティナへ向かう。

 赤黒く常識外れな魔法攻撃を、ティナは正面から迎え撃った。


「滅軍戦技――――『サンダーノヴァ』!!!」


 赤色の隕石を、光のイカズチが木っ端微塵に四散させた。

 エルミナはバカげた魔力の渦に揉まれながら悟る。自身の敗北を、理想の失敗を、己が死を――――。


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