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第96話 正義対正義


「なんなんですかそれはあ!!! なぜ武器も魔法も無しにここまで強い!? おのれッッ、おのれおのれおのれええええ!!!!!」


 ヒューモラスは激昂していた。

 武器を砕き、致死傷を与えた筈の少女が繰り出す攻撃に圧倒されていたからだ。


 展開した魔法障壁がことごとく破壊され、ハンマーよりも重い拳にジリジリと追い詰められていた。


「ヘルメス!! このガキを切り捨てなさい!!!!」


 洗脳下のヘルメスを呼び、掩護を命じる。

いくら調子に乗っていようと、背後から斬られればどうしようまあるまい。

 だがそんな希望は、割って入った銀髪の少女によって遮られた。


「クロエさんの邪魔は許しません! 騎士の誇りにかけて絶対に!!」


「こッッの魔導師モドキがああ!! なぜ貴様らはいつも邪魔だてする! 10年前もそうだ! 最後の最後に拉致できた王女を奪い返しおってからにぃ!!!」


 血管が浮き出るヒューモラスを前に、クロエは叫んだ。


「フィリア!! 私がチャンスを作る! お兄さんの目を覚まさせて!!!」


「でっ、でもどうすれば!?」


「想いを......! フィリアの全てを叩き付けてやるんだ!!!」


 瞬間、クロエの瞳はこれまでの比じゃない輝きを放った。

 美しい紫色の光が彼女の右手を包み、『マジックブレイカー』が発動されようとしていた。


 そして、フィリアもまた《七五式突撃魔法杖》に魔力を込める。

 正面には剣を向ける兄の姿。尊敬と嫉妬の対象であり、大事な家族。


 軍に入った当初の劣等感を思い出す。絶対的な目標、圧倒的な憧れを胸に、フィリアもまた杖を輝せた。


「くたばれガキがああああああッッ!!!」


 ヒューモラスは100枚の魔法陣を腕に掛け、クロエへ殴りかかった。


「父さんと母さんの無念――――今晴らす!!!」


 閃光が走る。

 クロエの拳はヒューモラスの魔法陣を全て打ち砕き、その顔面へ全身全霊の一撃を打ち込んだ。


「がっ!! ......バカ、な!!?」


 ヒューモラスとヘルメスを繋いでいた糸が、マジックブレイカーによって断ち切られる。


「フィリア!! 今ッ!!!」


「はい!! 『レイドブラスト』!!」


 叫ぶのは最後の咆哮、命を込めたフィリアの魔爆発法を、ヘルメスが切り刻むと同時に爆発が舞う。


 床を思い切り蹴り、煙の中へ突っ込んだフィリアは杖を捨て去った。


「お兄ちゃんの――――バカアアアアアアアァァァァァァッッ!!!!!」


 渾身の右ストレートがヘルメスの端正な顔に炸裂し、ヘルメスはその意識を吹っ飛ばされた。


◇ ◇ ◇


「ミーシャ! 合わせて!!!」


「了解ッッ!!!」


 豪炎と風が合わさったそれを、ミーシャとルノは吸血鬼へ向けた。


「ここで負けるわけにはいかないんだ! 騎士如きが勝てると思うなあ!!!」


 氷槍が咆える。


「滅軍戦技――『グングニル』!!!」


 音速を超えて投じられるそれは、アルミナの全魔力を捧げた本気の一撃。

 しかし、その冷たき槍は二人の騎士の信念によって呆気なく粉砕された。


「「『ウインド・エクスプロージョン』!!!!」」


 特大の火炎と暴風が一直線に発射され、魔装に覆われたアルミナを直撃。

 洗われる世界を前に、彼女は炎の中で願った。自らが叶わなかったエルミナの勝利を――――。


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