第91 エルミナ・ロード・エーデルワイス
古代兵器プレアデスに乗り込んだ第三遊撃小隊は、今向かってくるファントムに対し、無双に等しい戦闘を展開していた。
「三時の方向! フィリア!!」
「了解です! 穿て!『レイドブラスト』!!!」
爆炎に舞うは流麗な少女達、蒼空を模した制服が戦場を飾り、《ストラトアード》が瞬いた数だけ影が四散する。
「目指すは階段! こんな雑兵で――止められると思うなあ!!!」
地獄の業火が暗き影を照らす。同時に巻き上げられた風は、暴れ馬のような炎を力の限り引きずり回した。
黒煙が遺跡を彷彿とさせる機上に満ち、ファントムは一瞬とはいえ攻撃目標を見失ってしまう。
「ティナは返してもらう! 五人一緒に帰るんだッ!!」
漆黒の黒髪をなびかせ、紫の閃光が走り回った。
近接戦闘術は『マジックブレイカー』と合わせ技にし、美しくも凶暴な連撃を叩き込む。
甲板上を埋め尽くしていたファントムは激減、たった四人の少女達によって駆逐されていった。
友達を助けるついでに国も救う。守るべきものを背後に持ち、取り戻すと決めた者がいる彼女達を止めることは、戦艦を座礁させるよりも困難を極めた。
「『ブラッディーノヴァ』!!!」
兵器内へ繋がる階段の手前、迫りつつあった三遊を止めたのは、真下から突き上げた火山が如き吸血鬼の一撃。
間一髪避けきったところで、膨大な魔力を両腕に宿したそれは現れた。
「まただ......またお前らは、お前ら人間は私の理想を邪魔してくる! これ以上は進ませない!!!」
桃色の髪を揺らし、エルミナ・ロード・エーデルワイスは眼前の敵に立ちはだかる。
理想を、夢を叶えるため、彼女もまた信念を貫き通すのだ。
「ここは私達の国だ!! 何人たりとも不可侵であり、貴様らに壊させはしない!!! 誰も迫害されない自由の国なんだ!!」
故に叫ぶ、この場に悪などいない。お互いがお互いの国を守るための、正義と正義のぶつかり合い。
眼前の侵略者めがけ、ありったけの魔力と共にこぶしを突き出す――。
「っさせるかああああああああッッ!!!!!」
激震が走る。爆裂魔法に匹敵するエルミナの拳を止めたのは、二本の剣を携えた金髪碧眼の少女。
「バカなッ!? なんであんたがここに......!!」
「帰る場所を守るのは私達騎士の責務! 牢屋で寝てる訳には――――いかないのよッ!!!」
王国軍第三遊撃小隊隊長、ティナ・クロムウェル。
救出された彼女は二人の騎士から《ストラトアード》を預かり、ボロボロながらも威厳をもった蒼国の騎士が証を纏っていた。
「「「「ティナ!!!」」」」
四人が叫ぶ。
同時に、通信用魔道具から男性の声が響く。
『こちらオライオン01基、アミアン一等騎曹、潜入に成功した我々はこれより魔甲障壁発生装置の破壊に向かう。第三遊撃小隊はプラエドル構成員の撃滅に専念されたい!』
戦争は終局へ向かう。想いと想い、信念と信念が衝突し、その命は最も輝きを強くする。
新作【神? それは殲滅すべき悪の権化です】の連載を始めましたので、そちらも是非。