第88話 開戦
「あなた達は......?」
ティナは、予期せずして現れた二人の王国軍騎士に戸惑いの色を見せていた。
「俺たちは王国軍特別強襲部隊......、って言いたいところだけど、ただのしがない一偵察兵だよ」
「っかー! アミアン一曹は相変わらずセンスありませんね。普通囚われの少女を見たら、俺が助けてやるーって言うのが王道でしょうに」
「知るかんなもん」
一風変わってはいるものの、王国軍騎士であることに違いは無かった。
「救援感謝します、私は王国軍即応遊撃連隊 第三遊撃小隊のティナ•クロムウェル騎士長です。あなた方が居るということは、遂にプラエドルの根城を発見したんですね!?」
自身が囚われていた場所に王国軍が居る。それすなわち、アジトが発見された証左であった。
「確かに発見出来たっちゃー出来たんだが......」
目を逸らすアミアン。
「うーむ......この場合どう説明すれば良いんでしょう。クロムウェルさんでしたね? この時折来る地響きが何だか分かりますか?」
エラン三曹がクイズを出題するように言った。
当然、先程まで気を失っていたティナに分かる筈も無く、数十秒が経過した辺りで答えが示された。
「今動いてるんですよねー、このアジト」
「へっ?」
久しぶりに出たマヌケな声。船かとも思ったが、よーく聞いてみると巨大な足音のようにも思える。
「想像の通りだ、今俺たちは巨大な自走する建築物......いや、兵器の中に居る」
「兵器......? じゃあこれって一体どこに向かってるの!?」
一瞬の間を置いて、アミアン一曹は答える。
「現状だと断定出来ない、魔甲障壁に邪魔されて通信機も使えないからな。だけど、一つ確かなのは――」
次の瞬間、一際大きな衝撃音が連続して響き渡った。
恐ろしい速度の物体が、とてつもなく硬い何かにぶつかる......そんな激しい音だった。
「やっぱ始まりましたねー、推測通りですよ!」
「どういう......ことですか?」
ティナにはまるで分からなかったが、アミアン一曹が放った次の言葉で理解し、同時に絶句した。
「この兵器は今......、王都アルテマに向かってると見て間違いない。さっきの音は、それを阻止すべく展開した王国軍本隊による攻撃だ!」