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第71話 宣戦布告


「やっと着いたわねロンドニア、こうして見るとあの時計塔って結構大きいじゃない」


 列車を一番に降りたミーシャが、背伸びしながら中心部に建つ街のシンボルを眺めた。

 王都から南へ列車で半日、月昇る深夜に出発したティナ達第三遊撃小隊は、今ようやく目的地へ到着したのだ。


「どうしてこう観光じゃなくて仕事ばっかりなんだか......、たまには街をゆっくり見て周りたいよ」


 どこか眠そうにまぶたを擦りながら、ノロノロと歩くクロエ。


「まあまあクロエさん、ロンドニア駐屯地の部隊が遠征で居なくなる間の市街警備なので、休憩時くらいに見回れるかと思いますよ」


「フィリアのお兄さんも今ロンドニアに居るんだっけ? 後で会いに行ったら?」


 駅を出ると、閑散とした道の先に聖導の教会が映った。街を覆う曇天も相まってか静けさが強調されている。


「そうですね、私も休憩の時に行ってきます。それにしても......」


 フィリアが駅前を飾る噴水広場を見渡した。


「この街、活気が王都やアクエリアスと比べて少ないような......。人気が無くて大通りも寂しいですし」


 ロンドニアは経済や工業が元来活発な街で、通常もっと賑わっていてもおかしくないのだ。

 それが、田舎町にでも来たような感覚に陥る程人の数が少ない。


「ここ最近、浸透してくる敵対生物が多過ぎて軍の対処が追い付いてないらしいよ。この街は王都より前線に近いから......その影響かもね」


ルノはやけに低い雲を見上げた。


「まあ言ってても始まんないしさ、とりあえず駐屯地に行こう。向こうの人と詳細を詰めなきゃだし」


 ポニーテールに纏めた青髪が風に揺れる。

 ティナも同意し空っぽの大通りを歩き始めた時だった。


「その話、別に今しなくても良いんじゃない?」


 掛けられた声は幼びた、それでいて覇気のある声。

 長らく聞いていなかった......いや、できればもう二度と聞きたくなかった者の。


「誰か!!」


 ミーシャは誰可(すいか)すると同時に、聖導教会の屋根上から見下ろす二つの存在を捉えた。


「無意味な殺傷は摂理を乱す、だがこと目的達成の手段としてこれ以上確実な方法は無い。理想到達の壁は粉砕しなければならない」


 片方は水色のショートヘアを手で触り、氷のように冷たく淡々とした堅い口調の少女。そしてもう片方......。


「だから言ったでしょ? 水上列車の時にあの騎士を殺しておけば厄介にならないって。挙げ句ファントムの秘密までバラされちゃって」


 桃色の髪を細い腰まで伸ばした、緋色の瞳を持つ小柄な少女。華奢(きゃしゃ)な外見からは想像出来ない強さを味わったティナは、一目で彼女を思い出す。


「エルミナ......っ!!」


「私の名前覚えててくれたんだ、記憶力良いのね。ちなみにこっちは姉のアルミナ」


 水色の髪と同色の目をつむり、アルミナは軽くお辞儀をした。


「プラエドルッ......!」


 クロエが勢いよく抜剣し、今にも斬り掛かりそうな様子を見せる。


「そっちに戦う意思があって良かった、今日来たのは他でも無いあなた達の為なんだから」


「ーーどういう......こと?」


 ティナの額に嫌な汗が伝う。

 曇天(どんてん)がさらに深く染まり、ザッと雨が降りだす。双方が水に濡れる中、笑みを浮かべたエルミナが剣を抜いた。


「第三遊撃小隊の殲滅」


 そびえ立つ時計塔に稲妻が落下し、吸血鬼の目はその瞬間恐ろしげに光った。


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