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第51話 侵入者


 ーー第三遊撃小隊居室


「暑い~、ルノもっと強くしてー」


 涼みに行ったクロエを除く三遊メンバーは、部屋の中で熱帯夜とも言うべき暑さに悶え苦しんでいた。

 事務室や幹部のいる部屋と違って、通常の居室に冷房用魔道具は設置されていない。それ故、真夏はひどい暑さで悩まされることになるのだ。


 しかし、三遊には風属性魔法を使うルノがいた。

 それが幸か不幸か、彼女は現在進行形で魔道具代わりにコキ使われている。


「これさ......皆は涼しいと思うけど、私は魔力を使うわ暑いわで結構重労働なんだけど」


 手の平から風を供給し続けるルノが、悠々自適に過ごすティナ、フィリア、ミーシャの三人に抗議した。

 彼女も一応副隊長である。速やかな待遇の改善を要求した。


「ゴメンゴメン、じゃあ次は三人でルノに団扇を扇いであげるから。後一分で良いからお願いします!」


 両手を合わせて懇願するティナ。

 人柄だろうか、ルノは押し出す風の出力を上げながら「良いですよ」とそれを承諾した。


「そういえば、クロエさん随分遅いですね。何かあったのでしょうか......」


「うーん、クロエに限って脱冊は無いだろうし、お手洗いでも行ってるんじゃないかしら」


 他愛の無い会話が続く。

 だが、その何気ない空気を蹴り飛ばすようにしてクロエが部屋に入った、っというより飛び込んできた。


「うわああああ!!! だれか......誰か痛あッ!?」


 しかも、本棚に足の小指をぶつけて盛大に転倒し、その場で悶絶している。


「どうしたのよ騒々しい、あんまり大声出すと当直の一曹に怒られるわよ」


「どうしたんですか? クロエさん」


「ってかクロエ、鈍い音したけど足大丈夫?」


 ルノの風魔法で涼んでいる三人が呑気に尋ねた。


「ッ~......!! お化けだよお化け! それか不審者!! さっきトイレの前で見たんだよ! 間違いないって!」


 血相を変えたクロエに、四人は悪戯にでもあったような表情で見つめる。


「お化けって......。っていうか、不審者だとしてもここは王国軍の駐屯地なのよ。居るのはガチガチの戦闘集団、警備だって厳しいしありえないって」


 ミーシャの一蹴するような物言いに、クロエは話にならないとティナの方を向くが......。


「隊舎の中なんでしょ、あんたと同じく用を足しに来た人なんじゃないの?」


 バッサリと切り捨てられる。

 クロエは半ば涙目でフィリアとルノを見つめるも。


「私は直接見ていないのでなんとも......」


「私も同じかな。っていうか、そろそろ五分経つしいつまでも人を魔道具代わりにしないでくれる? 今日はもうおしまい。魔力消費して疲れたから寝るね」


 当然まともに相手をしてくれない。

 それどころか、皆それぞれのベットに入っていってしまった。


「何かの見間違いだと思うわよ、明日も早いんだから程々にね」


 どうせならあの時大声で誰可(すいか)しておけば良かったと、一目散に逃げた自分を恨めしく思いながらクロエもベットに入ろうとした間際だった。

 彼女の代理として、駐屯地内にラッパが可愛く思える程の騒然たる警報が鳴り響いたのだ。


『非常呼集非常呼集!! 本駐屯地内に侵入者の可能性大! 全ての騎士は直ちに装備を整え、西側の演習場に集合せよ! これは訓練ではない、各員警戒を厳とされたし!!』


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