9.国境の村
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
本日も晴天で、良い旅日和じゃ。
火の始末をして、毛布をたたみ、乾かしていた食器を仕舞い、体を伸ばして準備運動。
旅に慣れないミルドは、まだ眠そうにぐずっておったが、手を取って無理やり体操させる。
見張りをしていたリーシャが、
「わー、お早いですねー、まだ日が昇ってませんが、やっぱり歳を取ると・・・」
「んっ?」
目で黙らせる。
「おはようございます、アルブレヒトさんミルドちゃん」
とシシリー。
「うむ、おはようシシリー」
シシリーはミルドに近寄ると、よだれのあとが付いた顔を、ハンカチで拭いてやっておった。
クレイはまだ寝とるようじゃが、出発までにはまだ間があるで寝かせてやろう。
愛馬シュバルツ三世は、もう目覚め辺りに生える草を食んでおった。
しばらくして全員の準備が整い、朝日を浴びつつ出発した。
出発して間もなくして、街道の脇の原っぱに荷馬車突っ込んでおった。
近寄って行くと、何やら争う音がする。
わしらは急いで近寄り、様子をうかがった。
商人の馬車が、ゴブリンに襲われておった。
わしらも、援護のため駆けつけると、ゴブリン共は多勢に無勢と撤退をしていきおった。
商人達の怪我を、プリーストのシシリーが癒やす。
その間に事情を聞くと、野営して出発の準備をしている所を襲われたという。
相手ゴブリンの数が少なく助かったが、恐ろしい思いをした。
シューレス国に行くのならば、護衛に加わって欲しいとの事だった。
元々の護衛は、戦士一人と心もとなかったらしい。
わしらは、この申し出を受けることにした。
仕事としての収入もさることながら、馬車に便乗させてもらえるのは渡りに船じゃ。
そして次の日、シューレス国境まで来た。
結果として、商人に雇われたのは大変良かった。
ほぼ商人の顔パスで国境を超えられたからじゃ。
そこから少し歩けば、シューレス最北の村ポトフに着いたのでここで商人とは別れた。
この村は、街道沿いなので宿はあるが、ギルドの様なものはない。
しかし、3日ぶりに見張りを立てず、ゆっくり眠れそうじゃ。
宿を取り、馬小屋に愛馬シュバルツ三世を繋ぎ止める。
ミルドをシシリーとリーシャに預けて、留守番を頼むと、わしはミルドの隠れ里に繋がる情報を求め、村に唯一の酒場に出かることにしたのじゃ。
なんでも、リーシャはまだ未成年で飲めないそうじゃ。
そんなわけで、クレイとわしで酒場へ行ったのじゃが、特にめぼしい情報は無かった。
おまけに、勧めた酒全部飲んでいたクレイが、酔いつぶれおった。
勧めたわしもアレじゃが、酒は節度をもって飲まんとな、飲んでも飲まれるなじゃ。
クレイに肩を貸して、宿屋に戻って来ると、愛馬シュバルツ三世が嘶いておった。
馬泥棒かっ、わしはクレイをその場に投げ捨て宿の備え付けの厩舎に向かった。
そこには、薄青白く発光する妖精の姿があったのじゃ。
調子が良かったので書き続けていたら徹夜しちまったい、と言うわけで、誤字脱字矛盾など、お気づきの点ございましたら指摘して頂けると幸いです。
ここまで読んで下さってありがとうございます。