81.非日常
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
わしは逃げ遅れておるミルドを救いに街の中心目指しておった。
焦げ臭い煙の匂いに混ざる血の匂い、背筋に走る不快感、不快な足の裏の感触を無視して走る。
いつしか地面は全て肉に覆われ、そこら中から触手が湧き上がり、もはやここは巨大な獣の腹の中なのではないかと錯覚するのじゃった。
フィリスは空を飛び、わしをミルドの元に案内してくれた。
寺子屋はもう回り一面が肉の地面に覆われ、触手が建物を取り囲んでおったが、わしはその触手を斬り進んで行ったのじゃ。
寺子屋の中に入ると、床は血で濡れて、建物に入り込んでいた触手に生徒たちが襲われておった。
急ぎ入り込んだ触手を切り伏せる、寺の坊主達はそれぞれ手に尺を持って死んでおった。
「ミルド!ミルド!無事か、無事なら返事を」
「お爺ちゃん!」
わしはミルドの無事を確認し、一安心したのじゃ。
ミルドを含む生徒達は、坊主達の献身によって無事であった。
そしてわしは、ここにいても危険じゃと言うて皆を外に連れ出し逃げることにした。
しかし、一人で20人近い生徒を守れるか不安であった。
外に出ると、斬り倒したはずの触手もまた生えてきておるようじゃ。
全員無事とは行かぬかもしれない、そう覚悟をしようとしておる所に、道場の門下生とクレイ達が来てなんとか下がるだけの余裕が出来たのじゃ。
そして、この時わしらには見えておらなんだが、海からシーサーペントの群れが来襲し、肉の触手と戦いだしておったのじゃ。
おかげて、わしらは触手をあまり相手せずに脱出することが出来たのじゃ。
街から出る時、また感じた背筋に走る感触、これは妖精の道を潜った時のものじゃ。
肉の地面から脱したわしらは、その場を離れ小高い丘から後ろを振り返ると、丁度丸く綺麗な円を描いて肉の地面が広がっておった。
これは、異界と繋がっておる?
シーサーペントの攻撃で、勢いこそ弱まっていたものの、肉は無限に近い再生を繰り返しておる。
そして次第にシーサーペントを捕らえ捕食していったのじゃ。
この街はジパングの中心じゃった、しかしもはや完全に瓦解しておる、不思議な事に肉で描かれた円の中心は、この国の王城であった。
これは偶然などではない、人為的な召喚じゃ。
そして、肉は円を盛り上がり乗り越えるようにして、更に広がって行くのじゃ。
この国は滅ぶかもしれない、回りの門下生達は絶望的な状況に為す術もなくうなだれておった。
そんな時、卵を産んで岬でテリトリーを広げておった水龍、リバイアサンが現れた。
姿を見せるなり強烈なブレスを肉の地面に浴びせる。
その、ブレスは街ごと肉を焼き払い吹き飛ばしていくのじゃった。
何故現れた?なぜ攻撃した?そんな事より、あの肉が吹き飛びどうにかなるかもしれない、そちらが重要じゃった。
わしらは歓喜の声でリバイアサンを迎えた、そしてその時、頭に響く声があった、
「あれは不死龍の成れの果て、核となる物を潰し退けるか、魔法陣を維持する魔道士を排除せよ」
と、わしらは円の淵に居るであろう魔道士の排除をすることにしたのじゃった。




