79.湯治
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
わしらは観光を済ませ、旅籠に戻ってきた。
旅籠の食事は美味であった・・・
山の幸の天ぷらは、揚げたてでサクサクとした歯ごたえと、ホクホクとして口に広がると甘みのあるサツマ芋や、肉厚な歯ごたえのしいたけ、少し苦味があるのが旨いオクラなど・・・
海の幸は、柔らかく深い味わいのブリの照り焼き、コリコリとして淡白な旨味の白身魚の刺し身、濃い味で旨味がギュッと凝縮して貝汁などなど・・
わしらは全てを食べ尽くし、お替わりまでしたのじゃ。
お腹一杯になってしばらく突っ伏しておったのじゃが、わしは腹ごなしに、風呂に行くことにしたのじゃ。
ここの旅籠は露天風呂じゃ、今時分ならば綺麗な星空が見えるじゃろうて。
そんな事考えて、風呂に向かおうと部屋を出るとフィリスが、
「アル様、待ってくださいよぅ」
と追っかけてくる、
「なんじゃお前も風呂か」
と言いながら、途中まで一緒に行くかと待っておると、浴衣を頭の乗っけながらきた。
そういえば、もう6月じゃ、わしが旅に出てもう直ぐ一年が経とうとしておった。
ポトフの村で、馬のままであれば、半年持たぬ命と言われておったフィリスも、元気に一年を過ごした。
「フィリス、お前ペガサスになって寿命の方はどうなっておるのかのぅ?」
と、聞くと、
「どうなんでしょう?ペガサスが老衰で死んだってのは聞いたことないですからねぇ」
と、戯けながらもながらも、少し寂しそうな目をする。
わしにはねその意味は分からなかったが、
「じゃ、ここでのぅ」
と別れて脱衣所に入った行った。
ふと、後ろに気配を感じ振り返ると、フィリスがおる。
「何をしておる、お前は女湯じゃ、女湯に行け」
すると、
「馬だから問題ないす」
「いや、今のお前はどう見ても女の子じゃからな」
「解りました、馬になって入ります」
「抜け毛と抜けた羽だらけになるからヤメロ!」
なんか今日は構って欲しいらしい、こうなったフィリスは頑固じゃ、
「しょうがない、他に人が居ったら出るんじゃぞ」
「はいはい~、ちゃんと出ますよ」
脱衣所に、他の衣類が無いのを見て取りフィリスはそう言った。
裸足でペタペタと脱衣所を抜けて行き、露天風呂にでる。
物凄い湯気が、風に巻いて渦を作る。
空には満天の星空、半月も空に浮かんでそれ程暗くは無い、遠くの海が月明かりで煌めき、幻想的な風景じゃった。
わしは身体を湯で洗い、湯船に入ろうと近づいていく。
先に湯船に浸かっておる、湯気越しに見える人影に、
「こらフィリス、ちゃんと身体を洗って入るのじゃぞ」
と言いながら近寄る、目が合うとそれはフィリスじゃなくシシリーだった、脱衣所は別でも風呂は中で繋がってたのじゃな。
わしは神聖魔法の衝撃波で、大量の湯と共に湯船から追い出されたのじゃった。




