77.家宝
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
キョウの街までわざわざ来て、剣術道場に行ってみれば、入門を拒否され手合わせすら出来ぬと言われ、わしは怒り心頭なのじゃ。
わしは師範を殺さんばかりに睨む、せめて挑発に乗って手合わせだけでも出来ればと。
しかし、師範はそれすら意に返さぬのじゃった。
わしは、諦め立ち上がろとう、身体の左側に置いていた刀を杖にして立ち上がり、腰に刺そうしとて気がつく。
今まで鉄面皮の様であった師範が、わしの刀に目を奪われておる。
試しに左右に大きく振ると、師範の目玉はそれに合わせてギョロギョロと動くのじゃった。
師範は額に大粒の汗を掻きながら、
「その刀は、どうやって手に入れられました?」
と聞くから、ここから遠く離れた国で商人から買い取った事を教えてやったのじゃ。
少し眼を瞑って考えた後、
「その刀を是非コチラで買い受けたい、お金は・・・」
と、言い出すのを遮って、
「いや、わしは今この刀を売りに出してはおりませんで」
とやり返す。
「実はその刀は当家から盗難されだものでして、是非とも買い戻し・・・」
手の平を相手に向けずいっと出して、
「いや、わしは今この刀を売りに出してはおりませんで」
わしはこの時、勝ちを確信しておったのじゃ。
結局、入門は認められた。
さらに新たな刀も頂いたのじゃ。
わしのあの刀は、この国の王から賜った家宝だったらしいが盗難にあい、今は偽物で凌いでおったそうじゃ。
あの商人が盗んだのか、盗んだものが流れ流れて商人の手に渡ったのかは分からぬがのぅ。
今なら、何でもわしの言うことが通りそうな勢いであったし、ついでにクレイの入門も無理やり通したのじゃった。
それからは、ふたりして道場に通い、切磋琢磨しておる。
町道場と違い、ここにおる者は皆一様に強かった、そして師範は更に強かった。
そうそう、わしは刀は基本両手武器で、盾を持たずに戦うのもこの時知ったのじゃ。
それからは面白いようにスパスパ切れたのぅ、もう少し頑張れば兜割りも行けそうじゃ。
クレイの上達も早い、体力がある分練習量もわしの倍くらいやっておる。
キョウの街に移ってからは郊外に一軒家を借り、わしやクレイやリーシュにシシリーにミルドにフィリスと6人で住んでおる。
ミルドは寺子屋と言う学校に通っておる。
リーシャとシシリーはそれぞれ食事処の店員をしておるし、クレイとわしとフィリスで畑を作ったりもしておる。
フィリスは見た目は人じゃが馬力が馬のそれなので、畑仕事では大活躍しておる。
こちらの食事にも慣れ、毎日穏やかに暮らしておった。
まぁ船の食事を経験すれば、耐えられぬ食事など無いのだがのぅ。
この国に来て三ヶ月が経ったそんなある日、とうとうクレイも刀を一振り仕立てることになったのじゃ。
道場で小目録を頂き、それを気に決断したようじゃが、日本刀は値が張るものなのじゃ。
後悔なく仕立てるため、一度刀鍛冶に会いに行くことにしたのじゃった。




