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76.道場

わしじゃ、アルブレヒトじゃ。

わしは今ジパングの宿屋、旅籠と言う所に止まっておる。

ドアが紙であったり少し不用心ではあるが、使用人は数が多く気がきくので、言葉が通じぬ割に助かっておる。

隣はクレイとリーシャとシシリーじゃ、クレイはわしと同じ剣の道場に入りたいらしい。

わしはまず、紹介してもらった町道場に行って見る事にしたのじゃ。


まずは、通訳をやってくれるサキチを迎えにユアサの店へやってくると、

「こんにちは、こんにちはー」

わしに解る唯一の挨拶で、サキチが出てくるまで粘るのじゃ。

幸い、向こうが察してサキチを呼んできてくれたのじゃ。


わしらは、町の道場へ向かっておった。

道すがら、わしは色々と見たものを、手当たりしだいに質問しておった、わしらにとってこの国はとても変わった国じっゃたからのぅ。

しばらく歩くと道場につき、入って紹介状を渡すと中に案内された。

しばらく編んだ草の上で待っておると、師範と呼ばれる長髪黒髪の眼つきの鋭い男が入ってきて、わしの入門を許すと言う。

わしは、長身じゃがこの痩せ気味の男が強そうには見えなんだ、そこでまず手合わせをお願いしたのじゃ。

しかし、入門仕立てで師範に挑むのは、横着だと回りの門下生から非難されてなのぅ、師範も条件を出したのじゃ。

わしは、門下生を3人倒せば相手をしてくれる、と言うので左手に盾、右手に木刀を持って相対する事にした。

回りの門下生たちは笑っておる、盾を使うなど無粋で、型に無い突飛な目立ちたがりの発想じゃと。

一人目は、上段から打ち込んできたので、盾で受けて胴に打ち込んだ。

二人目は、フットワークで撹乱しつつ突いて来たので、突きに対してシールドバッシュを放ったら、木刀を落としたのじゃった。

三人目は、盾の上からでも構わず豪腕で打ち込んで来ておったが、大振りになった所を籠手を放ったのじゃった。

さて、次は師範じゃが、ここまで来てやっと師範は盾の有用性を認め始めておった。

慎重に間合いを取って、鋭く踏み込んで一撃加えてくると追撃はせず間合いからすぐに引く、警戒しておるようなので圧力を掛けて追い詰めることにした。

引いたら引いた分の間合いを詰め、押し込み道場の角に追い詰めていく。

打ち込んで逃げようとする所を前に出て盾で押し返し、角に追い詰めてから一撃で勝負が着いた。

「参りました、ご老人お強いですな」

わしは習うべき師範に勝ってしまって困惑しておった、すると師範の師匠がいる剣術道場を案内してくれる事になった。

「私の師ならば、必ず期待に添えるでしょう、ただ・・・」

と、すこし口ごもり

「盾を携えての入門は、難しいかもしれませんな。せめて左手は脇差しか小太刀がよいかと」

と、教えを頂いたのじゃった。

問題は、この剣術道場とやらが、別の街にある事じゃな。

わしらは一度旅籠に戻り、ユアサとも相談する事にしたのじゃった。

道場の顛末を聞いて、ユアサは申し訳ない、改めて剣術道場の紹介状を認めると言ってくれたので、町道場の推薦状と2通もあれば、大丈夫であろうとわしは考えておった。

道場のある街キョウはとなり町で徒歩で1日と言った所、次の日直ぐに旅立つ事にした。

翌々日、わしは剣術道場の門を叩いたのじゃった。


わしが紹介状と推薦状を渡すと、しばらく門の外で待たされた後やっと案内されたのじゃ。

しかし、道場ではなく客間に通され、そこでようやく師範に会うことが叶った。

師範との話はこれまでの旅の話であったり、ユアサとの関係であったり、なんじゃかノラリクラリと入門の話から逸らされておるようじゃ。

わしもちょっと気が立ってきてのぅ、

「で、話は変わるのじゃが入門は何時からになりますかいのぅ?」

と聞くと、

「当家では、只今門下生の募集はしておりませんで」

と、断ってきおった。

わしはこれまでの旅の苦労もあって、頭に血が上り顔は真っ赤に、唇はプルプルと振るえる、

「それがその方らの流儀かっ!、せめて手合わせくらいは出来るであろう」

しかし、師範は静かに横に首を振って、

「できませぬ」

と、しか言わなかったのじゃ。

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