70.水
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
この船がエイボン王国を出発して2ヶ月が経とうとしておる、現在大陸を南東に迂回しつつ東を目指しておる。
途中、何度か海賊に遭遇したが、こちらの船員の練度は高く、船も優秀で倍くらい早かったので追いつかれることは無かった。
船は赤道に近づき日差しが強い、気温も高く保存食の痛みも激しい。
なので途中途中の街に寄る事も多くなり、なかなかペースは上がらなかったのじゃ。
そんな時、誰かが飲料用の水桶の蓋をし忘れて、樽の水を蒸発させてしまったのじゃ。
元々6樽で出港し、今2樽あるはずが1樽しか無い。
次の港までは少々心もとないので、港でなくとも川があれば水の補充をする事にしたのじゃ。
沖に離れていた船を、大陸側に向け走らせておると、大きな島があった。
緑の森が広がる山があり、切立った海岸線には、真水の滝が海に直接注がれているのが見て取れたのじゃ。
わしらはこの島で水の補充をすることにしたのじゃった。
島の回りをぐるっと回ったが、直接接舷するのは危険なので、少し沖に船を停泊してボートで砂浜から上陸することにした。
ついでに狩りをして肉の補充が出来ればよいと、水汲み班と狩り班とに別れるとこにしたのじゃ。
わしは狩り班に入ることにしたのじゃが、女性陣はみな水汲み班に行ってしもうた、リーシャの腕前に期待しておったのじゃがのぅ。
クレイとラファエルは狩り班じゃ。
クレイは、半年前に買って以来試し打ち以外で使ってなかった、組み立て式クロスボウを使えると張り切っておった。
ラファエルは食生活改善のため、こちらも張り切っておった。
鹿など居れば良いが、島であるしウサギが居れば良いかのぅ。
森は独自の進化を遂げ、見たことも無い巨木がそびえ立っておったり、大量の水を蓄えた葉を持つ草木など目新しい物ばかりじゃった。
しかし、動物は今のところ羽虫と小鳥ぐらいしかおらぬ。
結局、獲物となりそうな物は一匹も見つからず、これは釣りでもしておったほうが良いと、ベースキャンプの海岸に戻ることにしたのじゃ。
「残念じゃったなぁクレイ、またクロスボウの出番はおあずけの様で」
「残念です、せっかく買って持ち歩いているのに、今のところ重しにしかなってないですから」
ラファエルも近づいてきて、
「このままではベースキャンプの燻製機が泣きます、せめて一匹分の某かのお肉が欲しい所」
と言う。
何時の間にかそんな物まで設置としておったのじゃのぅ。
結構大きな島であったから、お肉の期待をしておっただけに、わしらはがっかりしながら砂浜に戻った。
ベースキャンプでは大きな焚き火が炊かれ、魚や貝がが料理され、いい匂いがしておった。
船員達は水を汲んだ樽をボートで船に運び、テントを張ったり篝火の準備をしたりしておった。
沖の船は夕日に照らされ、帆が赤く染まって綺麗じゃった。
そんな時じゃった、絹を裂くような女性の悲鳴がする、このメンツでそんな声出すのはシシリーじゃろう。
わしらは悲鳴のあった場所に急ぐと、海岸の先の岩場にジャイアントアントがおった。
ワラワラとこちらに近づいてくる、数はドンドン増える一方じゃ。
全員に警戒を促すと共に、盾と武器を取りにキャンプに戻る。
キャンプに着いた時には、後ろから100匹近いアントの群れが追いかけて来ておった。
ジャイアントアントは体長1m程度じゃが、偶に混ざっておる兵隊アリのジャイアントソルジャーアントは、その倍以上の大きさがあった。
ボートにミルドや非武装船員を乗せ船に送ると、わしらは海を背に武器を構え待ち構えるのじゃった。




