63.王国
わしじゃ、アルブレヒトじゃ。
東に行く船をキャンセルして、わしらはラファエルの持つ船で一路南へ。
元エイボン王国にして、現ファランシス国領に向かっておる。
船の全長は20mほどで、3本のマストとヨットのような三角の帆をもち、風上に向かっても走れるキャラベル船じゃ。
船員は20人ほどじゃが、今は積み荷が無いのでわしらが全員乗っても大丈夫じゃ。
船を貰う約束で、わしらは雇われたわけじゃが、わしら側からも条件を出した、
1つ、傭兵として兵士として戦争には参加しない。
2つ、命の危険がある時などは、船の権利を放棄することで契約を反故にする事が出来る。
3つ、契約が長期化する場合は、船の権利を放棄することで契約を反故にする事が出来る。
と、かなり勝手な条件なんじゃが、ローラからこの位の条件付けておくようにと言われたのじゃった。
それからしばらくは遠い遠い航海の旅じゃった、そう、真夏に出発して到着した時には秋になっておった。
それでも徒歩で2ヶ月掛かる行程を、20日ほどで着いたのじゃから、船は偉大なのじゃ。
わしらは港街エンドアに付き、ラファエルの兄ウェイン卿と面会しておった。
エイボン王国の領主であった父が、高齢のため後を継いだ長男がウェイン卿じゃ。
ラファエルは三男坊で、家を継ぐより魔術師に成るため家を出ておったそうじゃ。
元エイボン王国を収める5人の領主のうちの一人じゃ。
真ん中に王家、南部、西部、北部、東部に領主が一人づつおった。
ここ南部は港街エンドアを奪還したものの、領地の半分はまだ敵の勢力内であり、国土回復のため戦争推進派じゃった。
他には、領土を全て回復した西部と北部が停戦派、領土の殆どがまだ敵勢力にある東部が戦争推進派じゃ。
そのため王国直轄地であった中央を、今は東部領主が収めておる。
この辺りは小国が乱立し、国境線も複雑じゃ、国境の大半を海岸線で構成しておる元エイボン国でさえ、3カ国と国境を接しておる。
そのため、小さな小競り合いはあるものの、お互い牽制しあって大きな戦いは無かったのじゃ。
しかし、エイボン王国は、戦争をしていた同盟国に援軍を送った所を、隣国のファランシス国に奇襲され滅んだ。
エイボン王国は豊かな国であったし、兵力もファランシス国に劣るのもでは無かった、援軍を送って兵力が減ってこそいたが、そう簡単に落ちるはずはなかったのじゃ。
実は、ファランシス国の工作活動によって内応した軍があり、王都を奇襲している間に敵軍は国境を越えて進軍したのじゃった。
しかし、2カ国を収める程の軍備がないファランシス国は、王家を滅ぼすとその城に入り、領主をそのままにする代わり王家に納めていた税を徴収するという、盟主が変わるだけの支配に留めた。
そのあと、時間を掛けて支配力を高めていく思惑だったのじゃろう。
じゃが、近年そのファランシス国がよそで戦争に負け、国力が落ちたため元エイボン国の反乱が発生した。
そりゃそうじゃ、正当に戦ったならともかく、だまし討で国を盗まれたと言うのがエイボン王国民の総意じゃったからのぅ。
元エイボン王国貴族連合は現在、元の国土の約7割を支配していおる。
ただし戦線は停滞し、停戦派と推進派との足並みが乱れ、最初の勢いを失っているのじゃった。
また、エイボン王国は南にニード国、東にファランシス国、北にトルリア国、と3カ国に国境を接しており、対外的にファランシス国領の今は手を出してこないものの、もと国境まで押し返し、国として独立を宣言した後、その二カ国が攻めてこないとも限らないのじゃった。
わしらは、ウェイン卿とローラが話しておるのを、聞いておるしか無かったが、問題が山積みのようじゃのぅ。




