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61.見通し

わしじゃ、アルブレヒトじゃ。

わしらは船に乗っておる、とうとう東行きの船に乗る事ができたのじゃ。

とは言え、この船は前にクルージングで乗った船より一回り小さく、1本のマストに横帆を備えただけで、風下にしか進めないコグ船と言われる船じゃ。

あまり遠くまでは行かない船なので、乗り継いでジパングを目指すこととなる。

乗客はわしらだけで、あとは船員と積み荷だけじゃ、歩かなくて良いので楽じゃが、クレイ達はまた船酔いに苦しんでおった。


船旅は楽じゃが、そうなると一つ問題が出てくる、そう退屈なのじゃ。

大人はまだ良い、じゃが子供には退屈は苦痛なんじゃ。

小さい方の子供、ミルドは聞き分けの良い子じゃが、やっぱり退屈なのか不機嫌にグズる時がある。

慣れてきたのか、ローラの手品の効果も今一つじゃ。

大きい方の子供、フィリスは遠慮がない分始末が悪い、マストに登ったり、甲板で石鹸とデッキブラシ使ってホッケーし始めたり、始末に終えん。


急遽わしは、二人に椅子に座って遊ぶことを教えねばならんのじゃった。

チェスやすごろくなどが、あれは良いのじゃが、船には無かったので、わしが手書きで作ってやった。

すごろくと言うのは運の要素が殆どでな、ミルドにもフィリスにも公平に勝ち負けが来るのじゃ。

二人を競わせることで、しばらくは大人しくさせる事ができた。

じゃが、そんなすごろくも何度もやると飽きて、次のすごろくを作れとせがまれるのじゃ。

マスに書くネタも尽きてきて、段々とわしも面倒になってきてな、ちょっとしたいたずらをしたのじゃ。

ゴールには丁度の数で入らないと、もう一週しなくてはならぬ周回型のすごろくを作り、サイコロもそれ用に作ったのじゃ。

マスの数は128マス、そしてサイコロには偶数の目だけを入れておいたのじゃ。

二人は延々とやっておった、そりゃそうじゃ、進む数を間違えぬ限り、ゴールには辿り着けぬのじゃからな。

このトリックに気がついた二人にその後激しく怒られ、わしは次の港に付いたら、二人に玩具を買ってやる約束をさせられたのじゃ。


そしてデッキに出ると、日も落ちて真っ暗くなった海を、ぼんやりと見ているローラがおったのじゃ。

わしは話しかけた、

「やぁローラ、夜の海は真っ黒で怖いのぅ」

「あらアルブレヒトさん、こんばんは、そうですわね、先が見えないのは怖いですね。

一体何処へ向かっているのか、行った先に何があるのか・・・」

「ふむ、考え事の邪魔をしたかのぅ」

「いえ、丁度お聞きしたいことも有りましたし」

「何じゃろうかのぅ、解ることであればよいが」

「フィリスちゃんを助けに行った時、いえ、助けると決めた時の事ですわ。

なぜ、あの時その決断が出来たのか、なぜそう決断したのか」

「ふむ、そうじゃのぅ・・・

わしは、フィリスを置いて幻想郷を出て来て、ずっと迷っておった。

しかし、その時は最善の選択であり、迷わず決断をしたと思っておった。

自分の心も、分かっておらんかったのじゃ。

そして、いつの間にかその迷いに心を奪われ、現実には心あらずになっておった。

盗賊を切り、振り返った時に、ミルドがわしを見て泣いているのを見て、よく考えずにその辺りの草でも刈るように、人を切っておったことに気がついた。

わしの心がそこには無かったのじゃ。

そこで、迷い悩んであの選択は正しくないと、本当はわしが思っておったのに気付いたのじゃ。

正しくないなら、今から正しい選択をする、つまりは助けると決断したのじゃな」

とわしは自分を分析しながら話ておった。

「そうですか、たいへん勉強になりましたわ。ありがとうございます」

と答えて、ローラは空を見上げた。

空には満天の星空が輝いておったのじゃ。

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