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58.孔雀石

わしじゃ、アルブレヒトじゃ。

翌日。わしらはギルドで依頼を引き受けると、少ないながら前金を貰って街を出た、

「まずは川沿いに逆上りましょう」

とローラに促されて、農道を川沿いに北上していく。

水路には水がチョロチョロとながれ、畑は青々として、夏野菜が色とりどりの実を付けていた。

チョウチョを追っかけるミルドを見ながら、依頼を受けて無ければ、ピクニックに来ても良さそうな所じゃと思っておった。

しばらく歩くと、橋が掛かっており、二人の冒険者がこの道に合流してきた。

「こんにちは」と挨拶されて、こちらも挨拶を返す。

道が同じなのか、しばらく並走しておったが、

「例の毒井戸の調査ですか?」

と聞かれる。

普段なら依頼に関する事など口外せんのじゃが、今回は知れ渡っている事であるし良いかと思って、

「わしらは、エグリスのギルドから依頼を受けましたのじゃ」

「ぼくらはノボスの街で依頼を受けまして、ぼくはマークで剣士でして、でこっちのがベルが魔術師をしてます。」

と自己紹介して来るので、こちらも一応の紹介をするのじゃった。

マークは人見知りせぬようで、

「今回の件どう思いますか?」

などと聞いてくるから、

「今からその調査に行く所じゃ、まだなんとも」

と答えておく。

すると聞きもせんのに勝手に語りだした

「今回の件は病気による集団感染だと思うんですよ!だってノボスの街の人達は悪いことが出来るような人たちでは・・・」

ベルが杖の先でマークを突いておるが口が止まる気配もしない。

ローラが

「正しい結論は、正しい調査と正しい分析によってもたらされます、街の人との仲が良いのは良いですが、結果に加味はされないのですよ」

と言うと、

「あははー、そうですよねぇ。でもですよ、もしあの人達が毒を投げ入れる様な人たちなら・・・・」

駄目だ、この子は人の話を聞いてくれんのじゃ。

最終的にベルの杖による、脳天殴打をされるまでマークはノボスの街を擁護し続けておった。


マーク達と別れる頃には、わしらは森の中に来ておった。

ローラが地図を見て、こっちあっちと道案内する。

着いたのは、山の裾野にあるダンジョンの入り口じゃった、正確には廃鉱跡じゃな。

その入口からは

うぉぉぉおん、こごおおぉぉん

呪いの言葉とも聞こえそうな低音のうねりが聞こえ、夏なのに冷たい風が激しく吹き出して来ておった。

入る前から気色が悪い、目に刺激を感じ、息苦しく、ここから入るのは難しそうじゃった。

そうこうしていると、ミルドが気分を悪くし、用心としてクレイとリーシャを付けて宿に返すことにしたのじゃ。


ローラはその入口からは入らず、脇を抜けて山を登っていく。

わしらもその後を、両手で木や草を掴みながら登っていったのじゃった。


しばらく登った、わしは息が切れそうじゃ。

遠くに田園風景、さらに霞む街が見える、川の右がエグリスで左がノボスじゃな。


ローラがなにか見つけて呼んでおる。

わしらが、疲れた手足を無理やり動かし登って行くと、山の斜面に1m四方の穴がぽっかり空いておった。

この穴は、さっきの入り口とは逆に風が流れ込んでおった。

風が強くてタイマツでは明かりが取れぬため、ランタンを用意すると、用心深く一人づつ入っていくことにしたのじゃ。

背中から空気に押され吸い込まれそうになる、足を踏ん張りながら入って行くと、すぐにゴツゴツとした岩肌の急な下りになるのじゃった。

そしてしばらく進むとT字の通路に出る、来た道は狭かったが左右に伸びる通路は立って余裕で歩ける広さが会った、わしらが来たのは通気口であったのじゃろう。

ローラは足元と壁にチョークで目印を書くと、下っておる右の道を進み始めた。

「おおぉーん、おおぉーん」

と怨嗟の声に近づいていく、ランタンの明かりに照らされ壁にはエメラルドグリーンの物が見える。

思わずわしが、「なんじゃい、これは」と尋ねるとローラは、

「これは孔雀石。顔料にも使われる鉱石ですわ」

と、落ち着いて答えたのじゃ、そして更に進み入って行くとそこには洞窟の中じゃと言うのに滝があったのじゃ。

上の方の岩の裂け目から大量の水が流れ落ち、バシャバシャと水しぶきを上げつつ通路に落ちて、通路を流れ下ってゆく。

水の流れで出来た風が通路を激しく下っていく、その風鳴の音が奇怪な声の正体じゃった。

更に進んだが、通路の先は水没しており、それ以上は進めそうになかった。

ローラは溜まった水をランプで照らし観察したり、何か拾ったりしておった。

岩壁からは水が染み出し、所々エメラルドグリーン縦筋が入っておる。

中々に幻想的な風景じゃ。


わしらは、元来た通路を戻り、また狭くて向かい風の急な坂道を中腰で上り、外に出たのじゃった。

もはや、この時わしの腰は限界一歩手前であったので、

「フィリス、おんぶ!」

「はいはい、お爺ちゃんだからしかたないですねぇ」

などと屈辱的な事言われつつも、街の近くの人目が無さそうな場所までは、オンブされて帰ったのじゃ。


帰ってから丸一日、ローラは部屋に篭っておった。

出てくると、ギルドに調べ物をしに行ったのじゃった。

そして、その日の夕飯でみなに、

「明日、ギルドの仲裁手続きが有ります、双方の街の領主又は代理が出席しますので、ちゃんとした格好で明日は行って下さい」

と、言われて慌てて荷物から服を引っ張りだすのじゃった。

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